印象深いところから書いてしまったので、今回は冷静に。
ソウルノートA-0の内部、蓋をあけてみられる限りです。
これはいわばデータです。A-0を選ぶ場合のご参考。
もし本当に「万人にとってのコスパ」があるなら、それは「良い設計・造り」でしょう。プリメインアンプをお選びの際なにかのご参考になれば。
背面(表側)と内部全体画像・内部は音の印象通りのシンプルさ
【ご注意】
本記事では執筆者の自己責任においてアンプカバーを開け、内部を確認しております。
一般的には危険であり(感電の可能性)、かつ故障を招いたり製品保証を受けられなくなる
可能性大のため、同様の行為はお勧め致しません。
全面、そして背面の画像。この端子配列を背後から見ていきたいと思います。
入力信号の流れを矢印で補足しながら各部と部品の状態です。回路がわかる方ならばより興味深いポイントもあろうかと思います。
内部全体にいえることですが、わかりやすくシンプルです。
回路にうといアタシすら音楽信号の流れがイメージできるほど、音とも関連があります。
そして他のシリーズ、A-1・D-1N・E-1・C-1(2022年9月に惜しくも生産終了)とシャーシを共用していることは実に興味深い。
A-0の天板カバー・重さは1,510g・プリメインアンプとして標準
カバーをあけたついでに重さを測定。
鋼板で実測1,510gでありました。
裏面に防振ゴム等の対策はしていない、むしろ空冷孔の多さが印象的です。
エアフローはかなりあります。
Pioneer A-09は天板ひとつとっても違う。
アルミの押し出し材と樹脂のメッシュ部を組み合わせています、48本のネジで止める。
こういうところA-0は完全なエントリーモデルです。重さで防振するような要素がない。
別途申し上げますが、この放熱口に手を当ててもほとんど熱を感じません。
カバーを外した内部全体はこのようなレイアウト。信号の流れをグリーンで追記しております(クリックで拡大画像)。
背面から入力された信号は、一旦前面パネルへ送られ、ボリューム背面基板に、
そこからメインのパワーアンプエリアに入ります。
この間、微弱なコンディションの信号は前回申し上げた空中配線で送られています。
プリアンプ出力はメインのパワーアンプエリアから引き出される形で背面のプリアンプ基板に送られます。
電源トランスや恐らくはアースライン周り(画像からは不明)を慎重に避けていると思われます。
A-0はバランス/アンバランスどちらが「高音質の」入力か
リアパネルはご紹介のとおり。
表側からみた端子が裏でどうなっているか。
バランス端子はそのままスピーカーまでバランスアンプとなるのかが誰にもわからない
バランス入力とアンバランス入力、どちらが高音質か。
実は誰にもわからない。
A-0はバランス端子がついております。
面白いものでこれがそのままスピーカー出力までバランス回路になっているのかどうかがよくわからない。
スピーカー出力がどうやらアンバランスらしい雰囲気もある(あくまで推測です)、プリアウトはアンバランスですし。
エンジニア氏はどちらでも同じと思っているかもしれません、そもそもプラグの構成も違う。
(キャノンプラグはオーディオとしてはあまり感心しない)
つまり一概に比較できない。
長岡鉄男スピーカーマトリクスは不可のメーカー回答
なおスピーカー出力がバランスかアンバランスかについて。
一部の方にとって大変気になる確認事項です。
長岡鉄男氏が実践していたスピーカーマトリクス接続についてはA-0では「やらないでほしい」というメーカーコメントを得ています。
あれとても面白いのですが、残念。
このときアンプはアンバランスかバランスかを確認したのですが、メーカー回答はそちらには触れませんでした。とにかくやめてくれとのこと。
なお設計者は昨今流行りのありきたりなバランス接続にさほどこだわっていません。
ソウルノートの本質はそことは違うということらしい。
プリアンプ基板にもっとも近い入力端子はバランス入力
入力側の裏面がこちら。端子そのものは樹脂ベースに幾つかの端子を持たせたものでごく普通です。
なおシャーシに直接締め込むタイプはいまや超高級機種と一部の真空管アンプしかなくなりました。
プリアンプに近い(損失が少ない)最短はバランス端子「1番」?
上段がRCA入力
下段がバランス入力(赤枠で囲った部分)
つまりアンバランス入力は接続コネクターを介していったんバランス端子基板に入り、その上でプリアンプに送られます。
損失だけでいえばバランス端子のほうが接点が少ないことになる。つまり配置だけで推測する限り
バランス端子のほうが接点が少なく
プリアンプ基板に近く
高音質といえます。
バランス入力かアンバランスかの方式論よりも案外こちらのほうが効くかもしれません。
そして回路配線の距離的によりプリアンプに近いものは
- バランス端子「1番」(画像赤枠部分)
- バランス端子「2番」
- アンバランス端子「4番」
- アンバランス端子「3番」
の順で「バランス端子・1番」がプリアンプに一番近い配列のように思われます。
仕様書がないため推測のほかないという前提で、ご覧の皆様におかれても画像からご想像いただければ。
スピーカー端子は極太ケーブルも対応可能
その隣がスピーカー端子。中華アンプを中心に日本メーカー製でもよく見る「透明カバーでWBTちっくな」SPターミナルです。
スチールシャーシを挟んで取り付けてあります、かなり強固です。
バナナプラグ・Yラグは使用できる形が限られる・裸線のほうが高音質
遊び用に8.0sqのスピーカーケーブルを持っていますが入った。
かつ導体を締め上げられる設計です。
挿入穴の幅は18.3×4.5(mm)、Yラグは形状次第です。
なお一応バナナプラグ使用の穴はあります。樹脂部分でφ4.2、金属部分はもっと狭いが計測不可。
「+」「ー」端子が接近していることもあり、プラグの外形や挿入部太さで使えるものは限定されます。
基本的にバナナプラグやYラグは接点が増えるため損失損になります。
ですから特別な事情がない限り裸線のほうがいいと思います、このスピーカー端子は良品ですから。
ご注意・スピーカーターミナルの締めすぎについて
なおここでご注意を、スピーカーターミナルネジの締めすぎには気をつけてください。
このターミナルは鉄製シャーシに金属ボルトで締め込んである。
手応えがあるので勢い余って締めすぎる。壊す人がいます、結構多いです。
というか20年前アタシ自身やった。「加減というものを知らない」という言葉を読むたび恥ずかしい。
ケーブルを入れる四角い穴は樹脂です、これが割れるまで締める人がいるので。
ヤフオクをご覧いただければおわかりかと。
アンプの端子クリーニングは何がいいのか・無水アルコールのみ
なおA-0はエントリーモデルの位置付けですから、以下は補足として。
これら端子のメンテナンス、というよりクリーニングはどうすればいいでしょう。
クリーニングは無水アルコールで半年に1回程度でいい
三流以下ながらメーカーに20年いた経験からはっきり申し上げます。
『無水アルコール』一択です
それ以外は必ず壊れると思ってください。
接点復活剤・音がよくなるなんとか、一切ダメです。そもそも強力に溶かしたりしない限り接点が「復活する」なんてケミカルはないのです。
なお下取りに出すとき、ショップは「いわゆる接点復活剤」使用の形跡を見ます。使った形跡があれば査定を下げます。
それだけ悪影響がある。
道具は
- 綿棒
- 端子クリーニングキット(リンク先:Amazon商品ページ)
- キムワイプ(防塵ペーパー)
- 無水アルコール
この3点です、頻度は半年に1回もやれば充分です。
無水アルコールは金属を腐食させないし、これで落ちないものは汚れではありません。
なお無水アルコールはある程度時間が経つと水分を帯びます、最小金額単位(1,000円前後、それでも多いですが)半年経ったら薄めて手の除菌スプレーで使ってください。
CRC556や各種の接点復活剤は使ってはいけない・ヤフオクでアンプを買わない理由
以下はクリーニングで絶対使ってはいけないものです。
- KURE『CRC556』
:プラスチックのような樹脂部分を侵し、割れます。特性としてそうなっています。 - 各種の接点復活剤・接点洗浄剤
:CRC556と同じく樹脂を侵すほか、金属表面についても一時的に改善したあと酸化を招くなどかえって悪くなる場合が多い。 - 「オーディオ専用」接点クリーニング剤
:あの通りの効能があるなら半導体の検査装置に使います。むろん誰も使っていません。
なお音が変化はしますが良くなることはないです。
上記は「一度は試してみたくなるもの」リストでもあります。個人的にヤフオクでアンプを買わない理由です。
ソウルノートでもわかっていて、注意喚起しています。おそらくですが修理依頼品の相当数で使われているからではないかと察します。
「CAIG(ケイグ)」は楽器用・オーディオ向きではない
ギリギリやむをえない事情で「CAIG(ケイグ)」D5S-6(リンク先:Amazon)を使う人もおられます。
個人的にも持っていますが15年前ぐらいに買ったものなので、もう使えないでしょう。
「CAIG(ケイグ)」は樹脂を侵さない接点復活剤として楽器系では定評があります。
しかしオーディオショップでは中古の相当ひどいものに注意深く、樹脂にかからないように、僅かにつかうだけ。
ソウルノートで出番があるとも思えません。
A-0は「エントリークラスのプリメインアンプ」(そんな可愛げはどこにもありませんが)なので申し上げました。
製造業で食べてきたものとして、無水アルコールしかないと申し上げます。
ほかのもので拭いたりしたら、怒られるどころでは済まず、責任問題になります。
全数不良ですから。
接点復活剤は全ての樹脂や金属・使用環境を保証するものではない、強力な薬剤なのです。
なおオーディオ用のケミカル商品はクルマのそれと同じで「(販売している)メーカーが大丈夫といっている」という方が一定数おられます。
上記はその方向けの記事ではありません。
ボリューム・セレクター部の基板
ボリューム部分を裏面から。入力端子からの信号はボリューム裏側にある基板に一旦入ります。
ここからメインアンプ基板に至るまで空中配線で接続されることはA-0のユニークな点です。
赤い矢印がボリューム部分です。まあしかし、手間のかかった配線。
廉価な4連ボリュームだと思いますが、その前後の配線加工はエクセレントです。
セレクター部分はこちら、背面に基板が設けられています。
プリアウト端子はアンバランス専用
プリアンプ出力はこちら、完全なアンバランス出力です。
入力からここまでの間に、バランス/アンバランス変換のアンプが入っていると思われます(正確な場所は外観からはわからない)。
このレイアウトでわかるとおり、
- 電源トランス
- メインアンプ基板
というノイズ、電磁波の多い部分を避けるようにぐるりと半周して入力信号はメインアンプに達しております。
プリアウト信号も空中配線のおかげでプリント基板に触れることなく
文字通り「空中を走って」リアパネルに戻ります。
単体パワーアンプとして魅力あり・プリアンプは簡易的な構成、ただ電源は大きくノイズ、電磁波漏洩への対策は高度
画像のとおり入力端子からプリアウト端子までぐるりと空中配線でアンプ内を一周です。
この構成で見る限り(というか当然そうでしょうが)メインアンプに比べればプリアンプの構成はおそらく小規模であり、A-0の本領はパワーアンプにあると思われます。
簡易的に試してみた限りでは、音の点でもパワーアンプとしての使用に魅力ありと感じました。
ただ廉価なプリアンプとしては異例の大電源であり、しかも上記のとおりの配線です。
ノイズや電磁波の漏洩に対し慎重に対策された構成ではあります。
プリアンプとしての活用是非はもう少し確認したいと思っております。
電源トランスの大きさと取り付け・フローティング方法は二重シャーシ
製造は長野県の産業機器向メーカー
ノギスが入らないのでスケールとともに撮影、危険なので絶対やらないでください。
慣れているのでホイホイやりましたが、金属のスケール持ち出すとか正気の沙汰ではありません。
製造は長野県に本社のあるトランスメーカーでした。
産業用向けが主体の地味なメーカーです。
トランスのほか制御盤や配電盤を手掛けており、A-0の製造についてもいろいろ想像させる堅実なメーカーでありました。
電源トランス直結脚はサブシャーシについているよう
特徴的な電源トランス直結の足はどうなっているんだろうとかねて興味でしたが、
どうやら二重シャーシにして、シャーシに重ねたトランス取り付けベースに脚を取り付けているようです。
これなら多少脚に衝撃があってもまずは問題ないでしょう。
しかし凝ったつくりです。NECとAuthentic(オーセンティック)ではA-10はバラしづらい構造だったので25年以上経ってやっとお目にかかれた。
価格も、なにより時代が違いますから当然ですが、
Pioneer A-09とは考え方が違いすぎます。
今回「修理のできないアンプ」を抱えて、A-0のこの中身はとても興味深い。