以前B&Wのスピーカーは安いプリメインアンプでもそれらしく鳴った話という体験を書きました。
A-0もエントリー機種ですが、他と性能を比べて安いか高いか、そういう尺度と違う気がします。
このアンプは本当に珍しい。
おそらく「コスパ」で買うと理解できなくなるプリメインアンプです。
- A-0の世界で鳴る・スピーカー、音楽プレーヤーに相性はすくないが差は出すアンプ
- 今までにない音・他のプリメインアンプとの比較レビューは難しい
- オーディオ専門用語のキャラクターはたっぷりある・それではA-0を説明できない
- プリアンプ直結(?)のプリメインアンプ
- 奥深くでなく「左右に回り込む広さ」の音場感
- ウーファーがぐいぐい動く、という感じなく「密度が高い」低音・DENONやMarantzとのちがい
- 「オーディオコンポの音質ランキング」で比べてもあまり意味がない
- A-0、A-1と比較対象となるアンプは同クラスにない(たぶん今後も)
- 馬力はないが表現の手数はセパレートアンプに近い(誤解されるのであまり言いたくない)
A-0の世界で鳴る・スピーカー、音楽プレーヤーに相性はすくないが差は出すアンプ

駆動力といえばDENONやMarantzが上です、A-0は明らかに違う場所に住んでいる。
以下は比較レビューがしづらい個性の話です。
ひとことでいえば「A-0の世界に完結する」
値段のわりに良く鳴るのではありません。
「オーディオのおすすめ」はもうたくさん、そういう方向きです。
念のため、音楽性の代償として非力とかではありません。
相性の「いい」「悪い」スピーカーがあまりない・システムの悪いところはよくわかるが
A-0はスピーカーや、もっといえばプレーヤーなどを選ぶところが少ない
手元にあるスピーカーのうち稼働しているのは
ご覧のとおりたいしたものがない、しかも偏っています。
どれも好きです。
これらはその他のアンプ、Aura design VA-50そしてCREEK4240
もっといえばPioneer A-09とははっきり「相性」がありました。
プレーヤーも同様で、容赦無く弾かれるものもあった。
違いを正確に聴きたくて比較対象のAuraとCREEKはフルメンテに出したのです。
しかしA-0にはスピーカーを選ぶところがあまりない。
それでいながらシステムの悪いところはなんとなくわかることが面白い。
セッティングやケーブルなど。
A-0を聴き始めて最初に感じたのは、アンプの良し悪しではなく
「スピーカーの角度と高さをもう少し詰めたほうがいいかもしれない」ということでした。
Bowers and wilkinsと組み合わせたい音・JBLはしなやか
かといってスピーカーを力でねじ伏せるほどのパワーはない、音を聴くと錯覚するのですが。
言えばヤボですが10万円ちょっとの、しかもプリメインアンプです。
このアンプにはいないでしょうが、ソウルノートの上位システムは
たとえば今メインストリームのBowers and wilkins 600/700/800シリーズいずれも違うスタイルを持ち込めると思います。
設計者の加藤秀樹氏は「音作りはしない」とたびたび述べておられます。
ただこのA-0はこれまでのアンプとは違いすぎる。
音を聴く機械として音作りという言葉がダメなら、アンプとして音楽の受け止めかたとでもいえばいいのか。

なお詳しくは別途としますが、JBL control12SRはたいそうしなりの効いた、それでいて粗さ少ない音で鳴る。
ワイルドながら表現は多彩、ホーンには確実に合います。
最近この組み合わせ聴きが何故か増えてきた。
今までにない音・他のプリメインアンプとの比較レビューは難しい
こんな調子ですからA-0を他社アンプと同じく比較できるのか、と。
現在比較サイトでソウルノートの全てが高評価ですが、それはハイエンドで人気が出たごく最近の話。
オーディオレビューの「コスパ」とはセパレートに近いこと
A-0、なによりA-1はリリースして数年経っております、その間全く話題になりませんでした。
そもそも「おすすめ」「比較」「ランキング」のレビュー手法では計り難いからです。
コスパにまつわるあらゆる言葉で説明できない。
「ソウルノートA-0・A-1は生き生きとした音で、今とても人気があります」
ぐらいしか説明ができないと思います。
「コスパ」とは、つまり近い値段のものと比べたとき
◯×がほかよりいい
例をいえば「よりパワフル」「重量級」「高音質部品が多い」
プリメインアンプならばセパレートアンプに近いほど言うことなしです。
他社プリメインはほぼすべて、この方向です。
しかしA-0をセパレートと比べてもあまり意味がない。
世界が違いすぎる。よく聴けばパワーがないのに力強いという矛盾したアンプ。
ハイエンドユーザーで端的にそれを感じた方もおられるようです。
Soulnote A-0とDenonやMarantzの違いとは・中古の人気にみるA-0の常識はずれ
むろん「コスパ」は大変にいい、人気はあるし下取りの価値はヤフオクを見れば一目瞭然です。
生産が追いつかない現在、程度のいい中古は新品価格とほとんど同じで取引されています。
しかし音の尺度があまりに違う、だから買って期待はずれの方もおられる。
実際、ランキングでもDenonやMarantzと何が違うのか、はっきり述べたものがありません。
駆動力はプリメインの標準でしかないのに
全ての音に力がある
A-0の際立ったところです
オーディオ専門用語のキャラクターはたっぷりある・それではA-0を説明できない
オーディオについて雑誌やレビューをみると以下のような説明がたっぷり入っています。
ケーブルなどになるともっと極端な表現です。
「パワー・クリア・ハイスピード・透明感・暖かさ・情報量」はA-0の一部にすぎない
- パワー
- ハイスピード
- 透明感
- あたたかみ
- クリア
- 情報量
オーディオ用語、定義はよくわかりませんがレビューは必ずこのどれかが入っています。
実際聴けばなんとなく感じることも事実。
ケーブルやインシュレータはさらに「衝撃の音」「激変」「部屋の空気が変わる」と続く。
むろんソウルノートA-0にもあると言えばあるのですが、しっくりこない。
プリアンプ直結(?)のプリメインアンプ
このアンプについていえるのは実に丁寧に信号を増幅をしているということです。
単に良い部品を使った、とは違う感覚です。
無理に大出力を取り出したりしません。
音楽信号をていねいに増幅拡大して
スピーカーへ(ここが大事ですが)変質させないように
もれなく送り込んでいる。
解像度が高い、では不正確で、原型となったSA1.0から、内部レイアウトや基板のアートワークが全く変わった理由だと思っています。
内部を見ましたらこれは大変、でありました。
競合機種どころか他のいかなるアンプと比べても変わっている。
咄嗟に「プリアンプ直結」という言葉を連想しました。
アッテネータでパワーアンプ直結は音が薄くなった
最近見ませんがCDが出た頃、セパレートアンプ界隈ではパワーアンプ直結という方法が流行りました。
プリアンプの代わりにアッテネーター(ボリュームだけ)を使い、複雑なプリ回路を全部すっ飛ばすという手法です。
独特のストレートな音で快感ですが、音が薄くなることが多い。
プリアンプの信号そのままの質感
厚みにはプリアンプが必須で、そのためハイエンドでは廃れました。
その文法でいえばA-0はパワーアンプ直結ならぬ「プリアンプ直結」とでもいえばいいか。
細かい音が勢いよく、しかも厚みがあるのにしなやか。
大増幅ほど質が落ちやすいのがパワーアンプですが、そもそも小出力ですからその心配は皆無です。
これを狙って大電源に出力10Wとは、改めて度胸のあるエンジニアだなと感心しました。
音の通りにロスがないとわかる、それでいて低音が寂しくなったりはしません。
実感できるのがA-0の音場感です。
奥深くでなく「左右に回り込む広さ」の音場感
ひっこむのではなくせり出す音場。
それでいて奥行きを感じるのは大きく包みこむからです。
A-0の音場はなかなかに広いのですが、左右のスピーカー中央に奥深く拡がるのではなく、
左右頭上にせり出し回り込んで奥行きを表現するタイプ。
デリケートな微小信号を位相面で正確に増幅しようと、相当配慮しています。
だからKhadas Tone2 Proのように、音を作らずジッター排除など特性だけを突き詰めただけのDACが活きる、実に拡がります。
マイクで録った音を正確ストレートに出す・残響音が克明に
完璧にセッティングが決まったスピーカーで
マイクで録った信号をストレートに出すとこういう音が出るのですが
A-0は最初から近い音で始まる。
吸音してあるスタジオのわずかな反響がわかるほどです。
結果として音場が広い。
ひと頃、解像度を上げすぎて逆に奥行きがなくなってしまったアンプがありましたが、A-0はきめ細かさについて定義が違うようです。
パワーは明らかにプリメイン水準のはずが、音に勢いがあると感じてしまう理由じゃないかと思っています。
ウーファーがぐいぐい動く、という感じなく「密度が高い」低音・DENONやMarantzとのちがい
これが競合の、たとえばDENONやMarantzとの違いでしょう、馬力勝負ではない。
ここで優劣を競わないのでおすすめとかコスパ説明にあまり意味がない。
SUVとスポーツカーのお買い得比較をするに近く、両者は完全に定義が違うのです。
ヤフオクに新品同様の中古A-0が出品される理由・従来のオーディオ感覚でのレビューは難しい「高密度で軽い低音」
人気があるのにヤフオクで出品される理由だと思います。
A-0やA-1はYahooオークションに「通電時間僅少」「新品同様」が結構でてまいります。
手放した人はある意味正確に聴いていると思います。
「いつもの説明と違う」と。
A-0は雑誌やレビューのレトリックとは関係のない鳴り方をする。
スピーカーを「駆動する」という感じがない。
はっきり申し上げて、それはDENONやMarantzが得意です。
しかしA-0の低音は密度が高く、それでいて軽い。
なめらかですがはっきりと伸びます。
A-1とA-0の音は上下関係にありません、どう聴いても表現が違うものです。
「オーディオコンポの音質ランキング」で比べてもあまり意味がない
誤解なきよう申し上げると(あえて繰り返しで恐縮ですが)、レビューの決まり文句は
『ワイドレンジで、SNはよく、躍動感があって、音場は広く、高音がスムースに伸び、低音の輪郭は(えらく)はっきりしていて、鮮度が高く、クリアで、温かみがあって、スピード感がある』
申し訳ない、わざとクドく書きました。
どれも当てはまるのですが、A-0の一部しか指していない。
オーディオコンポの音質ランキングを見て買ったら現物との違いに驚くことになります。
A-0の自然さはまさに「趣味」・ライブレポートやコンサートの批評はやや近いかも
他社が劣っているのではなく
「ランキング」「おすすめ」「良コスパ」のレビュー表現がA-0の音と噛み合わないのです。
ライブやコンサートのパフォーマンスについて批評する文章に
『ワイドレンジで、音場感が広く、高音の伸びがいい』
と書いてもまるで説明にならないことにやや近いと思います。
不正確を承知でA-0の音質をあえて申し上げるなら「自然」です。
普通「自然な音」を目指すと、単に迫力がなかったり優秀録音と劣った録音の区別がつかなくなることが多いのですが、このモデルはその差をはっきり出します。
それでいて露悪的なところがない。
趣味だと思います。
A-0、A-1と比較対象となるアンプは同クラスにない(たぶん今後も)
A-0は発売当時全く話題になりませんでした、今探しても当時の試聴記事はほぼありません。
旧ソウルノートの「sa1.0」のアップデートバージョンと思われていました。
事実上「加藤秀樹プロデュース」SOULNOTEの初代機であったA-1すら、数年遅れで評論家のレビューが載る有様。
誰が出力10Wの「ローエンドモデル」を取り上げましょうか。
発売直後「試聴記事なし」・ソウルノート加藤秀樹氏は6年待った
A-0の発売は2016年11月ですが、当時全く話題にならなかったのもうなずけます。
これ、従来型の表現で批評やレビューの書きようがない。
「今までのレビュー、ありゃなんだったんだ」と疑問の声が出るでしょうから。
ハイエンドでの高評価を経て今は絶賛にちかい、設計者の加藤秀樹氏はなんと6年待ちました。
A-0のような実質には「おすすめ」「コスパ」が参考にならないという好例です。
sa1.0とは全く違う・10W+10Wなんてコンセプトは他社がやれない
他で触れさせて頂ましたが、この方大変な忍耐の人です。しかもアイデアはエキセントリックでありながら手法は実に手堅い。
「こんなことを思いついた自分が間違っているんじゃないか」という自問自答から入る人です。
「6年前の設計」「sa1.0のモデファイ版」なんてとんでもない
A-0の代わりは他社からしばらく出ないと思います
アタシはずっと無理だと思っていますが。
ローエンドでAB級にして10W+10Wなんて企画の段階でビビってしまう。
ハイエンドではない、エントリーゾーンのプリメインアンプです、そこで極端に趣味的ですから。
簡単に触れましたが、録音スタジオの残響が自分の頭上や左右に拡がるオーディオコンポーネントなんてそうはない。
普通は左右のスピーカーの間に奥行きをドカンととっておしまいです。
再現の難しい低音の質感も、ウーファーがぐいぐい動くというフィールもなく、ベースの震えを重く速く聴かせるものは、少なくともエントリーゾーンのプリメインアンプで、アタシは経験がありません。
馬力はないが表現の手数はセパレートアンプに近い(誤解されるのであまり言いたくない)
これを申し上げると危険な間違いを犯しそうなので避けたかった、「コスパ」と誤解されるからです。だから以下は本当にあえて言うならばです。
セパレートアンプの表現に近い
しかしパワーアンプの力はそれに及んでいない
それにしては表現の手数が多すぎる
セパレートと同じ、とか超えたなんて言う気はない。それは不正確です。
ただ馬力はあってもA-0より表現が単調なセパレートアンプは意外とありました。
隠れてセパレートアンプからA-0乗り換えはいそうな気がする
これははっきり言えますが、現行発売中のセパレートアンプからA-0に乗り換えた、と小声で告白される方がいても不思議ではありません。
10畳前後の部屋において、平均的な音量で聴いたらA-0のほうがよかったという感想はあるはずだからです。
本当にバカな奴とお笑い下さい、アタクシはDennesen JC80のみずみずしさを思いおこしました。あれが生きていたら(今冬眠中です、たぶん永久に)A-0をパワーアンプで使ったらさぞ幸せだろうと。
繰り返しで恐縮ながらコスパやおすすめなど、
言い換えれば、新製品のたびに
「激変」「衝撃の音」
はもう結構、という方向けのA-0です。
ひとつだけ気に入らないことがあります。
SOULNOTEの公式ウェブサイトにある
「魂を蘇らせる」
あれは激変レビューと混同されるかも、違う表現がいいかもしれません。
なお手持ちの各スピーカーとの組み合わせはおいおい申し上げますが、
いっそ超高能率のスピーカーか
あるいは低能率・低インピーダンスの代わりに初動感度の高いスピーカーでうんと静かに鳴らすか
どちらかに決めたほうが楽しめそうな気がしております。
反応の鋭敏なスピーカーはA-0を楽しめる、これは確かです。
セッティングなど外的な変化にもエラく敏感だから、これはA-0の大事な点ですがそれでいて音のバランスは変化しない。
また、やかましいと思っていたスピーカーが滑らかに鳴り出す可能性はあります。
なおA-0はプリアンプよりパワーアンプとして使うほうが活きると感じております。
以降確認予定です。