システム入れ替えに伴い、Khadas Tone2 ProをDACにしてみることに。
USB DAC、というよりポータブルアンプに変えたという訳です、Theta DS pro Primeから変更。
一度はやってみたかった。
この手の製品を作るコストは仕事柄存じておりまして、そのスペックは看板だけでないからです。
SOULNOTEほか新システムに組み入れましたが、なかなか。
Bowers and wilkins P9 signature専用ではもったいない、スピーカーを駆動する力があります。
安い理由も。
これはサウンドカードをベースにオーディオ仕様にしております。
- ざっくり音質・緻密だが音楽性皆無、そして(それゆえ)ピュアオーディオ向き
- ポタアンというよりサウンドカードのUSB-DAC・PCのオーディオインターフェイスがローコスト高音質の理由
- 完全なハイレゾ・XMOS、ES9038Q2M内蔵・コーデックはPCM・DSDネイティブ・MQAに完全対応
- 嘘のような低価格は「Raspberry Pi周辺機器として生産」ゆえ・コスパという言葉が虚しくきこえる超低コスト
- ソフトウェアはデジタルオーディオの「性能」・アップデートはUSB-DACやポタアン選びの第一条件
- デジタルオーディオの「ノイズ」「音切れ」とRoon(ルーン)がサブスクリプションの理由
- 比較試聴の環境・ソウルノートA-0とAura VA-50、Creek4240(オーバーホール済み)
ざっくり音質・緻密だが音楽性皆無、そして(それゆえ)ピュアオーディオ向き
ESS社のES9038Q2M
高品位のしかもRCA端子を装備
頑丈なアルミシャーシ
その音質は、ピュアオーディオ向きと思います。
電車の中より、むしろ家やカフェでじっくり聴くヘッドホンアンプとして実力ありです。
ポタアン、というよりポータブルDACにはかねて興味が。
明らかにハイスペック、しかもソフトウェア面でのアップデートを継続している。
ストリーミング再生・CD・音楽ファイル再生でかなりのアップグレード・ただし要エージング、電源も大きくしたい
しかし先にネガティブポイントを申し上げます。
要エージングかつ要ヒートアップ
レビューを分けている理由のようです。
要確認ながら、電源も大きいほうがいいようです。
つまり電車のなかで30分聴く場合、多分Khadasが暖まってこれからというところで終わりになっている可能性大。
しかもコンパクトなのに携帯性はさしてよろしくない。
なにより音に華がない、はっきりいって音楽性なるもの皆無です。
ただしたいへんに緻密(ちみつ)であります。
ひたすら高精度にD/A変換で勝負のDACアンプであり、モバイルよりかえってピュアオーディオに向くと踏んだ。
- 音楽配信サービス
- 高音質リッピングファイル再生
- CD再生(同軸デジタルアウト)
値段を考えてもこれらのソースからなかなかの音質を取り出せています。
概要ですから簡単に、少なくとも3万円の音ではないことだけ。
成り立ちがサウンドカードという理由からです。
ポタアンというよりサウンドカードのUSB-DAC・PCのオーディオインターフェイスがローコスト高音質の理由
ポータブルアンプ、あるいはモバイルUSB-DACのカテゴリーでありますが、内容はいわゆるポタアンと少し違う。
中にあるのはサウンドカードそのもの
つまりPCのオーディオインターフェイスです、これでコストと音質を上手く解決しています。
ES9038Q2M搭載&独自ジッター対策のサウンドカードKhadas tone1をハイエンドオーディオ仕様にカスタム
原型は「Khadas tone 1」
とても評価の高いオーディオインターフェイスで、これをモバイルオーディオ用にそっくり転用しました。
つまり数ある電気製品のなかでも最も低コストであるパソコン部品製造リソースで設計・製造されている。
後述しますが嫌になるほど買い叩かれる、オーディオとはコスト効率で軽く10倍以上違います。
控えめに申し上げてです。
その概要は、
- 最新チップ(XMOS・ES9038Q2M)によるフルスペック対応
- ジッター対策などは、徹底して特性面のみから対策
- 大電源前提
- ポータブルオーディオさえ超える低コストの製造原価
- 音楽フォーマットに合わせてファームウェアは継続更新
上記に強固なアナログ出力端子などハイエンドオーディオ的工夫を施しております。
USB-DACとして音楽性は皆無だが情報量は多い・「音が薄い」レビューの原因はヒートアップ不足
その代わりいわゆる「音楽性」という売りがありません。
ここは繰り返しますが、聴いてもなにひとつない。
レビューに「音が薄い」という評価がある理由です。
ひたすら克明に情報を出してくるだけ。
あくまで「特性」、データをどこまで高精度に変換できるかのみで勝負しております。
こういうDACは高度の音楽性をもつポータブルアンプやピュアオーディオのシステムに組み入れたとき、真価を発揮する可能性が高い。
また「要ヒートアップ」と書きましたが、ヘッドホンをつないですぐの音出しは明らかに厚みがありません。
上記のレビュー理由には電源を入れてすぐ聴いているところがあると思われます。
ES9038Q2M自体が省電力ではない、発熱が実感できるあたりからいい感じになるチップです。
たとえばJBLのSA750はDACとしていいようですが、これは「電力をケチると鳴らない」というESSの定石通り。
流しで聴けないデバイスのようです。
音楽配信でハイレゾ、DSDの時代に音作りは不要・ハイエンドオーディオDACは特性が良ければそれでいい
おそらくKhadas Technologyに音を作るスキルはない、概念もよくわからないんじゃないかと思います。
その代わり変換精度は突き詰める、データで見えるからです。
クロックの重要性もジッター対策も心得ている、このあたりが今のハイエンドなのです。
現在のように音楽配信でハイレゾやDSDが一般的になり、しかもDACチップの性能がとてつもなく上がっている時代はそれでいい場合があります。
変に音を作られるより、特性を磨き上げてくれたほうがいい。
完全なハイレゾ・XMOS、ES9038Q2M内蔵・コーデックはPCM・DSDネイティブ・MQAに完全対応
設計と部品が最先端であることを現しているのが対応フォーマットです、ほとんど全てに対応。
USB-Cの入力ですからハイサンプリング・ハイレゾ・DSDは得意です。
- DACチップ:ESS社 ES9038Q2M
- USBプロセサ:XMOS XU216
- PCM:
(USB)768KHz 32bit
(SPDIF)192KHz 24bit ※同軸デジタル部分 - DSD:512MHz 1bit(ネイティブ)
- 対応コーデック: APE、FLAC、OGG、WAV、ACC、ALAC、MP3、WMA
ご覧のとおり、無いものがない。
MQAフルデコード・バランス出力付きとなんでもありのヘッドホンアンプ
加えて
- MQAフルデコード
- ヘッドホン・RCA(要専用アダプターケーブル)で完全バランス出力
- オペアンプはOPA1612
- Mac・WindowsともにパソコンでUSB接続すればサウンドデバイスとして認識
まったく最新、なお「最新」の意味は単に最新フォーマットという意味ではありません。
ピュアオーディオでは難しい最新フォーマットへの対応が強み。後述です。
羅列しましたが、上記をカバーしつつアルミシャーシにがっちり取り付けた本格的なアナログ出力(RCA)付きは貴重であります。
サウンドカードのジッター対策で知名度・可聴帯域でほぼゼロに
なおKhadas社はジッター対策について、独自技術で可聴帯域内でほぼゼロを実現したとして知名度を得ました。
Raspberry Piなどがそうですが、自作PCユーザーは測定してきますから誤魔化しようがない。
ノイズ対策、歪みともに特性は一級のメーカーです。
嘘のような低価格は「Raspberry Pi周辺機器として生産」ゆえ・コスパという言葉が虚しくきこえる超低コスト
「そんな性能と音のものが3万円台などありえない、スペックだけだろう」
と思われたかたはある意味正しい。
サウンドカードを転用してこそのコストです。
だから安い、詳しくみるにつけ上手い企画だと思います。
Khadas Tone2 Proの値段の理由です。つまりTone2 Proをオーディオメーカーが作ったら30万円でも作れないのです。
Khadasはシングルボードコンピュータメーカー・パソコンの製造原価は桁違いに安い
サウンドカードとはパソコンの音声出力部分のこと。
しかも本機はRaspberry Pi(ラズベリー パイ・通称「ラズパイ」)などシングルボードコンピュータ向けサウンドカードをオーディオ用にリプロダクトした。
パソコン製造関連は膨大な生産数です、原価は恐らくご想像よりもかなり低い。
価格競争が激しすぎて部品メーカーがやりたがらなくなった分野です。
ポータブルオーディオと比べてすら圧倒的な生産量。
ピュアオーディオに至っては誤差の範囲にもならない数。
MQAのライセンス料を払ってなおES9038Q2Mが載る理由
パソコン製造に勝るコストパフォーマンスのオーディオ関連機器は世上皆無です。
原価は数十倍倍違うと思って頂いて間違いない。
これははっきりしております。
中国生産やポータブルオーディオ向けというだけでここまで安くなりません。
なお「MQA」音質については毀誉褒貶(きよほうへん)さまざまながら、話題のわりにあまり普及しないのは、音よりライセンス料を支払う必要があるからです。
Khadas Tone2 Proは全部入っています、払ってなお安い。
USBサウンドカードは音が悪い・だからパソコンの外に引きずり出した
しかしこれをそのままパソコンに積むと音は悪くなります。Raspberry Piはピュアオーディオの本流ではありません。
しかしノイズだらけのPCから出せば、ハイスペックが活きてきます。
そして要所をオーディオ用パーツと交換する。
この筐体や端子部分の作り込みです、サウンドカードをオーディオに転用したKhadas Tone2 Proの企画のうまさです。
コスパを気にされる皆様へ・ピュアオーディオで同じ企画なら価格の桁が1個増えます
それをサウンドカードの2倍以上の販売価格ですからKhadas Technologyにとっては御の字です。
値上げ分全部利益ですから。おそらく同社の製品中最も利益率が高いのではないでしょうか。
なお仮にKhadas tone2 proと同じ仕様をピュアオーディオ専門で企画したらどうなるか。
価格は確実に桁1個増えます、つまり30万円以上になるということです。
そもそも見積に応じるベンダーすらごくわずかでしょう。
アタシならどうか、見積もれません。会社で上司からOKが出ない。
ならパソコン周辺機器をどんどん流用すればいいじゃないか、というのは早計でES9038Q2Mの調達ひとつとっても難しい。
Khadas Technologyはなかなかに企画力のある注目していいメーカーだと思います。
ソフトウェアはデジタルオーディオの「性能」・アップデートはUSB-DACやポタアン選びの第一条件
先に結論を申せば、頻繁にソフトウェアアップデートが行われていないUSB-DACやポータブルアンプ、あるいはデジタルプレーヤーは避けるべきです。
そしてサウンドカード由来のメリットとして重要なことですが、Khadas Tone2 Proはファームウェアのアップデートやバグの対応が継続して行われています。
よく言われることにデジタルプレーヤー選びの条件として、高音質DACチップだったり高剛性な筐体だったり、高音質パーツだったり、ドライブメカの良さと言われます。
今や良さの一部にすぎません。
デジタルで最も重要な高音質技術は、ソフトウェア(アプリ)の開発力です。
Khadas Tone2 Proはソフトのアップデートで高音質化していく
触れられることほぼ皆無ですが、ピュアオーディオにおいてこんにち第一に「性能」「音質」もっといえば品質というべき部分です。
極論ではなく「アルミ削り出し」や「超高級オーディオパーツ」を超えた意味があります。
発売直後はTone2 ProのPCMの対応上限は384k / 32bit
ファームウェアのアップデートで768khz/32bitへアップグレードしました。
このポータブルアンプだけでなく、ほぼ全てのデジタルオーディオは内部ソフトウェアのアップデートで高音質化させるのです。
実はハードウェア自体はすでにハイクラスへ対応するものが入っている。
かなりのデジタルオーディオ機器がそうです。
最初から対応していないのは再生するフォーマットが決まっていないから。
そしてハイレゾや空間オーディオで分かるとおりどんどん新仕様が出てくる。
ディスクリート(1チップではなく、複数の専用ICで作り込む仕様)は長くハイエンドオーディオの定番手法でしたが、デジタルでは作りこんでしまうから後から変更は難しい。
ファームウェアアップデートは音楽配信とハイレゾにおける決定的メリット
前述のとおりKhadas社に「音を演出するスキル」はたぶんない。
しかしファームウェア(内蔵ソフト)のアップデートは念入りというより当然必須の業務です。
怠ればPCユーザーから即座に見放され潰れるからです。
これがポータブルDACの中でもKhadas Tone2 Proを選ぶ最大の理由です。
いくら高音質設計でもフォーマット通りに動作しないのでは意味がない。
デジタルオーディオでは、ハードウェアメーカーにソフト開発能力があるかどうかは決定的です。
端的に申さば、高性能DACチップや高剛性シャーシ・高音質パーツがあろうが、ソフトが対応していなければそもそも音が出ません。
良くてダウングレードした音が出れば幸運、それがプチプチノイズや音切れです。
デジタルオーディオの「ノイズ」「音切れ」とRoon(ルーン)がサブスクリプションの理由
ハイエンドのピュアオーディオブランドで、ネットワークプレーヤーが少ない理由です。
ピュアオーディオメーカーはほとんどがソフトウェアを苦手としています。ハイレゾやストリーミング音楽再生において老舗オーディオブランドの歯切れが悪い理由です。
ピュアーディオもモバイルオーディオもソフト(アプリ・ファームウェア)アップデートの資金がない
そしてソフトウェアやアプリ開発にはちょっとしたものでも数百万を要します。
そしてピュアオーディオもモバイルオーディオもおおかたはソフトのアップデート資金をもっていません。
Roonが定額制サービスの理由であります。
デジタルオーディオにはソフトウェアを継続アップデートする資金が不可欠だから。売り切りのビジネスモデルが通用しない。
ハイエンドのデジタルオーディオが極めて高価である理由のひとつです。
しかし売り切りではアップデートの開発費はしょせん知れたもの。
デジタルオーディオデバイスの「プチプチノイズ」や「音切れ」はソフト(ファームウェア)の不具合がほとんど
Khadas Tone2 Proをおすすめするのは、単に安い割に音がいいという理由ではありません。
サウンドカードならば膨大な販売数をもとにどんどんアップデートできる。
ソフトの知識も豊富、というかそれで食べております。
ひるがえって売ってはみたがアップデートする費用がない、そもそもソフトウェアやアプリの技術が全くないオーディオメーカーは多い(外注します)。
だからバグ放置は珍しくありません。
プチプチノイズや音切れに怒るレビューの多さを見ていただければ、いかに多いかがお分かり頂けるかと。
内蔵ソフトがアップデートされないデジタルオーディオは故障と同じ
デジタルプレーヤーでノイズやおかしな音がする原因の多くがここにあります。
ハードウェアの不良ではなくデータ側の変化に内蔵ソフトが追いつかないことが大部分です。
ファームウェアがアップデートされないデジタルオーディオコンポーネントは、
ポータブルであれピュアオーディオであれ、故障したハードウェアと申し上げるしかない。
「アルミ削り出し」や「超高級パーツ」を超えた意味があると述べた理由です。
長期間アップデートされないスマートフォンのアプリを連想していただいてほぼ正確です。
厄介なことに配信元のAppleやAmazon、もっといえばiOSやAndroid、Windowsでわずかな変更があるだけで対応不可能になります。
khadas Tone2 Proはアップデート実績多数のDAC・パソコン関連でなければ無理な価格とサービス
いっぽうTone2 Proはもう数度のアップデートを重ねています。
開発費をひねり出せるサウンドカードだからやれる話で
原資が限られたポータブルオーディオやピュアオーディオでは、無理とはいいませんが相当難しい。
ここまで申し上げたから初めて言えるのですが
パソコン部品製造に関わった人でオーディオ好きがいたら、
DACが欲しい場合Khadas Tone2 Proを候補から外すということは多分ないです。
この価格がいかに安いか身をもって知り尽くしているから。
また、電子部品の商売を知っていればアップデートの費用なんてひねり出すのは至難とわかっているから。
飛び抜けて高額のDACでない限り、Khadasのほうが本質的に濃いと知っている。
音楽とパソコンのオーディオインターフェィスとは奇妙な取り合わせながら、デジタル中心の昨今は認識が変わる好例だと思います。
比較試聴の環境・ソウルノートA-0とAura VA-50、Creek4240(オーバーホール済み)
なお上記の試聴システムですが、Pionner A-09故障にともない今回はアンプに注力。新規とオーバーホール両方です。
- SOULNOTE(ソウルノート) A-0(新規)
- Aura Design VA-50(メンテナンス)
- Creek 4240(メンテナンス)
アンプが変わると聴こえの変わるDACだと知れました。
つまり色付けはないわけでチープながら予算内では悪くないようです。
ささやかな初ソウルノートと共に、しばらく腰をすえるつもりで気に入った機種から正規メンテナンス可能なものをオーバーホールしていただきました。
古いアンプはメンテナンスせずに試聴に使えない、A-09についてあまり書かなかった理由です。
Khadas Tone2 Proの詳細はヘッドホンも含めておって詳しく。
なお予想以上に音の水準が高く、楽しい妄想をし始めております。今まで単体のDACは幾つか使いましたが、明らかに優秀。
しかも使いこなしのアイデアを思いつく面白いデバイスです。