ここ数日ソナスファベールのLumina1のことばかり考えています。
もう出てある程度経ちますが、いい。
自分の部屋にアーティストが「降りてくる」音です。
どっかのタイミングで買っとかなきゃならん、それはわかっております。
Lumina1はEDMもイケた・クラシックだけじゃない
音を言葉で伝えるのは難しい。ミニスピーカーのくせに人が叫ぶときの迫力が伝わってくるとだけ申し上げたい。
音の強弱がよくわかる、弱音がはっきりとそして伸びるので迫力があります。
前提として申し上げますと、造りがとんでもなく凄いことを認めた上で、ある時期までソナスファベールの音は好みじゃなかった。いいと思えたのは初代ガルネリオマージュ以降です。
でも最近はまた違う。
ソナスファベールでEDMがよく鳴るとは
クラシックでホメる試聴が多い。確かに自分もそこはメインで大納得ではありますが、もう少し申し上げると最近のソナスはポップスとか凄いいけます。
Zedd「Addicted To a Memory」の拡がり・エレクトロニカがいける
ちょい古いですがZeddの「Addicted To a Memory」とかドバーッと音が拡がる。
ソナスファベールでエレクトロニカとはお前頭おかしいんじゃないかとか言われそうですが、実際聴くとエラく気持ちがよいのです。
たとえば今まではJBLの小型ブックシェルフ(ホーン付)が出したリズム感が得意なスピーカーのような表現もSonusfaber流の解釈でやってのける。
決してクラシック専用ではありません。
EDMお好きなかたも大変アリではないかと思います。
Lumina1は低音の色合いが多彩
低音はあるところ以下を思い切りよく諦めている。ただ、いわゆる重低音を感じる帯域の味付けが絶妙。
低音域の拡がり・音色や強弱表現の幅が広い
クラシックはいうまでもなく電子無しのアコースティックな楽器ばかりでありますが、生楽器特有の階調豊かな音楽を得意とする強みでしょう。
ウーファーは小口径です、それを逆手にとって振動板の動きは機敏。
大面積の振動板では苦手な、デリケートなハンドリングを行う設計そしてチューニングです。
「チューニング」・新世代のソナスファベールが他社より抜きん出た能力
現在ソナスファベールのトップであるパオロ・テッツォン(Paolo Tezzon)は数年前から先代の影を完全に脱し自分の音を創り上げてきました。
「自分の音」
オーディオ関係ではエンジニアとしての設計スキルと合わせて一番大事なものですが実現できる人は数少ない。逆にスピーカーやアンプ設計者で、それだけを頼りに一生フリーランスがいるほど希少な才能。
ソナスファベールは時間が経つほどよくなっていく
なおオークションの情報をご覧頂ければどんどん出てきますが、ソナスファベールのスピーカーは市場価値が落ちません。
しょーもない話で恐縮ですが。
初期Sonusfaberはコレクターアイテムになりつつある
初期のソナスファベール、つまりフランコセルブリン時代のスピーカーは年月を経て評価はむしろ上がっている。
初代Electa Amator/Minimaにはプレミアムが
例えば御大フランコ セルブリンの初期にあたる、つまりバイオリン職人が作っていた、初代のElecta Amator(1988年)やMinima(1990年)のミントコンディションは販売時の定価を超えるプレミアムがつきます。
あんなものは今作れないからです。
そもそも素材からして今はワシントン条約で取引禁止対象(ブラジリアンローズウッド)。
カネの話で申し訳ない。
損得のことをいいたいのではありません。
この会社のスピーカーは作品度が異常に高いということを申し上げたいのです。
もはや「工業製品」とは呼べない造り・工芸品に近い
製造業の人間から見ると工業製品のカテゴリーからは少し外れている。
Luminaも同じ、リアルウッドとそして革。この会社は比較的下位クラスのスピーカーを革で包みたがる。
下位モデルを塗装仕上げにしない理由は、
- 塗装をするには木目がきれいでないと駄目である
- 結果として素材を厳選することになるからコストが高い
ということらしいんですがそもそもその発想がちょっとおかしいんですよね。
製造業の立場で言えば革張りは全くコストダウン対策になっていないです。
普通はやりません。日本だけじゃない、世界中どのメーカーでも提案したらそいつはバカだと思われます。
Lumina1はパオロ・テッツォンが悩んだ成果(だと思う)
その点Lumina1は見ているだけで楽しい。
商売という生々しい世界で作り手がスジを通そうと悩んだ過程が見えるようです。
何と言いますかユーザーとしてこの会社は入れ込める。
パオロ・テッツォン・浮世離れした会社を押し上げた
パオロ テッツオンはフランコセルブリンの押し掛け弟子・なのに師匠が消えた
創業者のフランコセルブリンが2007年に突然引退したとき(2005年には実質関わりを止めていたとの説あり)、多分ですけれどパオロ・テッツォン(以下パオロあんちゃん、当時まだ若い)はボーゼンとしたと思います。
入社が2004年ですから。
しかも名匠フランコセルブリンの後継です、継いだあんちゃんは31歳。
パオロが入社の翌年ぐらいから師匠はあまり会社に来なくなっていたらしい、教わる時間もない。
フランコセルブリン「知性と情熱があってセクシー」な男
御大セルブリンは以下のかた。
知的なイタリアンと聞いて誰もが思い浮かべるような、セクシーなおじいさんであります。
(著作権のカラミがあるので使える画像がありませんが、かなりおしゃれな方です)
バイオリン職人を雇い、工法も楽器そのままにスピーカーを作り続けた方。
雑な感性しかもたないアタシャどうしても馴染めませんでしたが音も独特の美音。
セルブリンの心は会社から離れつつあった・その頃に会社を継ぐハメに
若く血気盛んな若者ほど惚れるでしょう。
しかしパオロがSonusfaberへの入社を志したとき、すでに御大は「投資の対象」となりつつあった同社の経営から心が離れはじめていたらしい。
不幸なことです。
スピーカー作りに憧れてたのに。
御大セルブリンの押しかけ弟子(本当の話らしいですが)になったのに。
Sonusfaberはいわゆる製造業とは違う・「工房」「工芸品」に近い
しかも残った会社は、
- コストダウンのアイデアが革張り
- バイオリン職人がスピーカーを作る
- 厳選された木材のみ(合板はリアルレザーを貼る)
およそ浮世離れしているわけです。
90年代末には「工芸品スピーカー」として世界的な評判を取り中国ではエクストリーマ以下のそっくりさんがバンバンコピーされたほど。
日本と並んで最もメインターゲットだった北米での人気は相当なものだったそうですが、数を追いかける造りではありません。
今だから申し上げられますが、フランコセルブリンが離れたあと、正直潰れてもおかしくなかったと思います。
こんな会社を存続させろなんて無茶な話です。普通なら多分1年ぐらいでメンタルやられるか胃に穴があく。
家業でもない訳でさっさと会社を辞めるでしょう。
ソナスファベール迷いの時期・2010年ぐらいまで
ともあれ31歳、しかも入社して日が浅い。この歳で知られたプレミアムブランドの開発責任者をやるハメになった。
どういう決心をしたかわかりませんが、このお兄ちゃんは「やる」と決めたのです。
31歳でフランコセルブリンの後継・迷い続けた数年間
はっきりいいますがパオロあんちゃんが引き継いだ直後から数年間、迷ったかのごとき製品が出ました。
一番有名なのはDOMUSシリーズで、たまげたのを覚えています。いきなりホームシアター。
音もオーケストラより銃撃戦の再現が得意みたいな。
下ってGUARNERI evolutionも個人的に正直ちょっとぉ、でした。普通のいいスピーカーになっていた。
2010年前後はなんとなくですが、雑誌もとりあえずホメとけみたいな雰囲気のブランドになっていたように感じていました。造りに手抜きがなかったのが救いでした。
今ならLumina1より少し上となるであろう「Toy(2011年)」は甘さ強めの印象。狙いすぎじゃないのかなと思っていました。
しかしながら作り手の気持ちとしてはわかる話です、繰り返しますが名匠といわれた男の後釜です。
相当に悩み、焦ったでしょう。
Sonusfaberの経営主体は投資ファンド・相当な圧力があったはず
しかも会社に資金を出しているのはファンド(当時Fine Sounds Group、つまり現在のMcIntoshGroup ※リンク先・McIntoshGroup公式ウェブサイト)だったそうですし。
顧客も北米あたりのディーラーなんていかにもホームシアターへのシフトをしろとかタフに迫ってきそうです。
周りは静かにしてくれなかったはず、さぞかし無茶もいわれたでしょう。
プレッシャーはすごかったと思います。
パオロ・テッツォンはプレッシャーを跳ね返した
ただ売れるものを作るだけでも大変なのに、なんとフランコセルブリンのコピーではない音を創らなきゃいけなかった。
ソナスファベールのファンはまがいものに厳しいのです。
しかしですねえ、このあんちゃんは投げなかったんですよ。
往年のカロッェリアを思わせる一途さ・これが北イタリアの気質か
三十そこそこで真正面から取っ組んだ、すごい肚のすわりようです。
しかもしぶとい漢。
Lumina1とかオリンピカを見ると「粘り勝ち」ってワードが出てきそうな。
なんとはなしにですが昔のカロッツェリアの経営者とか職人の話を連想してしまう一徹さがあります。
これが噂に聞く北イタリアの気質でしょうか。
数年前からプロダクトが1ミリもブレなくなった。高級機はAidaⅡがそうですが、2016年のIL CREMONESE、そしてHomage Traditionシリーズは唸った。フランコのコピーとは全く違う、完全に違うタッチです。
初めてElecta Amatorの音をいいと思えた「Electa Amator3」
そしてElecta Amator3は雰囲気残しつつもパオロ・テッツォンの音。アタシが嫌いな「初代Electa Amatorの色」を見せながらも明らかに違うタッチで現代ソースをきっちり再現します。
フランコセルブリンが見込んだのですから元々才能はある人、それが悩んだ末の現シリーズです。
良さ、というよりむしろ「漢(おとこ)の気迫」を感じる出来です。
Lumina1も明らかに狙うべき目標を掴んでいて、あの音も納得であります。
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アタシには(恥ずかしいことに)資金とそして「時間」がない
ホメるのになんで買わんの?と言われれば理由が。実はこれがいつも頭にあるからです。
フランコ・セルブリンのAccordo(アッコルド)であります。
Accordoがなくなるんじゃないかと、それが不安で(でもカネがぁ)
小型スピーカーを気にしてる人は全員頭のどこかにあるんじゃないでしょうか。
Accord・フランコセルブリンの遺作にして畢生の大作
フランコセルブリンの遺作にして御大の美意識が凝縮されたひとつの頂点です。
テレビで「匠(たくみ)」なんて言葉を聞くと気持ちの悪さにゾッとするほうですが、この方についてはまぎれもなく名匠です。
これがいつまで作られるのかはわからない。
それが怖い。
ディスコンともなればプレミアムがつくでしょうから、多分アタクシでは手が出ないはず。
GUARNERI Homage第一号機は献呈された・イル・クレモネーゼとともに展示
ルーツはSonusfaber時代の「オマージュ」シリーズです。
恐らくパオロ・テッツォンが憧れたであろう同シリーズの第1作目であるGUARNERI Homage(ガルネリ・オマージュ・1993年)。
この機種からSonusfaberの異質さが特に際立ち始めた。
音も外見もミュージカリティしか表現しないスピーカーです。
なおこれは現地イタリアで工業製品ではなく工芸品としての認知を受けたスピーカーです。
No.001、つまり第一号機はクレモナ県に献呈され、同市のヴァイオリン博物館に1715年ストラディヴァリ、つまり「イル・クレモネーゼ」とともに展示されています。
ちょっと驚くべきことです。イタリア人はこういった分野で「新しいもの」をめったに認めようとはしません。
町中アートのような環境ですから。
しかも北イタリア人はある種の頑固で知られています。
フランコの才能がいかほどの評価を受けていたことか。
フランコセルブリンがサルヴァトーレ アッコルドのファンであったとは
個人的に気に入っているのはNo.002がサルヴァトーレ アッカルドに献呈(販売ではありません)されたこと。
パガニーニを弾かせたらもう随一、艶のあるヴァイオリンとは彼のための言葉。
もし不幸にして未聴のかたは一度お試しを。音楽と本なんて滅多他人様におすすめするもんじゃありませんが、これはアタシの趣味ではなく「フランコセルブリン」のお好み。
クラシックのホメかたは知りませんが、「一曲目から飛ばして」いきます。
Franco Serblin”Accordo”・ディスコン後は確実に「2度と作られない」
そのフランコセルブリンが自分の名前を冠したブランドの最終作品が「Accordo」。
現物のワークはもう凄まじいの一言。眺めているだけでもいい。
あとフランコセルブリンの生前と現在で生産仕様に違いはあるのだろうかとそれも気になっています。
ともあれこの価格はおいそれ手が出ない、お恥ずかしい。
一応ローンの計算はもう3回ぐらいしています。
分割の支払いじゃなくて高めのサブスクだと自分に言い聞かせられないもんだろーか。でもサブスクに金利とか手数料なんて項目ありませんよねえ。
Lumina1は使いこなしに数年かかる
それと時間の問題があります。仮にLumina1を買ったら最低でも3年はかかりきりになるはず。
そのぐらいの音は出します。
100万ぐらいのアンプまでどんどん音が変わる
セッティングも時間が掛かりますし、アンプも数万円からアッパー100万までなら変えただけどんどん音が変わります。
つまりLumina1を買うとAccordo(アッコルド)との出会いは(資金がないってことはさておき)確実に3年以上後になるわけです。
中年なんでしてね、3年以上後とか言われると結構時間のことも考えちゃったりするんですのよ。
しかしLumina1、いつまでも在庫がないですな。昨年からオーディオは売れまくっているそうですが、10万円という値段も含めてこの音と見た目はなるほど人気な訳です。