ここ10年ぐらいMA-1などフライトジャケットにじりじりと迫りつつあるのがタンカースジャケットです。
一見ダサいような、それでいてなぜかサマになるアイテム。
先に結論を。
原型は100年近く前、つまり大正時代に成立した高機能ウェア。
レトロにして今使えるアメカジであります。
「タンカースはダサい」といわれる理由・そりゃあなた大正時代です
「タンカースはダサいのでは」といわれます、確かに画像をみるとちょっとひるむ。フライトジャケットは空軍ですが、これは陸軍。
茶色のジャンパーです、コーデのしようがあるのかと。
最近ワークマンでも絵ヅラは洒落てます。そりゃそうです、大正時代のアメリカで労働者がほぼこれですから。
ぱっと見、長靴が似合いそうです。
タンカースの良さはレトロビンテージ・現物を見ないと分からない
友人と買いに行きました、人と行く趣味モノ買いは事前の検討ミーティングが楽しいのですが、「まあ、二番手だな」って。
二人とも言いました「ちょっとダセえもんな」
画像では「ダサい」・写真映えしないデザイン
本命はこちら「エアボーンジャケット」と「B-2」または「G-1」。ワッペン付きがいいんだろうかとか、B-2は色どうすべえって。
暑すぎるかもしれないから「B-3」がいいかななんて話しながら上野は御徒町へ。
画像と全く印象の違う現物・A-2やG-1とは違うビンテージ感
で試着したとたんに二人とも黙った、ネットの画像とは全く違うよさだったからです。
画像で見えるダサさは実は「ビンテージ感」でした。現物を見ないと説明が伝わりづらいテイストです。
通販向きのアイテムじゃない。
実際に現物を見る、そして着たとたん良さが全部わかる珍しいウェア
「画像イメージとかなり変わりますね」って、着るともっとイメージが違う。
その日買ったのは結局これでした。
デティールを細かく見ますと
- 色（直球のカーキというかブラウン）
- タイトなかたち
- そしてチラ見せのウールライニング（いい感じのブラウン）
しかもウールの襟が自然と立ち気味になる、これ大事です。
近代的なフライトジャケットとは正反対。
古典的、オーセンティックなんであります。
最古のワークウェアにして新品
この古典的ってところで全部理由がわかった。
前期型の生産は1941年ですが、原型は1920年代の作業着。
最初はアメリカ陸軍の作業向けとして、そして動きやすさから狭い戦車内向けのクロージングとして採用されたようです。
フライトジャケットのように研究を経て作られたものではありません。
その時代にたまたまあった動きやすい服を、ほとんどそのまま使った。
100年近く前のウェアがいまだに当時のディティールを検証され、作り続けられている。
大正時代のビンテージなアメリカンカジュアルです。
イメージしていただけるようお伝えできるかしら。
1920年代の機能性とは・最初期のSF雑誌はタンカースライクの服でいっぱい
1926年（大正15年）にアメリカで世界最初のSF専門誌が創刊されます。
「アメージングストーリーズ（Amazing Stories）」
冒険ものの小説中心で爆発的に売れましたが、その中に出てくる人のファッションが
スーツ（というか背広、ネクタイ着用・ハット付き）
または作業着。
世界最初のSF誌の挿絵はタンカースジャケットだらけ・1920年台のテクノ・「高機能ジャケット」
その作業着デザインはタンカースライクなもの。
ジッパー全上げでインナーがワイシャツにネクタイ締め上げたりしてるのが時代です
その作業着の挿絵はだいたいこんな感じのジャケットです。
タンカースみたいな身体ピッタリのデザインが当時は未来だった。
こういうものが廃れずに100年続くとオーセンティックな味がたっぷり出る。
精巧なレプリカが新しく作られ続ける理由です。
（脱線）「宇宙のスカイラーク」（E.E.Smith）は未読ならば是非
完璧に話がズレますが当時の作品で「宇宙のスカイラーク」（E.E.Smith “The Skylark of Space”）は現代でも読めます。
「レンズマン」シリーズの作者といえばお分かりの方もおられるかと。
本当に、かなり、面白いので未読のかたは是非。
Kindleのグーテンベルグ版のみ当時の挿絵を見ることができます。
本当は創元推理文庫版の中村能三訳が一番面白いんですが、残念なことに絶版。
宇宙服も革（防水でいけると思われていた）時代の高機能ウェア
下手をすれば革製のタンカースみたいなもんを着て宇宙遊泳をしている描写がガンガン出てきます。
もちろんズボンも革。
ジッパーの上を密閉してみたいな説明が出てきます。
革は防水、だからつまり空気も通さないので宇宙服の素材になると本気で思われていた時代です。
宇宙船のデザインもみんな球形、まんまるが宇宙飛行に最適と思われていた。
なお一応申し上げますと、Amazing Storiesで書いている作家は多くが科学系の博士号か学位を持ってましたから、当時の研究者にとってもそれが最先端でした。
繰り返しますが1920年代、第一次世界大戦の後です。
ま、そんなことはさておきかなりクラシックな「高機能」デザイン。
今でいうテクノに近いものを感じさせていた服です。
A-2が現代的に見えるほど時代もテイストも全然違う訳です。
確かにネットの商品画像ではダサく見えるでしょう。
A-2と同じコーデでいい・超クラシック＋ファストファッション（現代）の組み合わせ
ピンで見ればふるふる古典的ですが、今着るとビンテージな高機能デザインが際立つ。
直球のアメカジですと時代考証が完璧すぎて少々アレですが、ファストファッションみたいな「今」との組み合わせは完全に「モダン」です。
若い子たちが着てるMA-1のように。
A-2がそうですが、直球のアメカジより今風のアイテムやシルエットにさらっと合わせたほうが上手くいくようです。
なるほど画像だとダサいはず、今まで通りのアメカジコーデ例が多いし。
おかげでアタシらも画像と試着のイメージが違ったというわけです。
ということで現物・中田商店（後期シルエット）
中田商店でお買い上げ、これも8年ぐらい経ってます。洗濯機でガンガン洗ってますがリブもジャージもダメージなし。
まったく無しです。
ディティールを常にアップデートし続ける中田商店
ベージュですがリブのジャージ、これの色と大きさがいい。シルエットの中に絶妙にバランスしています。
シルエットも絞り気味でもっさりしません。
またこのライニングの色が微妙に見えて差し色になります、手放せないアイテム。
中田商店は最もオリジナルを追求しているレプリカベンダー
なお中田商店（SESSERブランド）はこの製品にはことのほか注力しているようで、アタシらが買ったあと、ディティールを更に見直した新シリーズを販売しています。
今買えるモデルがそれで前期／後期に分かれています。
細かい違いはいくつかありますが、大きなポイントはポケット。前期は前ポケットですが後期はかなり高い位置に斜めに入っている。
独特のカーキとシュッとしぼれたリブ、襟からチラ見の茶色いジャージライニングが見た目のポイント。
こいつのおかげでギリギリ、でも完全に作業着には見えません。
現代のタンカースと比較・CVCジャケットは「まだ若い」
なお現在使われているものはこれ（米軍実物）、難燃性ノーメックスが素材。
まだ「若すぎる」感じ、100年寝かすというのは大変なものです。
もう少しオーセンティックなイメージが欲しい。
これもあと100年経ったら「FURY」タンカースの味が出るんでしょうか。
（重要）どちらを選ぶ・パッチ付きかプレーンか
ここ意外に重要ですが、パッチ付きを買うべきかそれともプレーンでいくか。
アタシはプレーン、友人はパッチ付きを買いました。
パッチ付き／プレーン両方欲しくなるのがタンカース
結論は「両方欲しくなる」です。
お互いみるたび言ってます。プレーンにすりゃよかった、パッチいいよねって。
映画『FURY』の正式採用モデルが購入できるのは中田商店のみ
なおタンカースジャケットは「FURY」（2014年）にしびれて欲しくなった方が多いと思います。
米国ではビンテージのタンカースジャケット相場を高騰させたほどの影響がありましたが、こちらでそこまでする必要もないでしょう。
とにかくタイガー戦車との戦車戦はもう必見、とてつもないリアルと男の友情
ブラッドピット見直しました。そりゃビンテージ欲しくなるわ。
ただこのモデルにについてはBUZZ RICKSON’Sよりも重みのあるブランドがあります。
実際に映画へウェアを供給したSM WHOLESALE社のタンカースであります
戦争映画向けに供給実績多数である会社。映画「FURY」タンカースのオリジナルだけは中田商店のみ取り扱い。
かなりカッコいいです。アタクシはもうプレーンを持ってますからパッチ付きならこれしかないと決めております。。
現物は更にいい感じであります。
同じ大正でも普段着で和服はコーデのしようもありませんが、タンカースジャケットのように今使えるクラシックアイテムは貴重です。
時代離れしています、しかしなぜか今使えるモダンがある。
100年前のデザインが使える、こういうものがあってよかった。