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「ハイパワーな10W」というプロの仕事・SOULNOTE A-0

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SOULNOTE A-0SOULNOTE A-0単体の音について。まずは音のよいプリメインアンプと申し上げます。
その魅力の大なるは

出力です、10W+10W

奇をてらっているのではございません。
これに気づいた瞬間、他機種が見えなくなった話です。

「音が伸びる」 10万円台プリメインアンプにして小出力のはずだが

ソウルノートA-0プリメインアンプとTheata DS pro basic

Pioneer A-09の故障がきっかけでささやかながらオーディオシステムの入れ替えを致しました。
手持ち機材の修理とあわせて新規のコンポーネントです。

かねて気になったSOULNOTE、それでA-0であります。A-1も候補でしたが毎度よろしく試聴はしなかった、後述の理由がございます。

駆動力は10万円プリメインアンプの水準をこえるものではない・なのに音が伸びる

先に音のことを。

駆動力だけでいえば明らかにプリメインアンプ、それも10万円クラスを大きく超える訳でもない。

念の為、今の10万円のプリメインアンプは一頃とはかなり違います。
ワイドレンジでSNもいい、駆動力もある。
但しハイエンドのプリメイン、いわんやセパレートアンプのゆとりはありません。

ないはずなのですが、音が伸びる。たったの10Wです。

力まかせと違うしなやかさ・ダイナミックレンジ表現がうまい

馬力で押し出すのとは違う、さえぎるものなく音が飛び出すとでもいうのか。

力まかせではないのでしなやかです、柔かいとも違う。
弱音を力強くはっきり表現する。

このA-0だけにしかない、不思議な出かたです。

スペックを見ないまま聴いて「出力が小さいアンプだな」と感じる方はいないと言い切れる。
どころか結構パワーあるなと思うはずです。

おかしな言い方なのですが、強弱表現つまりダイナミックレンジが広く感じるためです。
大パワーでゆとりがあっても音が伸びないアンプは結構ありますから、これはめずらしいでしょう。

その他の特徴として

スピーカーとの相性は厳しくないが個性はよく出す

セッティングによる音の変化は大きいが、音のバランスは変わらない

主観になりがちですから音の感じはこのへんで。
無帰還回路や独特の筐体構成など個性的ななりたちですが、惹かれたのは基本の出力です。

大容量(250VA)の電源で出力たった10Wにひかれた

先に申し上げたとおりこのアンプは出力が低い、不安に思うご意見も多い。
真空管ですらこれを超えるものがありますから無理もない。

結論からいえば、全く問題ありません。

トランジスタの良質な特性だけを使ったパワーとしなやかさ

どころか強烈な個性です。

購入前にメーカーに確認したところ電源トランスの容量は250VA。
そこからわずか「出力10W」
ここでほぼ決まりました、設計者が何を狙っているか分かり易い。
試聴しなかった理由です。

良質なトランジスタを
ゆとりのある電源で
出力を抑え(10W)特性のいい部分のみ使う

それが上記の音の伸びとSNの良さです。ダイナミックレンジは広く力もあるように感じますが、それ以上に良質な部分のみ使ったしなやかさというかなめらかさです。

警察に通報される騒音レベルは出せる・小音量専用ではない

念のため。
出力を抑えて良質な音を、と言いましたが、警察がくるぐらいの大音量は出せます。

ごく少ない例外を除き、「大音量派」の個人が使うパワーがある。

10畳前後サイズの部屋で大きめ音量はまったく問題ない

JBLホーンスピーカー・control12SR・内蔵ユニット・ホーン部・ウーファー部

迷惑防止条例か軽犯罪法かは存じませんが、確実に来る。

このモデル向きでないとされる大音量とは、

完全に防音され吸音もたっぷり効かせた
20畳以上の大きな部屋で
等身大のミュージシャンやオーケストラを再現することで

それはさすがに無理です。

しかし10畳前後の部屋では何の問題もありません。

アンプの保護回路が働く前に、ご近所から必ず怒られます。

なお、しなやかなめらかと続けましたが
このアンプは暴力的に鳴らそうと思えばかなり荒々しい音色を再現します。

そのせいかあらずか、JBLを鳴らす時間が増えてきたことを併せて申し上げます。

(ご参考)家庭オーディオの「大音量」「騒音」とは・dB(デシベル)と出力(W・ワット)でわかりやすく

ところで普通の家庭で音量が「大きい・小さい」とはどの程度の大きさでしょうか。

かなり大昔に客観的なデータが採られています。

「0.05W〜0.1W」通常音量が必要なアンプの出力

先に結論を

おおよそ0.05W〜0.1W前後の出力

これが家庭で音楽を聴くときに音量に必要なアンプの出力です。
音圧として86dB、これは「パチンコ店内」「間近で聞く救急車のサイレン」よりもう少し大きめの音量であります。

一般的には音楽を聴く時、それよりも小さめの音で聞くことが多いのではと思います。
100Wとかかけ離れていることがお分かりと思います。

通常音量と最大音量を計測した「季刊ステレオサウンド」

これは季刊「Stereosound(ステレオサウンド)」誌の実績です。
同誌54号において大小さまざまなスピーカーを用いた音質評価とともに

通常音量(紙面では平均音量と表記)と最大音量時のアンプ出力を計測しておりました。記憶に間違いがなければ

  • 試聴室の広さは12畳の洋室
  • 吸音多めのデッドめ環境

での数値です、お手元にバックナンバーがおありの方はご覧をいただければ。
P191以降の特集となります。

ビクター「SX-7Ⅱ」、JBL「4343」など今でもイメージしやすい機種も・A-0のパワーが必要十分の理由

54号は1980年春号であります、今や古いデータでしょうか。

ご参考までに平均音量(上記86dBのこと)と最大音量(112dB)について、現代でも近い条件で音を聴くことのできる機種データを引用すると

ビクター『SX-7Ⅱ』は平均音量 0.1W /最大音量時 38.2W

JBL『4343BWX』は平均音量 0.04W /最大音量時 16.6W

デッドめの12畳という広さと併せ、いまでも参考となるところ大と思います。

なおこの最大音量116dBとはジェットエンジンの音を間近に聴く音量(120dB)に近く、オーディオの大音量とは次元の違うもの
家庭で再現されない音量です。

それでさえ16.6Wから38.2W。

ハイパワーアンプはオーディオにおける高貴なる無駄ですが、少なくともソウルノートA-0の10Wが「ハタ迷惑な大音量」には何の不足もないことはご理解いただけるかと。
むしろ出力を10Wに限定したことにより、

0.05W〜0.1Wつまり実用領域でのクオリティは高まっている

ことのほうがオーディオとして重要ではないでしょうか。

AB級プリメインアンプで低出力/大容量電源は珍しい

以下試聴しなかった理由の続き。

「大型電源からAB級増幅でごく小出力を取り出す」

プリメインアンプではほぼ見ることのないコンセプトだからです。同価格帯と比べても意味がないだろうと。

本来100W+100Wぐらいのパワーは出せる電源トランス

ソウルノートによれば、その電源トランスは250VA
つまりA-0は

250W出せる電源から10W+10Wだけ取り出しているアンプということになります。

電源トランス容量が250VAとは、トランスメーカーの指定条件で250Wの電力が取り出せるということ。

つまりやろうと思えばこの電源トランスで出力100W+100Wぐらいのアンプは作れます。
実際そういうアンプはいくらでもあった、普通です。

出力対比の大容量電源は普及価格では採用なし・ハイエンド手法だが比較ランキングに弱い

電気製品は電源以上の仕事は出来ません、まずここで能力上限が決まる。

だからハイエンドパワーアンプは出力に対して巨大な電源を持たせようとします、実は大電源で小出力はアンプのひとつの理想です。

しかし普及価格のプリメインアンプに出力を抑えた製品例はありません。
アンプの出力値は最大のセールスポイントです。

そこに10Wなんて、アピールどころか買い手が不安がる

10W+10Wでは
ランキング・比較サイトでは弱いはず。
実際ハイエンドで評価を得る前の、つまりリリース時点からなんと数年間、A-0は低いというより評価圏外でした。今は高評価ばかりですが

繰り返しますがハイエンドオーディオでは普通です。200W+200Wぐらいの出力で2KVA(2,000VA)のトランスなど。
オーディオは必要充分を大きく超えた電源のゆとりがあるかどうかが勝負です。

マークレビンソン「ML-2L」は30Kgにして25W

A-0とは比較になりませんが一例として。
Marklevinson(マークレビンソン)の初代にして伝説的なパワーアンプ「ML-2L」

  • 出力:25W(8オーム時、つまりA-0と同じ)
  • 消費電力:400W(常時、つまりトランスは400VA以上のデカいのが入っている)
  • 重量:30Kg(モノラルアンプですから実際には2台必要で60Kg)

おすすめ・比較サイトの基準は参考にはなるものの、ごく表面的ということはお伝えしたい。

「コスパ」「おすすめ」基準ではマークレビンソンの名機に高評価はつかない。
実際には「ML-2L」極上美品なんて幾らするかわかりませんから。しかも売りに出されたら数分で売約済みです。

マークレビンソンユーザーが一度は手にしたいと思っている本物の名機です。

プリメインアンプで出力10Wは度胸と自信ゆえのコンセプト

アナログアンプとポタアンDACの組み合わせ・soulnote a-0-aura va-50-creek4240-cec CDプレーヤー002

アンプの出力を実用レベルに設定し相対的に電源を大きくとる

A-0は出力を実用領域、つまりカタログに書くような非現実的な数値でなくごく現実的なパワーに設定し、相対的に電源は大きくなった

ハイエンドならばやれます、皆何の迷いもなく褒めるし買う。
しかし普及モデルではエンジニアに技術と度胸が要るコンセプト。

拡販モデルにとって命のカタログスペックが地味になりますから、「文句なしの音を出せる」という確信が必要です。

改めますがトランジスタは東芝製の良質なもの
出力は取れない代わりに歪みなく聴かせる。

大胆にコンセプトを決めた上で細心の部品選択ができることが、SOULNOTEの設計センスのようです。

なお低インピーダンスについてメーカーは推奨していませんが、個人的に試して4オーム以下でかなりの音量でも問題なかった(念の為、メーカー推奨ではないので個人的体験として)。こちらは改めて。

Pioneer A-09の代わりにA-1を選ばなかった理由

今回予算はA-1までカバーしておりました、実は最初A-0は考えていなかった。

SOULNOTEならばまずA-1でしょう。
100万円のプリメインでもまず見ないリレー切り替え式のアッテネーターです。
なによりいい音。

A級大型プリメインアンプの後継はとにかくパワーと思いこんだ・Soulnote A-1を選べなかった理由

あれが20万円以下というのは相当で、ひとつ幸せなことですが、A-0は考えが至らなかった。

Pioneer A-09の代わりはパワー確保という先入観があったからです。
駆動力です、老朽化しても使えていた理由であります。

常時220Wのアイドリング電力を流し、そこから35Wだけ取り出していました。とりあえず鳴らないスピーカーはありませんでした。

ですから馬力で頭がいっぱいになっていた。昨年オーディオフェアを見ておりながら全くぼんやりです。
A-1もいまいちピンとこなかった、音は存じておりまして変わり者といっていいほどカテゴリーから外れたダイナミズムがあります。

しかしながらフルメンテナンスをかけたAura VA-50CREEK4240が小出力ですから余計パワーにこだわってしまった。

90年代ハイエンドプリメインは現在なら100万円台、とても予算が足りない・アキュフェーズE-800・ラックスマンL-509Xクラス

年代物ですから覚悟はしておりましたが、いざともなれば代わりなんてそうそう見つからない。

アキュフェーズのE-800とかラックスマンのL-509Xと、あるにはありますが、80万とか100万円なんて予算がない。
90年代のハイエンドプリメインアンプはとにかく物量は物凄いものがあるのです。

オンキョー倒産と同時期の故障という感傷に浸るいとまもなく、ともかく馬力がないと話にならんと。不安さえ感じておりました。

デジタルアンプも検討した・DENON・Marantz・TEAC

こういうものの後はえてしてパワーの大きいアンプがどうしても気になる。
考えました、DENONMarantzTEAC

デジタルアンプのほうがいいかもと。予算が限られておりますから確実にパワーを得られる。
ただRoydがありました、A-1とケンブリッジオーディオのCXA81が気になってはっと気づいた。

わざわざ10WとしたA-0の電源はどんなものだろうかと。

試聴せず買ったA-0・A級でも真空管アンプでもない「10W」

結果はA-09の代わり、というより全く違う堂々たる世界を魅せるものでした。

90年代「オーディオアンプの名機」の代わりは探せばある

調べた結果は100W+100Wぐらい簡単にいける電源容量。
そしてパワー半導体は意図してローパワーハイクオリティのもの、自作アンプマニアでも特に曲者が喜ぶ石です。

無帰還にするほど回路もシンプル、しかもアートワークはきれい。
基本のコンセプトといい現実の設計といい、これはプロの仕事であります。

そしてA級アンプでもなく真空管アンプでもない。設計者が相当の考えあってやったことがわかります。

90年代オーディオアンプは、その物量投入ぶりから「名機」(実際音がどうかはわからないながら)と呼ばれるものが多くあります。
探せば代わりはあると思います。

昨年の東京インターナショナルオーディオショー(TIAS)の片鱗が聴けるかもしれないという期待とともに発注しました。

1ヶ月待ち、こういう時は下手に聴きまわらないほうがいい、もう気に入ったのです。

来てからは手持ち全てと繋いでは聴きでしたが、ともかくえらく面白いものが入ったという実感です。システムの中心になる表現力があります。

ユニークそのものですが、プロの仕事です。

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