昨年から延期が続いた007/ノー・タイム・トゥ・ダイついに公開です。
それに合わせて一部で話題になっているBBCドキュメンタリー「ジェームズ・ボンドとして(Being James Bond)」観させて頂きました。
おもしれえ、なるほど007デキがいいはずだわ。
不器用に、でも他人が何と言おうが追い続ける。
イーオンプロダクションの製作陣とダニエルクレイグは古典的な英国調「執念深さ」そのものです。
うれしくなっちゃいましたよ。
『ダニエルクレイグ、強メンタル!(きゃー)』なんて浅いドキュメンタリーじゃない
これはBBCが製作したドキュメンタリーです、同放送らしく掘り下げが深い。
ダニエルクレイグはプレッシャーを跳ね返した、強メンタル!
この程度では終わらせていません。
第二作の「慰めの報酬(007 Quantum of Solace)」があまりいい出来じゃなかったこともずけっと語る(というか言わせる、残酷です)。
- 製作陣が考えて続けてきた007
- ダニエルクレイグ自身の頑張りと変化
これを世間の評価を織り交ぜながら容赦なく観せてくる。
クレイグ本人に「いきなりスターになって私生活もワケがわからなくなった」とか言わせるんですから。
「私に押し付けられたスパイ」・ひでえ
思わず笑ったのはダニエルクレイグがボンドに抜擢された時のあちらの報道。
- ブロンドボンド
- 共演女優はいない
- ヨワそう
- 支持なし
きわめつけは
「私に押し付けられたスパイ(The spy who shoved me)」
これはウケました、上手い。
シリーズ屈指の人気作「私を愛したスパイ(The spy who loved me)」のブラックジョーク。
ほんと意地悪いね、英国人。好きだぜ。
英国流執念全開の007製作・でもクライグオーウェンの代わりにダニエルクレイグとは
一応申し上げますと、クレイグボンドは最初まさしく酷評の嵐でしたが欧米では映画・演劇評は賛否半々が大体普通です。
相当の良作でも結構ツラい言葉でけなされる。
でも製作陣はめげないんです。アメリカ流の「このヤロー、見ていやがれ」じゃなくて、黙々と撮り続ける。
器用じゃない、でもあきらめない。ジョンブルの得意技です。
最後は大成功(カジノロワイヤル)ですから。
しかしヤツらは変わりもの
クライグオーウェンの代わりにダニエルクレイグを選ぶ
2004年時点でこの判断は少なくとも地球上ではイギリス人だけでしょう。
でもねえ、人のことはいえない(むろん評論家の眼力なんてありませんが)。
アタクシは長年007ファンですが、最初はやっぱりありゃあダメだと思ったわけですよ。
アタシの周りは全員ファン化した・D クレイグボンドで
正直言います、面白くねえだろって思ってた。ダニエルクレイグ、悪役ヅラじゃんって。
これはボンドじゃない、そう思った日本人は国民の9割ぐらいいたはずです。
とにかく作る「寅さん」路線だと思ってた
完全に「寅さん化」したなあって。どっかで当たるまで作り続けるんだろうけど、俳優だけじゃなく主役のイメージまで自由に変えられるってトクだよなあとか。
しかも「カジノロワイヤル」ですよ、鬼門中の鬼門じゃありませんか。何であれを選んだのかいまだにわからない。
原作は有名でも映画は一番ダメ。パロディさえ作られたのに。
結構ソロバンはじくくせに、こういうところが英国人が何考えてるかわからない部分です。
エヴァ・グリーン見よっか、ぐらいの気分でした。
もちろんTSUTAYA借り。わざわざシアターなんてこんな映画でそんなヒマないよと。
オープニングでクギづけに・カジノロワイヤル
しかしですねえ、初回乱闘からのバレルシークエンスで始まるあのオープニングが終わる頃にはもうクギづけです。
(シリーズ中どころか、クリスコーネルの曲含めてオールジャンルでも屈指の名オープニングです)
「オレはバカだ、なんで映画館行かなかったんだ」
って真剣に後悔してました。
クルマがミサイルをブッ放さないことなんかもうどうでも良くなってた。
友人は007嫌いでしたが、無理やり観せたら「ロジャームーアと全然違うじゃねえかよ」の一言。こんな感じでアタシの周りは皆ダニエルクレイグボンドのファンです。
タイプキャストの呪い・ダニエルクレイグはこれから大変
多分ダニエルクレイグはこれから「ボンド俳優」と呼ばれます。
これからも大変です。
確かに007以降どの映画見てもダニエルクレイグがボンド兄貴にしか見えない。
毎回骨折までしながらあのイメージを作り上げたのに、今度はそれを壊してかなきゃならない。
ひとつだけ、ダニエルクレイグのツラ構えが初期とはまるで変わったということです。もしかしたらもうひとつ化けるかも。
そしたらもっと凄くなります。もともとアート系の実力俳優だし。
コンテンツは海外が圧倒的に面白い(特にリブート)
あとこの番組は007っていう古典的ストーリーを2000年代にどうするかっていう掘り下げがとにかく楽しい。
この俳優にホレこんだんですよ、みたいなつまんない自己満足はゼロ。
007のプロットは明らかに古い、それをどうリブートするか。
自分はこう考えて作ってきたってことをバーバラブロッコリ他の製作者が全編で語るわけです。
ダニエルクレイグはここでは「素材」
キャプテンアメリカの時に思ったんですが、向こうの映画もドラマも作る前の構想に全然あいまいさがない。
特にリブートもの。
Marvelのキャプテン・アメリカ、あれも本来バカキャラですよ。本来かっこよく見えるわけがない。
メットに「A」とか入れたお兄ちゃんが星条旗の服着て戦ってるんですから。
でも面白かった、想像を超えて出来が良かった。キャプテンアメリカも「ファーストアヴェンジャー」のボーナストラックに入ってる製作陣の話はかなり面白かった。
1940年代に生まれたキャラクターをどうやって現代化するかを延々語ってました、007と同じです。
それが説得力がある、この番組と同じです。
観てるこっちが恥ずかしくなるような熱意の話、あとは人気のあるタレントかお笑い芸人かアイドル入れて最後は粗末なSFXでなんとかする、そういうまとめはいっさい無い。
繰り返しますがボンドの第一候補はクライヴ・オーウェンだったそうで、それを却下してダニエルクレイグ一択だったと。
オーディオもそうですが、このへんは英国人何考えてるかやっぱりわからん。
連中の目利きは確かです。
ということで「ノー・タイム・トゥ・ダイ」をご覧になる前に見て頂くとかなり面白いかと。少なくともクレイグボンドのファンは必見です。
なお最後に、ジュディ・デンチの「M」は大好きでしたが、レイフ・ファインズはスパイマスターのイメージにピッタリであります。