800D4とEVA破産の関連は気にしすぎかもしれない。しかし商売柄、買収や業績悪化が製品や開発に大きく影響することも見てきました。
洋の東西を問わず製造業の現場はこういう変化にことのほか弱い。
影響がない理由を見つけるほうが難しい。
関心事は今回D4が800D3からどう変わったのか、そして今後の600/700はどう変わるのかということ。
EVA破産で負った傷は確実にあるはずでどのように影響したか。800D4の完成度に直結する話と思います。
- (追記:2022年2月)Formation Suiteシリーズが信じられないことに国内発売
- B&Wの新型スピーカー販売不振がEVA破産のきっかけ
- 新型800D4シリーズ開発への悪影響は本当になかったのか
- 新たな親会社が「フランケンシュタイン」とよぶFormation「Suite」「Duo」「Bar」
- EVAは韓国LGと同じグループ企業・創業者一族が社長
- 30日でB&Wを買収、4年で破産・スピード経営の結果
- Formationシリーズの目的・B&Wブランドのスマートスピーカーで資金集め
- IT技術は伝統的オーディオメーカーの悩み
- B&WのD3シリーズは「落ち着いた環境で」作られた
- 新800D4シリーズはモデル数が多すぎ・リストラ後は特に危険
- 破産したThiel(ティール)の二の舞を心配する海外ファンも
(追記:2022年2月)Formation Suiteシリーズが信じられないことに国内発売
あえて追記であります。
なんとまあ、Formationシリーズが国内で発売になりました。3年遅れで。
新製品ではなく「古い」・ハイレゾ・ワイヤレス・5.1ch対応だが2019年そのまま
新規開発ではなく、2019年発売のハードウェアと機能そのままです。
そもそも日本でデリバリーするとは思いませんでした、驚きました。
- 独自ワイヤレスネットワーク(mesh テクノロジー・5GHz帯域)
- スピーカー間は96kHz/24bit対応で通信
- (現時点)Amazon Music HDで最大44.1kHz/16bitまで
2019年の仕様そのままです。新製品のふれこみですが事実として古い。
それだけが音質と決めるとはいいませんが、この金額で上限が96kHz/24bit対応はさすがにない。
なにより「なんとまあ」の理由は後述の事情であります。
なおネットの製品レビューにある「シリコンバレーのワイヤレステクノロジー」とは破産したEVA Automationのことです。
日本のユーザーはBowers and wilkinsに敬意を払ってきたはず
この製品について、これ以上あえて申し上げません。
後述のEVA AutomationがB&Wを買収してから破産とSound united社が買収するまでの経緯
そして、どんなメディアがこのFormationシリーズをどのようにレビューしているか。
この2点に注目されていいと思います。
今後B&Wだけでなくオーディオ全般をお選びになる上での判断材料になるからです。
ひとつだけ申し上げるとすれば、英国外でも日本のユーザーはBowers and wilkinsを支持しているし、敬意も払ってきたということ。
これはないんじゃないか、英国人の悪い癖がでたというのが正直な感想。
あの人たち、たまに居直るんですよ。
Formationを新製品として紹介するようでは、800D4シリーズについても注意深くならざるをえません。
今後の600/700シリーズを判断する上での材料ともなりましょう。
B&Wの新型スピーカー販売不振がEVA破産のきっかけ
元の親会社であるEVA Automationの破産は、Bowers&Wilkinsの新製品(ワイヤレススピーカー)の不振が直接のきっかけです。
大まかにいえば以下です。
Formationシリーズの販売不振から資金不足に
2016年にB&Wを買収したEVAは、2020年に大口の出資者であるTVP(Top Victory Investments Limited・米ファンド)から3,000万ドルの返済を迫られたが返済できなかった。
このお金は2019年に発売されたB&WのワイヤレススピーカーシステムであるFormationシリーズの販売支援のための資金として融資されていました。
しかしB&Wにして珍しいのですが、同シリーズの人気は最初から極めて低く販売不振。
それを知ったTVPが返済を迫ったところ破産したとのこと。
Via “EVA Automation Escapes Forced Bankruptcy; But Shuts Down Anyway”(Strata-gee.com・https://www.strata-gee.com/eva-automation-escapes-forced-bankruptcy-but-shuts-down-anyway/)
EVAの債務は多くがB&W名義・一説には1億ドルとも
破産したEVA Automationが作り上げたといっていいのがFormationシリーズです。
重要なのはいざ破産となった時、EVA Automationが明らかにした債務は、その多くがB&W名義となっていたことです。
簡単にいえば子会社であるB&Wが親会社であるEVAが借りた金の多くに責任があり、一説にはその金額は総額1億ドルになんなんとするらしいということ。
乱脈経営そのものでした。
カリフォルニアの裁判所でEVAが申し立てている債務の多くは実際にはBowers & Wilkins名義で保有されているそうです。
中規模メーカーが4年で100億も何に遣ったのか?本当にB&Wの負債なのか
ざっと100億円です、設備どころか工場そのものへの投資に近い。
そしてB&Wは製造委託がほとんどです。
電子部品じゃあるまいし、4年程度で中堅メーカーがそんなにキャッシュを必要とする投資があるとも思えない。
マニアのなかにはB&Wは大企業と思われている方々がいらっしゃいますが、実際は中規模。
外部委託が多く、自社設備にはあまり投資をしません。
現実にFormationシリーズも海外へ製造委託している製品です。短期間にスピーカー事業だけでそんな巨額の債務が生まれるものでしょうか。
新型800D4シリーズ開発への悪影響は本当になかったのか
今回の800D4発表で注目するのはこの点です。
開発と上記の経営混乱の期間が完全に一致している。
いいたくはありませんが、メーカーでこういうときは
- 質を落としてコストを下げる
- 人員を整理する
- 開発費用を削る
- 製品価格を上げる
このいずれかを選択するしかない、新たな出資者を見つけたとしてもこのいずれかは必ずやります。
他の手段はないです。
なにもしなければ潰れるか買収されます。
破産したEVAの債務について本当に1億ドル分もの金額がB&W名義となっているなら尚更です。
現実にEVAに買収された直後からリストラが行われ、中堅スタッフが辞めているそうです。
Via “Breakdown at B&W; Industry Buzz Reaches Fever Pitch”(Strata-gee.com・https://www.strata-gee.com/breakdown-at-bw-industry-buzz-reaches-fever-pitch/
新たな親会社が「フランケンシュタイン」とよぶFormation「Suite」「Duo」「Bar」
ところでFormationシリーズとはどんなものだったのか。
国内のメディアでもわずかに紹介され、アタシはカッコいいなと思っていました。
輸入されたら聴きたいと普通に思った。
そして現在、破産したEVA Automationの跡をついだSound United社はプレスの取材に対し、以下のとおりはばかることなく「失敗した経験」「フランケンシュタイン」とよんでおります。
Formation Suiteシリーズは海外市場では完全な不評
(ここから追記前の情報となります)
この「Formation Suiteシリーズ」、とても不思議な製品でした。
発表はしたものの
いつまでたっても後続の情報がなく、現物も日本に入ってこない。
人気のあるB&Wの新製品、しかも完全に新しいテクノロジー満載のはずが、です。
変だなあと、まあその時は忙しかったのでそのままなんとなく忘れておりました。
仕様がよくわからない新製品・EVA Automationの事業実態も不明
海外でも技術的な詳細がよくわからないワイヤレススピーカーシステムだったようです。大まかにいえば
- 2019年発売
- ホームWi-Fiとは異なる独自ネットワークを構築する
- スピーカー間を5GHz帯域で伝送
- 独自アプリケーションが設定されているが、サードパーティーサービス(有料)である「Roon」の使用を推奨
- 96kHz/24bitはRoonでのみサポートされる(らしい)
Roonは119ドル(/年)の有料サービスです。
ハイレゾやロスレスなど、システムが対応する音源の仕様も殆どわからない。
また発売当時、肝心の独自開発アプリの完成度も不明でした。
Formationシリーズについて海外でも得体が知れないとする情報はありましたが、少なくとも褒める記事は見つかりませんでした。
気になるのはEVA Automation自体、現実にどんな事業実態であったのか未だよくわからないとされること。
少なくとも「シリコンバレーのテクノロジー」とかとんでもない話です。
そしてFormationシリーズはディーラーからは完全に不評だったそうです。
前述のとおりEVA社が倒産した直接の原因は、Formationシリーズが全く売れていないことを知った出資者(TVP)が販促用として貸した金を返してくれと迫ったことから始まっています。
Sound United社は「失敗した事業」「フランケンシュタイン」と表明
B&WにはZeppelinそしてZeppelin mini、PCスピーカー向けとしてMM1という傑作があります
史上初のプレミアムワイヤレススピーカー「Zeppelin」は巨大な成功
Bluetoothと第一世代のAirplayですが、はっきり言って大名作です。アタクシは復刻してくれたら今でも買うでしょう。
海外でも極めて評価が高かった。「プレミアムなワイヤレススピーカーという未踏の分野でB&Wが成功した」とされました。
ここが重要ですがApple Storeほか著名なディーラーが文字通り売りまった。商品に信用があったのです。
Zeppelinとは正反対、経営不振の元凶に
「Zeppelin」そしてB&Wのハイエンドなブランドイメージは巨大な実績であり、EVA Automationそして出資者たちも大いに期待したでしょう。
しかしFormationシリーズは全く相手にされなかった。
似ても似つかないものだったとしか思えません。
B&Wがここまで商業的に不評であることは珍しい。
その他の好評な同社製品と開発条件を比較したとき、恐らくはEVA Automationのかかわりが製品の完成度に大きく影響したと思われます。
なお以下の取材において明言しているようにSound United社はこのFormationシリーズについて、「失敗した経験」「フランケンシュタイン」とはっきり表明しています。
このラインの落としどころはもう損切り(中止)しかないと決めたようです。
(追記:2022.6.2)以下記事中
— Formation is the reason that EVA Automation bought B&W – but, like Frankenstein, it is an experiment that has gone awry and must be dealt with.(2020/10/09)ー
と書かれた文言はその後削除されております。
ただGoogleにはキャッシュが残っており、確認は可能です。ご興味ある方は「sound united formation failed」で検索してみてください(当方で全文を掲載することはできないため)。
Via “EVA Automation Escapes Forced Bankruptcy; But Shuts Down Anyway”(Strata-gee.com・https://www.strata-gee.com/sound-united-deal-to-acquire-bowers-wilkins-closes/)
EVAは韓国LGと同じグループ企業・創業者一族が社長
現在あるに至った張本人であるEVA Automationはいわゆる「スタートアップ」です。
この分野に必要なのは資金と話題性。
破産した今、事業において具体的な「製品」「成果物」と呼べるものがほとんどないと報じられております。
海外の報道でも事業実態がよくわからないという話が多い。
ただこの会社は単独のファンドではなく巨大なファンドグループに属していました。LSグループであります。
韓国LGグループと密接な関係にある企業体であり、LG創業者一族が所有しております。
EVA社はFormation Group(韓国LSグループ)に行き着く
下からさかのぼれば、EVA Automationは『Formation Group』傘下であり、そのFormationグループはLSグループに属しております。
2016年のB&W買収も同グループが主導したとされています。
恐らくワイヤレススピーカーの製品名「Formation」とはここから命名したものかと。
LSグループは韓国LGを支配する・文字通り血縁「ファミリー企業」
このFormation Groupについて。
韓国LGと提携関係にあるLSグループの中核企業のひとつ(LG創業者の文字通り血縁一族で構成)であり資金力は世界有数です。
旧称は『Formation 8』、創業者はBrian Koo氏。彼もLG創業者の一族。
シリコンバレーの大立者、ジョーロンズデールとも協業していました。VRで有名なOculusへの投資も行なっています。
資金は潤沢のはずでした。
B&WのJoe Atkinsも、カネを返せと訴訟を起こしたTVPも最初はそう思ったはずです。
時期も世界的な低金利と過剰流動性の時代、カネあまりからファンドが投資先を血眼で探し回っていた時期、B&Wのような知名度の高いブランドは格好の投資対象だったでしょう。
EVA社CEOのGideon YuはFormationグループの主要メンバー
なおEVA Automation社CEOであるGideon Yuは大富豪です。
元FacebookのCFOでセコイアキャピタルのパートナーというすごいキャリア。
アメフトの49ersを所有してすらいる富豪でもあります。目がくらむような経歴です。
何より当時は上記Formation Groupのアドバイザーメンバーとして公式ウェブサイトに顔写真付きで載っていました(今は消されています)。
エンジニアはAppleから多数のスタッフを引き抜き、その後はSamsungの元北米マネージャー(Gregory Lee)を迎え入れるなど派手な話題に事欠きませんでした。
3,000万ドルなんてファンドにとってははした金で、EVA Automationが返済できなくなるなんて予想もしなかったはず。
しかし蓋を開ければ債務はB&W名義で1億ドルとか。不透明極まりない。
Via”‘Coming Soon’ – B&W to Launch New ‘Formation’ Wireless Receivers & System”(Strata-gee.com・https://www.strata-gee.com/coming-soon-bw-to-launch-new-formation-wireless-receivers-system/)
30日でB&Wを買収、4年で破産・スピード経営の結果
驚くべきことに2016年の買収時、EVA Automationは30日程度でB&Wの買収にこぎつけたという話もあります。
Gideon Yu氏は1億5000万ドルとも言われる買収資金を数十日で集めたなど、とんでもない早さで動いたようです。
著名なファンドでは珍しくありません、いわゆるスピード経営。
できちゃった結婚でClasseは閉鎖、挙句1億ドルの債務
一部メディアが”Shotgun Wedding(できちゃった結婚の意味)”と揶揄した2016年のこの買収のあと、2017年にはClasseの閉鎖など矢継ぎ早やに続きます。
「出来ちゃった結婚」ですが、前夫との子供は要らないということらしい。
経営判断としてまことに素晴らしい。
なおEVAが経営し始めた途端、Bowers and wilkinsではリストラが始まっています。
挙句の果てが1億ドルの債務とか。判断の素晴らしさほど結果はついてこなかったようです。
ここまで調べて、EVA AutomationからSound Unitedグループに移るまで常につきまとう違和感が納得できました。
Via”Rumors Abound of Bowers & Wilkins Future After Tech Startup Departure”(Audioholics, LLC official website・https://www.audioholics.com/news/bowers-wilkins-take-back-control-of-company)
Formationシリーズの目的・B&Wブランドのスマートスピーカーで資金集め
EVA Automationはスマートスピーカーをやるとして資金を集めていたようです、それでワイヤレスオーディオ技術。
さらにB&Wを買収した。世界有数のプレミアムオーディオメーカーによるワイヤレススピーカーシステムFormationは話題性があります。現実にTVPはお金を貸しました。
800D4やそのほかについては全く関心がなかったでしょう、繰り返しますが旧来の部門で中堅スタッフがリストラされたことは事実です。
「Alexa」「HomePod」のハイエンド版・SONOSになりたかった
しかも家のWi-Fiとは全く異なるネットワークを別に作って音楽伝送を行うシステムとのこと。
独自のワイヤレスオーディオ規格を立ち上げるという野心的なもの。
しかもスマートスピーカーというからにはAI必須。
AlexaやHomePodのようなもの、というよりもっと上。だからAppleから人を引き抜いたりしたわけです。
今だから言うわけではありませんが、ほとんど突飛なアイデアと思います。
Wi-Fiの新規格なんてQualcomやIntelクラスのやる話で、EVAなんて新興企業の手に負えるものではない。
なるほど、主要な海外ディーラーがFormation Suiteシリーズを怪しんで手を出さなかったはずです。
Classe Audio精算・マルチルームワイヤレス以外は切り捨てた
ここはアタクシ、特に倒産を(何回か)実際に体験したものとしてはっきり申し上げますが。
製造業を話題性と資金力のみで考える連中のなかには、地道に積み重ねられた実績というものが理解できないものがおります。
成否の判断は、バランスシートと利回り。
最後の帳尻は売り飛ばすか精算すればそろばんがあうと考える。ブランドの歴史なんて無視です。
EVAの傘下に入った翌年Classeは活動を停止し社員は全員解雇。Sound United社が再開させるまではB&W下でのサポート業務だけだったそうです。
なお当時問題なく売れていたClasseの業務停止は海外ディーラー筋にとっては当時全くの予想外であり、ほとんど驚愕に近い驚きをもって受け取られたそうです。
人材が流出・スマートスピーカー・マルチルームワイヤレスに関係ないものは潰す
Classeのハイエンドアンプは優れていますが、グループの事業構成にとって不要だったでしょう。
同じくハイエンド部門はスマートスピーカーにさほどの関連はないからリストラ。B&Wのバッジが使えればいい。
なぜ新製品に「Formation」なんて名前を・親会社を意識したのか
Classeという大事なものをあっさりゴミ箱に突っ込む一方で
新製品に『Formation』なんてあからさまな名前をつけ、親会社にご注進申し上げるような経営です。
B&Wの人的資産の価値は理解できなかったでしょう。
ひとつ疑問なのはEVAに対して出資者(TVP)が3000万ドルを返せと騒いだとき、Formation Groupは犬のような忠誠心を見せ続けたEVA Automationをなぜ救わなかったのだろうということです。
Formation GroupもっといえばLSグループにとっては問題にもならない金額で、資金調達自体が極めて容易な時期でした。
つまり2016年の買収から2020年までの4年間、B&Wでは誰にとっても見込みのない作業が続いていたのではないのでしょうか。
これからリリースされる800D4以降のシリーズについて、少なくとも注意深く確認するべきと思う理由であります。
IT技術は伝統的オーディオメーカーの悩み
なお伝統的なオーディオ、特にスピーカーメーカーでワイヤレスネットワークの知見に長けたメーカーは世界でもまだありません。
オーディオブランドはAI・IoTが大の苦手、「アプリ」も作れない
『ない』とするのはWi-FiやBluetoothモジュールを組み込める程度ではとても通用しないから。
制御するドライバーからアプリ、そして音声認識やAIの膨大なデータを処理できる知見がないと事業にはならない。
うっかり得体のしれないアプリ制作の外注に頼んでしまい、身動きの取れなくなっているメーカーもありそうです。
ITに弱いいっぽうで世間的な知名度やブランドとしての格が高い。
このあたりがファンドや自称起業家・クリエイターのカモにされる隙となっています。
AI搭載スマートスピーカーは血まみれレッドオーシャン
なおここでスマートスピーカーについて少々申さば、今ハードウェアで儲けている業者はいません。Alexaがいい例でAmazonとGoogleはハード単体では赤字とのこと。
Apple・Amazon・Googleですらハードは赤字かスレスレ
市場規模も巨大なかわりに超のつく「レッドオーシャン」AmazonとGoogleのあまりの格安ぶりに、AppleすらHomePodを値下げせざるをえませんでした。
ロクな利益は出ていないだろうと言われております。
元々スピーカーが苦手な会社です。
なお儲からない割に不気味なほど巨額の開発投資が必要な製品でもあります。こんな分野にBowers and Wilkinsが出ればどうなるか、一瞬で喰い殺されるでしょう。
この分野で高級とされるSONOSは自社独自技術ともAlexaベースと言われていますが、一方でGoogleと特許で争っています。
みもふたもない話・スマートスピーカーは超お買い得
みもふたもない話ですが、一応申し上げれば上記の事情からスマートスピーカーはどれも『持ってけドロボー』レベルのお買い得です。
赤字で作っているんですから。
PrimeセールのAlexaなんて特に注目すべきかと。
今回プラスの情報はこれぐらいしかありません、なんだか残念です。
実際¥6,000とか¥10,000の音ではない、いい音質です。
上記でわかる通りスマートスピーカーですら重荷なのに、独自規格のホームネットワークでやろうなんて会社はありません。
繰り返しますがEVA Automationがどれほど無謀だったことか。
ファンドという職業の方の話を聞いたり本を読んだりすると、利回りとかの話はよくご存知なんですが、話が進んでいるうちに何だか夢みたいなことを語り始める人がおられる。
そもそも投資の手法と金額さえ「正しければ」、事業も販売も予測したとおりの方向に動くとでもいうような。
地道さに欠けます。ものを買うときの人の心理とかほんとにわかっているのかなあと不安になるような話をたくさんするのです。
B&WのD3シリーズは「落ち着いた環境で」作られた
少なくとも言えるのは
- 800D3とその下位シリーズである600・700のスピーカー
- 2016年以前のモデルをベースとしたヘッドフォン(PX/PX5/PX7)
これらは幸いなことに技術とセンスの両方が完全にそろっている条件で創られたということ。
そして今、D4以降は未知数です。
800D3そして旧600、700シリーズの下取りは待つべき理由
800D3シリーズそして600、700シリーズを下取りに出すのは少し待ったほうがいい。アタシならそうします、1年ぐらいでD4は逃げませんから。
新シリーズの本当の音を見極めるには1年ぐらい時間が必要だと思います。今は絶賛しかない。
新製品が悪いといいたいのではありません、いい音です。
特に804D4はなかなか。
D3シリーズは805でしたがこちらにシフトするのかなと思わせるような。
ただ今は「新しい音」の感動が大きすぎてD3との違いを落ち着いて聴けない。
「落ち着いて作れない」・製造業は社員の士気が製品に大きく影響する
EVA automation経営の4年間リストラがありました。
またEVAの破産によってB&Wの経営がどんなに傷んだのかまったく明らかにされていません。
製造業が他業種と際立って違う点は、人員リストラや製品ラインの整理があるとモチベーションがとても下がる業種だということです。
工場に入っただけでわかるほど落ちます、「仲間が切られた」という現実に不安を感じるのです。
気持ちを代弁するならば「落ち着いて作れない」。
仕事柄申し上げますとこれは世界共通といえます、防ぎようがありません。
EVA Automation期にB&Wスタッフが辞めている事実
しかもEVA Automationの経営期間中はワイヤレススピーカー開発が最優先されました。
一定の売り上げを維持していたClasseまで潰してやろうというんですから。
ファンドが好きな「選択と集中」です。
繰り返しますが、この期間は800D4開発と完全に一致します。
かつて30日間でB&Wを買収できたその会社に、その時点で資金を出す人は誰もいなくなっていた。
4年を経て事業と将来性について疑問を持たれたことはひとつの事実です。
800D4シリーズは「アップグレード」かそれとも「傾向の違う音」か。
アタクシは新製品だとなんでも感動するタチですからD4シリーズはもちろん素敵な音と思っていますが。
ただ特に北米のユーザーのフォーラムを見るとわかりますが、Classeが閉じた時大変な不安に陥ったそうです。
新800D4シリーズはモデル数が多すぎ・リストラ後は特に危険
個人的には今B&Wのスピーカーはモデル数がちょっと多すぎるという気がしています。
これは旧D3の802あたりでも感じたことです。
B&WはD4のラインナップを整理するべき
どんな分野でも新製品を作るというのはすごくパワーが要る。
特にスピーカーともなれば。
モデル数は出来るだけ少ないほうがいい、増やすとセールスにいいように見えて長期的にはロクなことはないです。
フラグシップが7機種は多すぎる・ヘッドホン/イヤホンは逆に少ない
特にハイエンドのラインはもう少しモデルを減らして造り込みを深めて欲しい。
トップグレードが7機種は正直多すぎると思っています。
東京インターナショナルオーディオショウでは804D4の音に嬉しくなりましたが、なんといいますか805が少々影が薄くなったといいますか。こういうことが起きる。
あれを「804が良くなった」と片付けていいのか、結構考えています。
D4のモデルを増やすより、得られた成果をミドル以下の機種やハイエンドのイヤホンやヘッドホンに反映させたほうがいいのかも。
フラグシップスピーカーに対してハイエンドヘッドホンとイヤホンのモデル数が少なすぎる。
ワイヤレスとアプリは信頼のおける外注をもっと開拓して欲しい
それとワイヤレスやマルチルームはしばらくは他社に任せたほうがいいのかもしれません。
もうオーディオメーカーでは手の出ない領域になっています。
GoogleやApple、あるいはAmazonにライセンス料を払ってもそのほうがいい。
また買収されました、なんて話はもうたくさん。
またアプリやソフトは世界中に開発ベンダーがいてまさしくピンからキリまでです。
正直D4で7機種も出してるヒマがあったら、設計もバイヤーももっとアプリ関連の業者について情報を集める努力をすべきです。
Rogersみたいになったら悲惨ですから。
JBL SA750はためらいなくDirac Liveを使った
カッコがどうしても好きになれないなんてフラチなことを書きましたが(オリジナルSA600は本当にすごいので)、JBL SA750は音楽配信前提では相当に優秀なコンポーネントです。
理由はARCAMと同じというだけでなく、外注を上手く活用して開発力をオーディオ部分に集中させているからです。
ルームアコースティックスの補正にDirac Researchの技術(Dirac Live)を取り入れたことはかなり好感度が高い。
ハーマングループならば自力でできないはずがありません、サムスンのサポート下ですからいくらでもやりようはあったはず。
それでも無駄な投資を避けて本体の作り込みに設計リソースを集中した。ライセンス料を払うのでしょうが正しい判断です。
経営と設計の両方に目利きがいるんだと思います。
はっきりいいますがアタシャSA750好きじゃないが買って損のない音だとは思いますよ。
破産したThiel(ティール)の二の舞を心配する海外ファンも
繰り返しますが、EVA Automationがらみの負債はB&Wに確実に影響します。
ファンなので(まあオーディオメーカーで嫌いなものもあまりありませんが)この経緯は残念です。
海外では今のB&WをさしてつぶれたTheal(ティール)と比べるメディアがあるぐらい。
聞きたくないほど不気味な話です。
90年代終わりまでアメリカンハイエンドスピーカーの筆頭だったTheal(ティール)は、迷走経営を続けたあげく潰れました。今は影もかたちもありません。
Wilson AudioやAvalonをしのぐ人気を得ていたハイエンドブランドの最後は悲惨なもので、透明パックに詰めてスーパーマーケットで売られる安物Bluetoothスピーカーまで出すという終わりかたでした。
国内では全く報じられませんでしたが、海外ファンの間では予想だにしなかったハイエンドスピーカーの悪夢として有名です。
B&Wでは引き合いに出されております。
Sonusfaberも似た時期があった・北イタリア気質で乗り越える
ひとつ思うのはフランコセルブリン後のSonusfaberも危うかっただろうということです。
Bowers and wilkinsのような巨額の借金こそなかったかもしれませんが、ファンドに資金繰りを頼り、売れ筋に力を入れろと迫られるなかでアイデンティティを失いかけた時期があったようです。
製品にそれがみえた。
しかし幸いなことにパオロ・テッツォンという「人」と往年のカロッツェリアを思わせる「北イタリア気質」のクラフトワークがこの会社を更に上のステージに押し上げました。
今ソナスをフランコセルブリンのイミテーションという人はいません。
同社が属するMcIntoch Group(マッキントッシュ グループ、つまりアンプのマッキントッシュと同じグループです)において中核の会社となっております。
Fine Sounds Group(現McIntosh Group)の環境も良かったのだと思います。
ファンドなりのやり方ながら、口出しはなるべく避けるという方針があると聞きました。
福島県でのClasse製造はよいきざし
Classeは福島・白河市で造り込みを受けることになりました。東北地方はきめ細かい高品位の組み立てスキルをもつ土地柄です。
ブランドが廃止されたときの旧Classeユーザーの不安はいかばかりだったかと。一度閉鎖されたことで海外でもブランドとしての信頼が薄れているはずです。
しかしながら東北は実に丁寧な製造業の気質があります。
世界的にみても作業の質が高く、製品の製造品質は旧以上と思われます。
これこそ地に足のついた運営でありファンの安心となるものです。
それらもふくめてSound Unitedのもとでスピーカー・モバイル共に充実したラインナップになることを期待しています。