一つの曲を明るく聴いたり静かに聴いたり
オーディオにはそういう楽しみがありますので部屋にはいつも2機種置いています。
メインのRoyd Sintraとともに、JBL Control 12SRであります。
こいつはとにかくアゲていくとき用です。それ以外のつかいみちはない。
たまに聴くと実に楽しい。
普通ではないControl 12SRのダメさ(新品のときから)
音楽の得手不得手がはっきりしているという面白い機械です、嫌うひとも多い。
80年末ですでに超古典だったからです。オペラやロック(この対比は変ですが)だけがいい。
ボーカル専門だった。
最近は欠点のないものが多いせいかこの系列でもはるかにアクのないControl 5-Y3が復刻されるなど、好き者向けに見直す流れもあります。
かつて現役だった頃から好評のControl5と違い、Control 12SRは名前を聞いただけで眉をひそめる方もおられる。かくいうアタクシがそうでした。
似たものに、例えばEV TX1152などPA用スピーカーはこれが最強なんて主張があるので、お前は5万とか10万円のスピーカーでも100万円に勝てるとかおかしなことを思ってるのかなんて言われそうです。
一応申し上げますと全くそんな気ははございません、EV TX1152はまあ面白い音ですが。
このControl 12SRはほとんどの項目で現代のペア5万円スピーカーにすら負けます。
といいますか現在のペア5万は相当いい音です。
でも手元に残った。毎日だと胸焼けがしますけれど時々無性に聴きたくなるからです。
オーディオに興味のない人が「なにか曲が違う」と言う音
ほとんどの項目で負けると書きましたが、それも普通の負け方じゃない。
オーディオにご興味ない方が聴いてもかなりはっきりわかります。
独自の音色・ワイドレンジや高解像度はハナから考えていない
「これ違う、いつも聴いてるのじゃない」と言われる。
- 高音も低音も出ない
- たいして解像度が良くない
- 「シャー」という(SNがよくない)
この3点、まず新製品ではお目に掛からない表現だと思います。
古いからではありません、このスピーカーは発売時点で既にこうでした。
低音はかなり「高い低音」でスパッと切れる。高音は「かなり低い高音」から聴こえなくなる、見事なナローレンジであります。
解像度も低い、そこそこいいミニコンポのほうが細かい音が聴こえるかもしれません。
超高能率がたたってSNのいいアンプさえ「シャー」と聞こえる
SN、つまり静けさは、能率が高すぎてもうどうしようもないレベルです。
SNのよろしい、というか無音時にノイズなんて聴こえないアンプが、ボリューム0でも「シャー」という残留ノイズがはっきりわかる。
Pioneer A-09で鳴らして「ナローレンジ」「解像度が普通」
一応申し上げますとこれらはPioneer A-09を繋げての話です。
SNはあまり劣化しませんからいまだによろしい、それでもかくの如し。
おいぼれアンプですが基本的な部分の現代的水準はキープしています。つまりアンプやプレーヤーに現在の何を当てようがこの方面で改善の見込みは全くありません。
喉を震わせるボーカルが「見える」・ダイナミックレンジのみ超一級
ほぼ全方位でダメ、では何かよろしいのか。
演奏のリアルさ
音の強弱だけは超ハイレベルで再現、ピーキーすぎますがここのみ高レベルです。
ピックが弦を擦る音・小音量でも音がうねる
ボーカルが喉を震わせているのがわかるというよりもう「視える」
ピックが弦を擦るときのタッチがわかる
と申しましたらご想像いただけますでしょうか。
かすかに弾いていたベースが強くなるとき、弦の震えが大きくなっていく様子が手にとるようにわかる。
演奏の強弱の細かい変化が自然に耳に入ってくるレベル。
ほとんどうねるレベル。これが小音量でも簡単に聴こえますから、この手のリアルさが気に入るとちょっと代わりが見つからなくなるのです。
ダークな響きが大得意・きれいに聴かせる気がない
現代のスピーカーと比べるのは、言ってみれば4Kの液晶TVと一番よかった頃のブラウン管モニターを比較するようなもの。
解像度は及ばないが黒の階調だけはどんな暗闇も表現する。
オーディオ用語でいえばダイナミックレンジが広いということになります。
Control 12SRは他のスピーカーより再生できる最小音から最大音までの幅が大きいということです。元々PA用ですから(造りを見るとPA風といったほうが正しいのかもしれないけれど)。
デリケートな強弱・アンプのメーターが振れるの目で見る音
特別大きな音ではなくても演奏の強い弱いの変化がわかりやすく聴ける。
強弱の解像度が高いとでも言えばいいんでしょうか。
艶のある音・キレイな音は100年経っても出ませんが
ダークな響き、そして演奏のデリケートな強弱表現
これらはよそではちょっとない。
アンプについているメーターが振れているのが見えるかのごとき錯覚に陥ります。
復刻S101・MR822と同じコンプレッションドライバー&ホーン
まあ当時ペア¥336,000をこれだけで売ろうとしたのですからJBLも太えなと思いますが気持ちはわかる。
JBL2416Hコンプレッションドライバー・近藤等則が好んだ独特の音色
ある意味凄い特徴です。しかもこのダイナミックレンジのままで解像度や再生レンジを広げるのはかなり難しい、高価になります。
なおコンプレッションドライバーとホーン/ウーファー構成は
- ドライバー:2416H
- バイラジアルホーン:2372(S101は「2301」)
- ウーファー:G-125B
つまり1986年に復刻された「S101」、そしてMR822と同じ「2416H」ドライバーです。
両機とも今でも好まれている。MR822はミュージシャンの故 近藤等則 氏が音の細くならないJBLとして気に入っていたそうです。
ホーンの音を出す仕組みであるコンプレッションドライバーってもの凄く反応が鋭い。ウーファーの性能をこれに合わせていくととんでもないリッチな設計になってしまう。
“Project K2″「9500」更にDD67000”Everest”は600万円越え・1500ALはプレ値状態
同時期に発売された”Project K2″「9500」は¥4,400,000でした。
コンプレッションドライバーのパフォーマンスを上げると、ウーファーが追いつくには際限ない性能向上を求められる好例です。
「1500AL」ウーファーはもはや名機の分類
現在DD67000”Everest”はそれを更に高水準で実現していますが代わりに¥6,300,000です。
あの元になったウーファー「1500AL」が凄いのです。
単売された頃の個体にプレミアムがついて出回っている始末。
しかも最近はJBL自体ハイエンドのメジャーからはちょっと外れはじめています。
「俺はオレだ」という強さがないと買えないブランドになりつつある。
ただそこが趣味です、DD67000”Everest”も好事家にはたまらないところ。
3,000円のヘッドフォンでもハイレゾ対応のこんにち、ハイエンドスピーカーに行くならいっそJBLのホーンという人はセンスいいなと思ってみています。
なお最近JBLとタンノイという言い方が通用しなくなってきた、代わりにB&Wとソナスファベールが定番じゃないかと思うほどです。そのとおりではあるのですが未だつきないものがある。
ホーンはハマると一生ものになるのです。
ホーン・コンプレッションドライバーは音をブッ飛ばす機械
それはさておきホーンが特徴のControl 12SRであります。
DD67000にはまるで及びませんがコンプレッションドライバー+高能率ウーファーによる2Wayという古典的JBLスタイルです。
みるからにハイテクとは無縁の内蔵ユニット、音を飛ばすための機械です
買った理由は、今やよく思い出せないのですが中古ショップで転がっててなんとなくだったような。
こういう買い方が多くて思い出せない。
面白くないことがあったときに衝動買いしたオーディオは残る
当時はDIATONEのDS-5000で、仕事か何かで面白くないことがあって衝動的に買ったんだと思います。
DIATONE DS-5000とControl12SRはあまりにも違いすぎた
買って家で聴いた最初は私も「うげぇ」でありました。
よく捨てなかったというぐらいでしたがある種の表現が良すぎて手放せなかった。
ジャズとロックは最高のレベルです。
クラシックは強烈にダメ、ただ声楽つまりオペラとか限定ではしびれる。
こんなところも今じゃかわいい。八方美人じゃありません、好き嫌いは激しい。
復刻JBL Pro Control 5-Y3は明るさと80年代デザイン
とまあここでこんにち似たものを選ぶならこれ、とか言わねばならんのでしょうが何しろ個性的すぎて。
Control5-Y3・JBL Professionalがヒビノから復刻発売
ただ同系統で面白いものはあります、最近復刻されたJBL Pro「Control5-Y3」です(実勢価格:¥65,000・ペア)。
オリジナルはControl 12SRと同時期に販売されておりました。
ハーマンインンターナショナル扱いでなくヒビノです、完全な業務枠。
そのせいか3年保証です。
“Control 5-Y3″(ヒビノ公式ウェブサイト)https://proaudiosales.hibino.co.jp/jblpro/4775.html
ふっきれてる音・3年保証の「プロ枠」
かなりパーンと音が飛び出てきます。
Control 12SRとは違うものの現在のスピーカーと明らかに違う反応の良さ、そしてボーカルや低音の出方は最近にない個性です。
それでいながら解像度やレンジは現代的であります。
クラシックが聴けるくらいのマトモさはある。
なおこのシリーズはJBLがBOSEに対抗して作ったものです。いまも販売されている「Control 1 Pro」がそれにあたります。
当時(80年代後半)は101シリーズを中心にBOSEスピーカー大全盛でカフェやらライブハウスはBOSEでした。
大流行したBOSE101は消え、Control 1が残った
JBLもそこを狙っていて、その頃の「80年代モダン」がControl 5で復活したわけです。
考えたら「101」シリーズはもう売ってないんですね。
Control1Proが残るとは。
Control 12SRもそうですが部屋に置くと結構新鮮であります、インテリアに馴染む。
なおcontrol 5をご検討の方に申し上げますと、こちらはControl12SRと違い当時から評論家の批評は良かった。
明るくて鳴りの良いキャラクターでした。
JBL control12SR・賛否両論のモデルはだいたい面白い
面白かったのは当時Control 12SRは評論家の間で評価が鋭く分かれたことです。
山中敬三・朝沼予史宏が推し、菅野沖彦は拒否したControl 12SR
重鎮の菅野沖彦氏はダメというのに対し、山中敬三氏や朝沼予史宏氏はなかなかいいと応じる。
真っ向で意見が分かれるのはあまり見たことがなくて面白かった。
佐久間輝夫氏が実際にリファレンスとして使い、推薦していたのです。当時はなんのことかまるでわかりませんでしたが、今ならわかる。
(別冊「JBLのすべて」P67/P94・ステレオサウンド社)
こういう賛否の分かれるものはだいたいハズレがありません。
音楽の好みと同じで、その時は受け付けなくても響く時が必ず一度はやってくる。
音量が自然と上がるスピーカー
なお評論家がホメても好みに合わなければどうしようもありませんが、幸いこいつはピッタリ来た。
賛否両論にありがちですが、ハマれば代わりがない。
実はクラシックも聴いてしまうのですが(おすすめはしません)、音量が自然と上がるのです。
Roydほかはそういうことがない、そういうスピーカーなんだと思います。
ハイレゾ・空間オーディオの今は「ちょっと変わってる」ぐらいが面白い
今の世の中意見が割れるようなもののほうがかえって面白いです。
新品でControl5が欲しくなる音・あかるく屈託がない
全方位良くしようとするのはかえってつまらないです、そんなもんいくらでもあります。
人にホメてもらって喜ぶ趣味でもありませんし。
好きな音が出てくるのが一番いい。
パパーンと音が出てくると湿った気分も吹き飛ぶ。
なお時々と申し上げましたがここ1ヶ月ぐらいこいつに繋ぎっぱなしであります、ここのところ雨続きでRoydだとストイックすぎる。
改めて聴くといっそ新品でcontrol5あたり鳴らしこみたいと思う時間があるほど。
そもそも自粛が続いておりますから音楽ぐらい明るく聴きたいのであります。
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