トップエンドとなってはや十数年、YG AcousticsやMAGICOをリファレンススピーカーやデモ機に使うメーカーも出てきました。
挑戦者もちらほら出てきた、ただどうしても年季の違いがある。
この2大メーカーは一聴普通、尖っていない、でも全方位で一段格上です。
違うブースで違うシステムで同じメーカーのスピーカーを聴けるフェスの良さです。
Hailey 2.2の本家デモは鋭さで、SOULNOTEは叩き切る音
一番感じたのはSOULNOTEのあとで本家YG Acousticsブースを聴いたから。 またSOULNOTEに舞い戻ったりと、まさに比較試聴。 夢のような体験でした。
同じブランドでこれほど違うのかと。
オーディオ趣味が息長く楽しめる理由でありますが、Krellで鳴らはSonja 2は一聴静か、その代わり空気がビッと張り詰めます。
SOULNOTEはとにかく熱く暑く迫る、ムンムンしている。
本家のHailey 2.2が日本刀ならSOULNOTEは研いだナタ
そんな感じです。
MAGICO(M2)はといえばマッキントッシュで鳴らす。
それまでのイメージ以上にふんわりと鳴っていました。
でもこちらもとても密度の高いふんわり。
オールカーボンとアルミの筐体で、なんでああ鳴るのか。
キーともカーとも鳴きゃしない。
しかしいかなるシステムでも低音が空気のように軽く、パーンと広がってくる。
YG AcousticsとMAGICOを極めてわかりやすく説明
音楽愛好家の皆様やハイエンドにはご興味がない方向けにかいつまんで申し上げますと、この2つのブランドは
オーディオスピーカーは高級なクルマと同じかそれ以上に高くてもいい
という価値観を作り出したブランド
YG Acousticsはイスラエル(現在はアメリカ)で2002年に創業、MAGICOはアメリカにて1996年に設立のいずれも若いメーカー。
「地球上で最も高価なスピーカー」2002年当時
フラグシップモデルを挙げますと
MAGICO:600,000ドル、つまり6,800万円
YG Acoustics(XVi):5,500万円
なお現実には800万円ぐらいのものが量販価格帯のようです、まあ「量販」という言葉が適当かどうか知りませんが。
最初にこの路線を始めたのはYG Acousticsで、2002年当時「地球上で最も高価なスピーカー」といわれました。
ベタな比較ではありますが、
ロールスロイスファントム:6,000万円前後
フェラーリ「ROME」:2,676万円〜
いうまでもありませんが、ひるがえってスピーカー2本の価格であります。
他にいろいろとかかる。
Bowers and wilkinsのように3万円のプリメインアンプで鳴らすというわけにいかない。
アルミ塊からスピーカーを削り出す
斬新(というかクレイジー)だったのは両社とも材料はアルミとカーボンぐらいしか使わなかったこと。
他社との最大の違いは
アルミ塊を削り出してスピーカーの箱を作ること
別にできない話じゃない、その作業をする工作機械自体は普通にあります。
そんなことをすればコストは非現実的になるのでやらないだけです。
言ってみれば4トンぐらいのアルミの塊からクルマをボディ丸ごと削り出すようなものです(繰り返しますが板から叩き出すのではない)。
それじゃ1億だって赤字です。
それで誰もやらなかった。
値段に驚き価値を怪しむ人々を、しかも音質で驚嘆させました。
懐が深い、そして音が尖ってない・MARTENは「特攻服」着用
共通するのは
どんなシステムも「合わないということがない」懐の深さ
そして音には尖ったキャラクターがない
この2つのようです。
比べてMARTENを聴くと「闘魂」とか連想します。
鋭く迫る、YG AcousticsとMAGICOのクビをカッ切ってやろうと意気込むだけのことはある。
特攻服を着ております、若い。
ここが年季というものか、同じ最高価格帯でもYG AcousticsとMAGICOにそういう先鋭的なところはない。
やわらかい、しかし物凄い密度で空間を音で満たす。
製造方法は非現実的・思いついてもやれない
造りは思いきりやりたい放題であります。
双方共にアルミから削り出しで箱を造りますが、
YG Acousticsに至ってはスピーカーユニットのコーン部(振動板)まであの大きさのアルミ塊からあのすり鉢になるまで薄ーく削る。
振動板が新素材とかいうレベルではありません。
金属板やクロスを丸めて円錐形を作るのとは精度も強度も違いすぎる。
恐れ入った。
マシニングセンターなどこれをやれる工作機械は普通に色々ありますが(日本製が一番です)、材料や加工時間も含めた製造コストが非現実的すぎて思いついてもやるヤツはいません。
実際に金属加工の部門長に質問したことがあります、そういうのはできるものかなって。
最初アタシが何を言っているかわからなかったようでした。
こいつ(前からバカだったけど)ついにおかしくなったんじゃないかと思ったらしい。
回答は「できないことはないけどそんな話より仕事しろ」でした。
オーディオにシラけた時期・どんどん値段が上がった頃
といいつつ正直いえばアタシもオーディオが面白くなくなった時期でもあった。
数年で全てのオーディオが価格UPした。
B&Wが倍以上になった・北米の物価が上がったのが理由
B&Wのフラグシップが初代801(2004年から800系)
からこんな調子でどんどん値上がりした時期です。
どんなに頑張ってももう買えないでしょうと。
※いずれもペアの値段
- Nautilus801(1998年) :¥2,000,000
- Nautilus 800 (2001年) :¥3,000,000
- 800D(2004年) :¥3,150,000
- 800Diamond(2010年) :¥3,780,000
- 800D3(2016年) :¥4,500,000
- 800D3(2021年) :¥5,556,000
冷静に考えれば北米の物価が上がっている時期でした。オーディオメーカーが悪いわけじゃない。
ただ逆に価格が下がっていく電子部品メーカーなんぞにいると、こういう状況では収入面で不幸です。
トドメのリーマンショックでおおかたは潰れちゃったのに趣味のコストだけが上がっていく。
言葉にするのも恥ずかしいのですが、IKEAのスツールをスピーカースタンドへと思いつくような奴ですから世界がどんどん遠くなっていった。
地球上で最も高価といわれたスピーカー・YG Acoustics Anat
なお最初にYG Acousticsを知ったのはまだイスラエルに拠点を残している頃だったと思います。
初代Anatが100,000ドル
つまりざっと1,000万円のスピーカー
前述のとおり海外で「地球上で最も高価なスピーカー」と言われましたが
今となっては最も高価「だった」スピーカー。
現在はもっと高価なものがあります。
なおアプローチも過激すぎて興味が持てなかった。
オール削り出しのスピーカーなんて。
ドバイのファンドCEOとかシリコンバレーの社長に売るのかなと。
こんなに材料をムダにして、削りクズはちゃんとリサイクルしてるんでしょうね、などと思いつく限りの貧乏臭いことを考えておりました。
ほんと小者ですなあ。うだつが上がらないわけです。
他の方と同様、この頃はアタクシもオーディオちょっと近寄りづらくなってつまらんなんて考えていた。
とりあえずB&Wのヘッドフォン集めて数年ウサを晴らしたというのが正直なところであります(P7買い忘れましたが)。
YG Acoustics・MAGICOの関連情報を無視できなくなっていった
ただその後考えが変わった。
ほんのチラ聴きできたYG AcousticsもMAGICOも、とにかくクオリティが違う。
単純に部屋に音が充満するとでもいえばよろしいか、音の密度が高い。解像度がとか刺激感がどうとかいう気を失くさせる。
音が暖かいとか冷たい以前にクオリティが違いすぎる。
JBLかTannoyか、それともB&Wか
そういう脳内シュミレーションがどんどん少なくなっていった。
聴きながら雑誌を読むのが無上の楽しみですが、両社のトピックをどうしても読んでしまう。
聴きたい、それでおそるおそる。
あれを聴かせろとショップに行くなんてハードル高すぎる。身なりで追い出されるでしょう。
オーディオフェアや試聴会がチャンスです。
ビリビリきた、詳細は改めて。