動画は配信・サブスク中心ですが、いまだTSUTAYAさんには行きます。配信していない映画は実はかなり多い。
驚いた、Amazon original「ザ・ボーイズ(The Boys)」がレンタルしております、8月からです。
TSUTAYAの天敵たる配信大手のオリジナル作品は普通レンタル店では置きません。
しかもシーズン1の公開から相当時間が経っております、珍しい。それほど支持があるということでしょう。
こりゃなんだ?新手のアメコミヒーローかという方
または配信契約までして観る気はないというひと
ぜひTSUTAYAさんにいらしてください。たぶんここ5年間ぐらいで間違いなく必見です。
(ご注意)本物のグロ・正真正銘のR-18です
なお最初にご注意を、「本物の成人向け」です。グロも下ネタもかなりハード。
コンプライアンス対策で用心のためにR指定、なんてレベルではございません。ご家族と一緒の方は気まずくならないよう。
原作も過激さから一度休載・ドラマは高度なリメイクで第一位の視聴率
オリジナルドラマですが原作は一応あります、2006年から2012年まで
- 原案:ガース・エニス(Garth Ennis)
- 作画:ダリック・ロバートソン(Darick Robertson)
というチームで執筆されました。アメコミなのでビジュアルは日本人にはいまひとつ受け入れられていませんがアメリカでの人気は高い。
いかほどかといえば、内容の過激さゆえに一度休載となり、それでも出版社を変えて続けられたといういわくがついております。
Amazonオリジナルはリメイクですが、この原作を更にアップグレードしたと呼んでいい仕上がり。おかげで第一位の人気・視聴率です。
時代に合わせただけでなく、下品にして掘り下げも深いという奥行きがあります。
Netflix以来TSUTAYAは動画配信サービスのオリジナルを扱わない・あまりの人気にレンタル開始
驚いた理由について、まあこれが内容ともリンクするんですが、商売敵たるAmazon Primevideoの看板ドラマにもかかわらず、TSUTAYAさんが置くほど面白いということ。
「24」「韓流」は昔・寂しくもレンタルDVD店はどんどん閉店
その昔「24」や「韓流」など、海外ドラマといえばTSUTAYAさんの絶好調でしたが、配信になってからレンタル店は押され気味。閉店も増えました。
一時期Netflix系がありましたが、まもなく撤去された。
かえって競合を宣伝してるようなもんだということでしょう。
ましてやAmazonオリジナル作品の中でも海外ドラマは映画を超える人気です。
TSUTAYAさんにもリスクはあるんでしょうがそれだけ中毒性のある作品ではあります。
シニカルなんてもんじゃない・見どころは腐敗するスーパーヒーロー達
内容は見てのお楽しみ。
書かないのはこのドラマはストーリーと演技の両方が最高だから。筆が追いつかない。
世界観をご紹介すれば、グローバル企業(ヴォート・インターナショナル)が人工的に作り出した超人たちと、彼らに愛するものを奪われた普通の人間(The boys)が復讐のために戦う、というもの。
これだけならありそうなスジですが、このスーパーヒーローたちは物語性がありすぎです。
彼ら超人は本当にスーパースペック、空を飛んだりビームや怪力。そしてお仕事は、
- 世のため人のためのヒーロー活動
- そしてタレント・アイドル活動
この2つがヴォート・インターナショナル社の収益、うわべは完璧にESG、SDGsを体現。
24時間テレビを毎日やっています。
イメージがカネになる、そして不祥事が弱点・ESGの本質をついた
結果セレブ扱いのヒーローたちは名声とカネ・その他の欲を満たすため偽善と隠れて非道の限りを尽くすというもの。
カネを産む元ですから会社(ヴォート・インターナショナル)も目をつぶります。
ただ不祥事だけはまずい、イメージが莫大なカネを産んでいるからです。
バレてツブれた人造ヒーローは遠慮なくお払い箱。
人体実験をしてどんどん代わりを作る。
そいつらと渡り合うわけで主人公(The boys)側も手段を選びません。
本物のR-18とご注意申し上げた理由です。というよりトガりすぎた結果です。
ESGは世のため人のためではなく投資であり、パブリックイメージこそ重要
本質はそれだけ。
地味な流通業で「GAFA」なんて指弾されるAmazonからみればESGは虚業中の虚業でしょう。
ドラマでここまで言い切ったのはむしろ爽快です。
「ホームランダー」役のアントニースターがギラギラ光る
今のところシーズン2まで制作され、3rdシーズンも撮影は完了。まもなく配信開始です。
品性お下劣なアタシにとっては見どころしかないドラマですが、なかでも群を抜く演技は腐ったヒーローチームをまとめるスーパーマン似(目からレーザー・空を飛ぶ・怪力・透視能力、あとそっくりのコスチュームデザイン)の
最凶超人「ホームランダー(Homelander)」を演じるアントニースター(Antony Starr)
映画・テレビドラマを問わずここ数年でこれほどの演技は少ない。
主役のカールアーバンより「主人公」・完璧なサイコパス演技
「ザ・ボーイズ」の主役はカールアーバン(Karl Urban)となっております。しかしこのドラマの中心は間違いなくアントニースター。
1975年生まれでカールと同じくニュージーランド出身です。日本での知名度がありませんが、かなりの演技派として知られているとのこと。
頭を使わないものから考えさせられるものまでそれなりに映画は見たつもりですが、こういう役者がいるんですな、知らなかった。
- 偽善・欲望
- 強烈な自己顕示欲と裏返しの自信のなさ
- そして自分をごまかせる範囲内での無慈悲(ただの残虐とは違う)
これらをわかりやすくイケメンのルックス(それすら演技)で表現する。
白い歯が光るぐらいのとびきりの笑顔から、その見た目のまま歪んだ目つきに変わる。
ねじくれた性格を完璧に演じきっています。
ホレた、これこそ最高。
この人の作品集中していこうと思いましたよ、もっと映画に出て欲しい。
腐ったヒーローだけど普通人・DCやMarvelと決定的に違うところ
演技としてはサイコそのものですが、ストーリーの主題はそう単純ではないのが「ザ・ボーイズ」の面白さです。
ここが重要なんですが、この腐ったヒーロー達は別にサイコパスじゃないんです。
レビューでいうほど闇堕ちもしてない。
三流の善人と呼んでいいほど。
そして主人公たちが欲しがるのはお金以上に名声です。
虚栄と嫉妬こそ最大の人間性たるところをとことん描き尽くす。
ダークヒーローじゃない・テーマは虚栄と嫉妬
これがマーベルやDCと違うところで、だから特殊能力以外は驚くほど平凡です。この作品の設定が薬で作った人造ヒーローという理由であります。
願望が普通すぎる。
- 有名になりたい(セレブかインフルエンサー)
- 頭がいい、あるいは人格者と思われたい
- みんながうらやましがるくらいの稼ぎが欲しい(資産を増やしたい、ではない)
- 異性にモテたい
- 会社でもっと出世したい・認められたい
スーパーパワーを発揮するからおかしく見えるだけで、本人も大量殺戮とか大事故を喜んではいません、あくまでそれは結果。
だからInstagramやTwitterで自分がバズると目を細めて喜びますし、人目をひかない人助けはしない。
都合の悪いことを、自分のなかでなんとなくなかったことにできるぐらいの器用さもあります。
「世界征服」「宇宙を支配」なし・普通のリアルな欲望を描き尽くす
ヴォート社で山ほど人を殺しながら超人開発をしている重役や社員達も「会社で出世したい」だけ。非凡さ皆無なのです。
「しかたなかったんだ」と言い訳できる理由や、自分にそう言ってくれる人をいつも探しています。
誰一人「世界征服」とか「宇宙を支配」なんて考えていないし望んでもいない。
ダークヒーローですらありません。
ある意味主役のホームランダーですら、動機は「研究施設で育てられたので愛情に飢えてる」だけです。
書いててちょっとアレですが、実際作品がこうでして。
この作品のストーリーをネタバレしても意味がない理由であります、演技をみないと意味がない。
なおこのプロットにスーパーヒーローの能力が加わると刺激度は最高潮です。
このあたりはここまで描くかってぐらい徹底してる。気分が悪くなったというレビューを見ましたがそうだろうと思いますわ。
『ヴォート社』のモチーフに感じるAmazonの凄み
実は本作で一番すごいと思ってる部分は「ヴォート・インターナショナル社」の設定です。
どうみてもAmazon自身をモチーフにしたとしかみえない。
間違ってるかもしれません、推測ですから。でも作中ヴォート社関連の演出ってわかりやすくGAFAやディズニーをチラつかせるのです。まさか自社をモデルにしてやしないだろうなと。
GAFAという悪口に開き直ったのかも「The Boysはプロの仕事だぞ」と
ちょっとハラハラするぐらい。
実はこのシリーズ、アタクシのなかでもう打ち切りが耐え難くなってしまっております。
皮肉じゃありません、真面目にAmazonって思ってた以上に器がとてつもなく大きいのではないかと驚いております。
あの設定にGoを出すとは怖いぐらいの凄みです。
オリジナルでいい作品を作ると決めたらとことんやる。Prime Videoは確かに優れた作品が揃っております。
「GAFA」とよばれています、いい意味はありません。
もしかしたら(本当に推測ですよ)開き直ったのかもしれません、ただし真正面からです。
確かに自分たちはとことん利益追求してる
でもこのレベルの作品を作れるか
オレ達の「捨身の覚悟」を超えてから言え
もし本当にヴォートのモチーフを自社にしているならメッセージはこれです。
推測があたっているかどうかは別として、この作品に妥協はありません。
配信後1年以上経ってから競合がレンタルを始めるだけのことはあります。
「24時間テレビが嫌い」「エンドゲーム以来なんとなく見ない」ならば必見
そして「ザ ボーイズ」は間違いなく傑作です。気に入る気に入らないは別にして印象は強烈。
アヴェンジャーズ「エンドゲーム」でヒーロー勢揃いのシーンに泣いた方にはおすすめしませんが、
- アイアンマンの葬式シーンが長すぎる
- サノスが悩んだ理由が最後までよくわからない
- 子供の頃から24時間テレビが嫌い
こちらの向きには間違いなくイチオシ。下品なくせにハイブローという高度のエンターテイメントです。
なおTSUTAYAさんで借りていただけたら嬉しい。最近閉店が多くて寂しいので。映画の楽しみを教えてくれた会社ですから。