最初にはっきり申し上げます、A-0には巨大な欠点があります。
「顔」です。
それ以外はベテランの工夫以上の優れたコンストラクションですが、このツラは。
2回にわけてたっぷり主観でA-0のデメリットと造りの良さの両方について述べさせていただきます。まずは外観から。
外観・内部を通じて感じることは、好き嫌いは別としてなるほどソウルノートに寸止めはないこと。
エントリーモデルというにはあまりに型破りです。
「スカーフェイス」フロントパネルは三菱ランエボのごときアニメの造形
ベタ褒めする気はない、思ったことは申し上げましょう。
デザインは不細工、その一言につきます。
オーディオにしてありえない、隣に座っているのがAura VA-50。
ペンタグラムデザインの隣に「スカーフェイス」アニメデザインのA-0が並ぶ日がきたのです。
毎日、美女と野獣という言葉を思い出しています。
リブ付き分厚のフロントパネルは「伝説的な原価割れオーディオアンプ」の伝統
しかしながら確かに手は掛かっている。
競合他社でこのフロントパネルへのコストを無意味だと思っているところもあると思います。
対するA-0の設計者は力を入れるべきところと力んでも意味がないところを知り抜いたエンジニアです。
他で詳しく申し上げましたので省略ですが、設計者は「伝説的な原価割れオーディオアンプ」を手掛け続けました。
プリメインアンプA-10の遺産が支えた NECベンチャー「Authentic」
NECの株主以外は現在でも彼に大感謝なわけで、NECオーセンティックのアンプ事業はその時の設計と金型が支えたといっていい(その後経営委譲を経て現在はピュアオーディオとは違う別会社に)。
その後のMarantzでのキャリアを含め、普通のエンジニアが経験しない野心的な設計キャリアはSOULNOTEが強力たるゆえんです。
フロントパネルもあの厚みのアルミにリブですから高い剛性と制振効果をもたらしています。
問題はそのリブ・・・もはやスカーフェイス(切り裂き顔)です。
それを大真面目に作ってみせるのがSOULNOTEなのです。
三菱ランエボ(3代目)あたりのアニメデザイン
S-3・P-3以降のデザインもアタシは似たようなものだと思っております。
クルマでいえば三菱ランサーエボリューションの3代目ぐらいな感じ。
ガンダムとかに出てきそうな、つまりはアニメデザインです。
アキュフェーズの昭和デザインもたいがいですが、SOULNOTEにはもう少し違うものあってもいいんじゃないかしらと。
逆にいえばそれでも買う理由があったともいえます、普段なら買いません。
手元にはそういうものがあります、強烈に光るものを持っている。
音と同じくシンプルなデザインがほしい
アタシの手元にはTheta DS Pro Prime2があります、個人的に無垢アルミパネルではなかなかと思っております。
力みすぎのフロントパネルは音と同じくシンプルな造形で
そういうシンプルなのがいい、実際そういう音です。
ロゴもあんなピカピカさせなくていい、黒のシルク印刷で充分。
たぶんコストも安いと思います。
なおLEDが赤は、シルバーにとてもいい。
ここは救いです。
個人的な経験ですが、ここ20年開発案件を承るたびに皆様LEDはブルーにしたがります。そしてチップの値段で悩む。
下請けからはとても申し上げられませんが、ダサいセンスです。
フロントパネルにボリューム・セレクターを「彫り込んだ」レイアウト
ここから先はA-0の世界です。
リブとボリュームの隙間をご覧ください
均一です。
こういうところはメーカーの考え方が現れる場所で、実は中身を表しております。
組み立て精度が現れるスイッチ・ボリュームレイアウト
アルミのフロントパネルを切削した丸いスペースとボリュームの隙間にバラつきがないことがお分かりいただけるでしょうか。
10万円台の、いわんやプリメインアンプが絶対挑戦しないことです。
このスカーフェイスは、しかしボリュームなどが掘り込まれたようにレイアウトされている。好きな方はここにグッときているはず。
組み立て公差は厳しい、内部もいかほど注意深く組み立てられているかはこういうところに出ます。
次回申し上げますが、その中身はほとんどファナティックでした。
ボリュームのクリックは音楽表現としての「最適音量」のため
そのボリュームですが、クリックがついている。
音量はリスナーの音楽表現・エントリーモデルにない発想
音量操作を考えた気配りですが、刻み幅がいい。
いい雰囲気の音量位置で止まります。
「音量はリスナーの音楽表現」だってことを知っているこの機能。
ささいな、というべきでしょうか。
アタシは10万円クラスのエントリーモデルに一番欠けている感覚だと思います。
高級感のためではないボリュームのクリック・音楽好きのため
繰り返しで恐縮ですが、このモデルの大テーマは「コスト」。
それは部品が0.5円上がったとか下がったとかそういう世界です。
このクリックは普通ならつけない、ソウルノートが寸止め無しの理由です。
しかも高級感を出そうとしてつけるウソのクリックではない。
デザインではなく立派に機能で、曲と聴き手の気持ちには最適の音量があることを知ってる人の仕事です。
ある意味A-0は『エントリーモデル』といえる。手抜きがないプリメインアンプです。
こういう音でピュアオーディオに「エントリー」するとその後の音楽観が違ってくるでしょうから。
ベテラン好みにありがちな、素人お断りなところもない。
これはソウルノートのいいところですが、間口がひろい。
エンジニアである加藤氏の個性らしいのですが、音楽好きに訴えています。
振動源(電源トランス)からダイレクトに接地・スパイク標準の意味
「スカーフェイス」フロントパネルでわかるとおり、A-0の重要課題は振動対策です。
設計者の得意技であります。
電源トランスからダイレクトに伸びる足・振動は拡がる前に地面に落とす
フロントパネル付近で2点、トランス部で1点の3点支持。
4本足と違い原理上ガタはありません。
そして最も特徴的なのは電源トランス直下から伸びる脚です。
本当にトランスに直接足がついている。
3本足を得意とするエンジニアですが、何度みてもまさに型破りです。
誰もやらない。
電源部は唸り音が聞こえるものあるぐらいで最も振動する、それをシャーシ全体に振動が広がる前に地面に落とそうというわけです。
ソウルノートの各モデルとも足回りのセッティングによる音の変化が大きいといわれますが、この発想ができることが理由だと思います。
スパイクは流行でついている場合が多いのですが、ソウルノートは違うようです。
考えると出力10Wですから流行を追う気はさらさらない。
なおこの構造から、置き場所変更はそっとやっております。
トランスにドカンと衝撃がいきそうですから。
8Kgという重量はその点ホドがいい。
前足2本はフロントパネル手前のシャーシについております。
もしかしたらパネル直付けにしたかったのかもしれませんが、その場合パネルのコストがもっとあがる。
他機種とのシャーシ共用にも不都合かもしれません。
今ですら安くない造りなのです。
コストの割り切り・内部の振動対策に集中
アンプの振動対策は
外的要因と内部要因、この2つがあります。
手法は重さで押さえつけるか、柔らかさで受け止めるかどちらかですが、主流は重さのほうでコストもかかる。
うち、A-0の振動対策は割り切って内部の振動源に集中したもののようです。
シャーシも剛性あるものですが、ただの鋼板ですから外からの振動を重さで抑えるものではない。
これはコスト面からの割り切りです、次回詳しく述べますがこのコスト制約こそがソウルノート、特にA-0ではいい方向へ、つまり高音質をもたらしています。
ソウルノートはインシュレーターやラックに敏感・しかし音のバランスが崩れない
個人的にはA-0のアプローチが好きです、ゴツい箱はあんまり好きではない。振動対策はしづらいと思います。
あちこちがどんどん重くなり、ついには収拾がつかなくなっていたものがよくありました。
スパイクやオーディオボード・A-0は「音全体のバランスが崩れない」まま鋭く反応
軽いほうがインシュレーターなども効果を発揮しやすい。ソウルノートもスパイクやオーディオボードセットでの提案を行っております。
なおA-0で感心するのは、
足回りやケーブルを変えたときの反応は敏感
しかし音全体のバランスは変わらない
ことです。
ケーブルやインシュレーターであまりに激しく音が変わるならそもそも不安定な設計
これはなかなかできないことで、
ケーブルやインシュレーターで何から何までガラガラ変わるようなアンプはあんまり感心しません。
ケーブルやインシュレーターなどアクセサリーの記事をあまり見ない理由でもありまして
本当にあの表現ほどに音が変わるのなら
- 対策前はよほどひどい状態だったか
- 不安定なアンプ・プレーヤー・スピーカーを使ったか
この2つの可能性はあるからです。
A-0は型破りなほどの感度の高さを感じさせつつも、安心して遊べる。
このあたりはいくつかのスピーカーを鳴らしつつ改めて。
ただ「カオ」についてだけは。
ちょっと、まあ、実は少しだけ気に入り始めております。音がおとですから。
次回は内部について、繰り返しますが外部デザイン以上にファナティックです。