ピュアオーディオがそうですが音ははっきり好みがあります、いい音は人それぞれ。
全員が納得するベストチョイスってえのは実はないです。
つまりおすすめの中から「自分のいい音」を選ばなければならない。
これは難しいのですが「間違えない試聴」、アタシごときがクチはばったいことを申しておりますが、そういうものはあるようです。
「音量」で聴き取る
少なくとも私たちが店頭で試聴するとき、自分でコントロールできる要素はこの2つだけです。
- 音源(曲)
- 音量(ボリューム)
そのうち音量という要素をフルに活用する話です。ポイントは以下3点です。
1.長く聴かない(数分)
2.大音量→小音量→好みの音量の順で聴く
3.曲の終わりぎわを聴く
なお繰り返しますがヘッドフォンやイヤモニのおすすめから好みの1機種に絞り込む話です。おすすめはたくさん紹介があり、そちらで。
おすすめの試聴とは消去法「合わないものを排除する」こと
ポイント3点の目的は自分に合わないものを排除することです。
高音質を聴き当てることではありません。
同じようで違う作業です。いいものを選ぶなんて限りなく難しいテーマですが、自分に合わないものを排除していけば、少なくとも買った直後から何か違和感が、そして後悔へというお決まりの悲劇はなくなります。
有線・ワイヤレス共にこれは同じ。また音源はスマホでいいです、音を楽しむためではない、比較ですから。
念の為、前回申し上げた装着感はこれら音質よりも優先します。地味な話ですが、ブランド品であろうが機能やデザインが優れていようが、サイズの合わない靴は使いようがないのと同じです。
試聴前のご注意・3.5mmヘッドフォンアダプターを忘れないで
なおご試聴の前にひとつ。
とても些細なことですが、ご自分の音源を再生する機器と試聴ヘッドフォン・イヤモニを接続するため変換アダプタを持っていくことを忘れないでください。
数があって困るもんじゃありませんが、これ現地で買うとわりと盛り下がります。
- LighteningまたはUSB-C⇄3.5mm変換アダプタ
試聴機の入力はよほどの例外がないかぎり3.5mmヘッドフォンジャックです。
もちろんヘッドフォン売場ですから現地で売ってはいますが、その試聴のためだけに買うことになります。
恥ずかしながらアタクシは3回ぐらいLighteningオーディオアダプタを買ったので。
買うヘッドフォンは数千円〜数万円です。その時アダプタに1,000〜2,000円って、普段に増して自分がアホウに思えた。
1.長く聴かない
1機種あたり数分、出来るだけ短時間にしたい。
試聴機で1曲全部(アルバム全曲ではなく)なんて聴き通したらまず間違いなく失敗します。
これだけは本項で自信を持って申し上げられます。
誤解なきよう申し上げますと試聴自体はとても楽しいんです。目の前に最新のヘッドフォン・イヤモニがずらっと並んでいたら時間のあるかぎり続けたい。
ただ決めるときだけは違います、長時間聴くと耳が慣れる。
必ず全てがよく聴こえるようになってしまい試聴にならなくなる。
オーディオ・ヘッドフォン評論家ならずとも人の耳はとても繊細です。よくできた音は素直に良いものとして捉えます。
だから余計な知識は外す。何も知らない、バイアスが掛からないまま聴くほうがむしろ判断は正確です。
しかし長く聴くほどそのヘッドフォンを知りすぎてしまう。
なんとなくいい音に思えてしまう、比較には大敵の思い込み・バイアスが掛かりました。正確な判断が出来なくなっています。
ピュアオーディオがそうです、長く試聴するひとは事前に仕入れてくる知識の量が凄い。そしてだいたい決められない。しかも買った後に後悔が多い。
2.大音量→小音量→好みの音量の順に聴く
試聴の音量について一度こんなやり方を試してみて頂ければと。ヘッドフォン・イヤモニの特徴を聴きとりやすい。
- 最長30秒ぐらい着けているのが厳しいほどの大音量できく
- ヘッドフォンを着けたまま、普段よりかなり小さい音まで絞る、1分ほどその音量で聴く。
- 好みの音量までゆっくり上げていく。そこで2〜3分聴く。
「項目3」で音量をゆっくり上げたとき、静かな中から最初にはっきりし始める音があります。
この最初に聴こえる音が気に入るものかどうか。
あるいは音量がだんだん上がっていく過程で「何かいいな」という感覚、または「ん?ちょっと」という違和感を感じる瞬間がどこかにあるかどうか。
最初にはっきりし始めた音は好みかどうか。
また違和感を感じた機種は候補から外します。
なお「項目3」で好みの音量まで上げた時、気づけばいつもより大きめの音で聴いているようならばその機種は脈ありです。
なおこのやり方は上位機種と下位機種の違いがよくわかります。必ずしも高いものが自分の好みではないと気づく場合もあると思います。
3.レコーディング(曲)の終わりぎわを聴く
演奏の終わり、ではありません。録音が終わるその瞬間です。
これはご自分の好きな音量で聴いて頂ければ。
気配がわかるかどうかを知るポイント
どんな音源でも演奏が終わった後、更に録音そのものが終了して「フッ」と気配が消えるその瞬間があります。
いいヘッドフォンやイヤモニはをこれをわりとはっきり伝えてきます。
マニアっぽい表現で申し訳ないのですが、よく音の分離がいいとかいわれるものはこのあたりを確認できます。分解能とかSNの良さが関係してきます。
いいスピーカーやアンプ・プレーヤーに共通で、ポータブルのBluetoothスピーカーとは一番違う特徴のひとつです。
これができるものは正攻法が得意ですから手に入れたあと長持ちする。音が暖かいとか冷たいとかの前に一通り聴かせるものを持っています。
小音量は音質差を聴き取りづらい
人の耳はある程度大きい音量のほうが音質差を聞き取れる、これは事実です。小さい音は聞こえづらい。この原理を利用したデジタル圧縮フォーマットも現実に存在します。
何を言わんとするのか、試聴のときだけ少し大きめの音量がよろしいのではないかと。
自粛ですからもう随分行っていませんが、自分もヘッドフォン試聴コーナーはよく行ったクチです。その時気づいたことがあります。
自分で音量をコントロールできる試聴機を聴こうとした時、ほぼ例外なく音が小さかったことです。
つまり私の前に聴いていたひとはほとんどが小音量に絞って聴いていた。
自分は難聴気味なんじゃないかと思うときもありましたが、オーディオでわかった。以前よりも控えめな音量が好まれています。
楽しむぶんには構わなくとも、決めるための比較視聴で小音量はあまりよろしくない。
かく言うアタクシもRoydあたりから聴く音量は小さくなり始めた。
興味があってここは実際にオーディオ評論家の皆さんの何人かに直接聞いてみても同じお答えでした。
一様に「ユーザーは昔より小音量になったね」と。
既に亡くなられた、つまり当時高齢の評論家ほどその印象が強かったようです。
シアター用ですから大音量が得意、評論家の山中敬三氏が使ってのち有名に。
切り裂くような音です。実は小音量でもイケる。
この頃は大音量が好まれていました。小音量はどちらかといえば苦手
上記は好みの流行りに関する話ですが、オーディオを選ぶ際にちょっとした影響があります。
音を出すコンポーネント、スピーカーでもヘッドフォン・イヤモニでも、聴き慣れていない個体が相手の時、小音量による音の判断は結構難しい。
86年発売のWattから小音量重視、コンデンサースピーカーの流行などアメリカで聴き方が変わりました。
モニター用ですが、小音量も明らかに考えた音でした。38cmウーファーなのに。
デカい音はもちろん、小音量でも極めつきです。時代は変わりました。
試聴にモニターライクは不要・聴き慣れたものを
なお特別音が良いとされる音源や機器を選ぶ必要はありません。
比較、つまり「差」がわかること。だから普段から聴き慣れている機器や音源を準備してください。
無論スマホではなくてDAPでもいいです。もちろん聴き慣れたものに優秀録音の音源があればぜひそのファイルを入れていくのがいいでしょう。
逆に言えば音質が良いとの評価があっても聴いた経験が少ない機器や音源はやめたほうが良いです。視聴直前に新しいDAPを買うのはよろしくないということです。
ときどき試聴には優秀録音とかモニターライクのDAPが良いというご意見がありますが、モニターつまり検聴の意味が違うのかもしれません。
レコーディングやマスタリングでは聴き慣れた環境がまず大前提です。買った直後のスピーカーやイヤモニでいきなりレコードディングをすることなどありません。
音を掴む「完熟の期間」が必ずあります。
繰り返しますがいつものスマホで全く問題ないのです。試聴用にと新たにDAPなんて買うと逆に判断出来なくなります。
技術の話は忘れたい・スペックに引っ張られる
なお技術がどうこうという話はこの際あえて触れません。密閉型と開放型の違いとか、ハイレゾの意味とかそういったことはこの際考えない。
スペックは大事ですが、試聴のときに思いだすと
「ハイレゾ効いてるな!高域伸びてる」
とか
「ダイナミック型!厚みがあるな。音抜けや繊細感はいまいちだけど」
と聴く前からイメージが決まってしまうことが結構あります。繰り返しますが音は人それぞれ。同じヘッドフォンでも音の感じは世評とは違う個人差があるはずです。
最後に決める時はそういったレビュー情報は一旦リセットしたほうが先入観なく音を感じ取れるかもと、まあそんな感じです。
前回ヘッドフォンやイヤモニはスピーカーに比べ大音量は得意ではないと申し上げました。
逆にいえばボリューム限界の高いもの、つまり音を大きくしてみたとき音が崩れることが少ない(割れたりやかましくなりづらい)ものは小音量でパフォーマンスが高い可能性があります。
お好みは控えめな音量でも試聴の時だけ少し大きめ音量を試されてみては。決めるその時だけ。
現実の音楽もえらくデカい音ですし。