B&Wはいい、でも見上げればアンプやプレーヤーを含めて予算は天井知らずです。高い。
ただ800D4シリーズが全てではないと言えるのがB&Wです。
これまでご紹介したとおり、すべての製品に同じポリシーを通してくる。
そういう会社の製品を現実的に検討したらどんな選び方があるのか。
600・700シリーズも遠からずモデルチェンジが予想される前提で、あえて今選ぶモデルを考えてみました。
2つの選択・スピーカー、またはヘッドホン・イヤホン
B&Wの音を聴く(そして買う)方法は2つあります。
- スピーカー
- イヤホン・ヘッドホン
「ハイエンドの音質で聴く」という前提です、我ながら変なおすすめですが理由があります。
音色やテイストが同じ・B&Wはヘッドホンも選択肢になる理由
普通イヤホンやヘッドホンはピュアオーディオの比較には出てこない、違うものとされます。
しかしこの会社はちょっと違う。
ご紹介した通り生産地が違ってもブランドの基本を絶対変えない、これをできる競合メーカーは少ないです。
B&Wはスピーカーでもヘッドホンでも同じテイストを維持しようとする。
ヘッドホン・イヤホンはすでに同社のスピーカーを持っているユーザーもメインターゲットだからです。
家でスピーカーを聴いていますからテイストに違いがあればすぐバレます。
「B&Wじゃないじゃん」って
今の世の中SNSで簡単に悪いレビューが広がるので手を抜くことは許されません。海外はこういうところは日本以上に酷評します。
それで800シリーズの開発チームが音決めをしているのです。
あれはハイクオリティのため、というより世評を恐れての必死さからです。
恐怖感が動機です、おかげで「作りての良心」よりはるかに突き詰められています。
ある程度の音量が出せない環境ならヘッドホン・イヤホン
スピーカーでいい音を聴きたい場合、特に低音ではどうしてもある程度の音量が必須になる。
原理的にコーン型ユニットは振幅を起こさないとある種の低音が出せない。
B&Wはその制約をよくわかっています。
いっぽうでヘッドフォン・イヤホンは、
簡単にいえばスピーカーの箱に穴を開けて耳を押し当てて音を聴いている状態(ごく簡単にいえばです)。
振動板と人間の鼓膜がバネ状態となった空気でつながっているという、スピーカーからいえば異常な条件。
スピーカーとイヤホン/ヘッドホンは物理特性が全く違う、特に低音がまるで違う。B&Wはその違いを完璧に理解して設計しています。
モバイルオーディオがブームとなってからも同社が長くヘッドホンをリリースしなかった理由であります。
しかし、今やこの会社のヘッドホン・イヤホンはスピーカーに一脈相通ずるサウンドとなっております。
大音量からささやくような音まで実に楽しい。しかもご近所から文句はきません。
P9でよくわかりますが、あんな高解像度の再生を部屋でやるなんて100万やそこらの予算ではまったく無理です。
ただ当然明確な違いはあります、B&Wもそこははっきりさせている。
一目でわかるようにすればこんな雰囲気。
これはB&Wでなくても、たとえ他社の40万円のヘッドホンであっても同じです。
振動板はスピーカーのように大きくスイングする構造にはなっていない。後面解放だろうが密閉だろうが同じです。
また鼓膜の近くで音を出しますから、音場感はスピーカーのようには広がらない。頭内定位、つまり頭の中というかてっぺんに音が集まる状態です。
いいかえればこの基本的な違いさえ理解して聴けばB&Wのテイストにひたれます。
なお800D4シリーズがリリースされた今、モデルチェンジが恐らく近いスピーカーをおすすめする理由は最後に書かせていただきます。
607S2 Anniversary Edition・無印600シリーズと音楽表現が違う
Via “607S2 Anniversary Edition”(D&M Holdings Inc. official website https://dm-importaudio.jp/bwspeakers/lineup/BW/index1184.html)
定価:¥110,000/ペア(税込)
恐らくコンティニュアムコーンが採用されてから最も底上げがされた機種です。
歴代最高というだけでなく、このAnniversary Editionは無印600シリーズと比べて値段を考えると怖いぐらいの独特の表現力を持ちました。
ペア十万でアンプはどうするんだ、という部分についてはもう中華デジタルアンプとスマートフォンで最初は充分と自信を持っていえる懐の深さがあります。
同じ音色のまま数千円のアンプから200万円のセパレートアンプまでどんどんクオリティを上げてくるのでこういう非常識ともいえる買いかたに十分対応できる。
あとはサブスクの音楽配信でたっぷり楽しむ、で当分いいんじゃないでしょうか。
アタクシはSonusfaber Lumina1のあのたたずまいと独特の音の厚みが好きなのでいつも比べてしまうのですが、録音の状態をきっちり聴きたければこれです。
705S2 Signature・800シリーズに近くなってしまった音
Via “705S2 Signature”(D&M Holdings Inc. official website https://dm-importaudio.jp/bwspeakers/lineup/BW/index1999.html)
定価:ダトク・グロス—¥388,300/ペア(税込)
705S2 Signatureは607系の上位というより805D3に近い
607S2 Anniversary Editionよりアップグレードする場合、少々無理をしても着地点はここしかない。
600シリーズの上位、というより805にほぼ近い音。なお『705S2』ではありません。
607もそうですが、無印とAnniversary EditionやSignatureモデルはかなり音の表現方法が変わります。
比べたくなるのが603S2 Anniversary Editionだと思います(¥319,000/ペア・税込)、キャビネットが大きいことは低音再生には有利(なはず)。スタンド不要であるところも価格面で比較される要素になります。
ただ、この機種についてそれは当てはまらない。
高域から低域まで、解像度・音の伸びと拡がり、全てが完全に上回っています。
B&Wは700系はいつも力が入りすぎる・CM1が失敗したトラウマ?
なお生産地を調べていてわかったのですが、
どうやらB&Wは以前リリースしていたCMシリーズについて、期待を下回った結果と考えているとか。
結構トラウマになっているらしい。
こういう中間グレードにはありがちな話です、600シリーズがよくなるほど、そして800シリーズの評判が高くなるほど製品企画が難しい。
そのせいで後継の700シリーズにはいつも力を入れすぎてしまうようです。
「これは800より600シリーズに近い音と言われるんじゃないか」
「これなら600シリーズのほうが割安って言われるんじゃないか」
開発がいつもそんな会話をしてそうな気がします。
まあそのおかげで705S2 Signatureのような音が40万円以下で出てくるわけですが。
やりすぎたかもとか思っているんじゃないでしょうか、そのぐらいの出来です。
PI5・ワイヤレスイヤホン・特に断捨離生活志向のかたへ
Via “PI5″(D&M Holdings Inc. official website https://dm-importaudio.jp/bwspeakers/lineup/etc/16.html)
いきなりイヤホンで申し訳ない、聴いてちょっと感動すらしたワイヤレスイヤホンだから。
Bluetooth・左右はTWSというCDレベルのデータ転送も無理という条件下で、実にひたれる音楽を聴かせた。
本来PI7を良しとすべきで、確かにバランスも表現力も「PI7」は上です。
ただ比較しなければ、というより絶対値としてPI5の能力はレベルが高い。
ヘッドホンでいえばP5S2のようにやや低音に寄った音です。
振動板を中心に部品はOEMが多いはずなんですが、高域はB&Wの文法通りに解像度は高いがなめらか。
ハードウェアが完成したあと、チューニングに時間を掛けたことがわかる音です。
これなら聴ける。断捨離型のコンパクトな生活をされていて、なお「B&Wの音が欲しい」というゼータクな希望をかなえてくれます。
なお難点が一つだけ、コンプライ(イヤーピース)を耳に合うものにしないと「落っことす」こと。
完全ワイヤレスは駅のホームで落とす人がとても多い。
JR関連の知人に聞きましたが最近あまりにもワイヤレスイヤホンの落とし物が多いので、専用の磁石付きの落とし物拾い棒を検討し始めたとか。
最後になりましたが充電時間が他社比で長いのはデメリットではないです。今はどこでもUSB-Cの電源取れますし、そもそも急速充電前提の仕様だとバッテリーの寿命が短くなる。
どのメーカーでも多分そうじゃないかと思うのですが、ワイヤレスイヤホンのバッテリー交換は本体が買えるぐらい取られると思います。
長持ちのほうがいい。保証が切れたら厳しいカテゴリであります。
PX7・ワイヤレスヘッドホン・ハイエンドヘッドホンで競合と勝負できる
Via “PX7″(D&M Holdings Inc. official website https://dm-importaudio.jp/bwspeakers/lineup/etc/9.html)
発売時の店頭価格:6万円前後
暑い時期にアウトドアで聴けないことを除けば、解像度を求めたらP9 signatureなき今これしかない。
P9 signature後「改良を重ねた」フラグシップ
上記の通りダイナミックレンジや音場感は原理的にかないませんが、B&Wのスピーカーでも上位機種並みの解像度はこれ一択。
名機だったP7の後継といえる内容です。
PX以降改良とチューニングを重ねているのも効いています。
もしスピーカーからこのレベルの解像度を聴こうと思ったら、通常は部屋もアンプもプレーヤーも全部見直しです。
無論有線接続が前提、本当に細かく音が出る。
注意して聴き取らなくても録音現場の気配(スタジオの反響音とか人の歩く音)がわかる。
しかも上から下まで実にバランスがいい。
高音がシャリシャリしたり低音がドスドスしたりという強調感はゼロです。2019年の発売ですが、長く使えると思います。
なおノイズキャンセリングのレベルですが、静かではあるもののはっきりいえば他社はもう少しノイズが低い。
ANC(アクティブ・ノイズ・キャンセリング)で音が鈍らない珍しいモデル
例えばSONYのWH-1000XM4はあれはほぼ完璧にちかい。
ここは性能というより考え方の違いかと。というのもNCをかけすぎると損なわれる音楽信号も多くなる。逆相成分を入れて打ち消すのでどうしても環境音以外も影響を受ける。
個人的にはANCを掛けた音は情報量の点でどうしても鈍くなりやすいものが多く、録音再現として疑問があるのですが、
PX7の高バランスの音をANCを聴かせた静か〜な中で聴くと、静まりかえった完全防音室でも作らない限りこれはスピーカーでは難しいな、と思うのも事実。
ANC有効時は音質がわずかに落ちていることを考慮しても(なんとなく音が丸いなという感じ)ほとんど快感レベルの再現性です。
なお今カーボンエディションですがシルバーもまだ市中には残っています。性能は変わらないので気に入ればこちらもありです。安い。
とまあここまでスピーカー2種とヘッドホン・イヤホン2種でよかったものをまとめてみました。
モデルチェンジが恐らく近い600・700を今おすすめする理由
繰り返しますが800D4シリーズがリリースされた以上600・700も遠からずモデルチェンジが予想されます
今は買えない、というお考えは全くその通りです。
ではなぜ上記2種を挙げたのか、『完成度』の違いです。
- 新型600・700は確実に値上がりする
- 上記2種のスピーカーは量産実績のあるベースモデルを元にファインチューンしたもの
607S2 Anniversary Editionと705S2 Signatureは、新製品にはない『完成度の高さ』があります。
成功したベースモデルの細部を細かく見直す作業は、新製品の開発とは違うものです。
新シリーズの「量産後改良」はこれからスタートです。
熟成されたチューニングは今買われても充分通用します。
無金利ローンか手元キャッシュで買える価格帯が現実的
なお702S2 Signatureや805D4を取り上げなかったのはペアで70万とか100万の値段だからというだけのこと。
無論こちらはいいものですが、趣味で贅沢となれば30万円台が現実的ではないかと。
あとでアンプやプレーヤーをアップグレードしていけば上位機種の音も充分狙えるというのが上記の2種のスピーカーを挙げた理由です。
30万円ならば分割ローンも楽・マイナス金利時代は無金利36回しかない
ここで30万円台の最大根拠を申し上げれば、分割で楽に買える金額であるということ。
具体的にはBICカメラグループのような「無金利」36回ローンで買うこと。
この無金利はポイントよりはるかに大事です。
預金に利息がつかない時代の買い物は「他人に支払い分を一時肩代わりしてもらうこと」が最も効率の良い投資です。
一度に全額支払いができれば一番よろしい、しかしよほど現金がないとその分生活は自然窮屈になる。
ましてやマイナス金利時代に手数料を払うなどありえない。
個人的にBICカメラの36回無金利ローンは大変便利に使わせていただいております。
繰り返しますが、アンプは数千円のデジタルアンプで鳴ります。消費税分以下で駆動すればいい。805D3に3万円のプリメインをつないだお話は以前触れさせてもらいました。
いまだに言ってよいものかどうか考えるのですが、楽しく聴けた。
例えばすでに2〜3万のプリメイン(Cembridge Audio)とかお手元にあるなら、それこそ音もだいぶ伸びやかに鳴りますよ。
最初はスピーカーに予算全振りする、オーディオはこれが一番効率がいいです。
思い切って超ローコストアンプで始める・スマートフォンをプレーヤーにして
スピーカーに全振りならいっそとことん、というわけです。しかも送り出しはiPhoneなどで。
スピーカーで支払う消費税レベル以下の金額であります。
以下ご紹介するアンプについていえることは
『音が出た瞬間、思わず息をのんだ』
『部屋の空気が変わった』
『エネルギーが爆発』
『圧倒的な力感』
全部ありません
まあアタシはセパレートアンプでも一度も体験していませんが。
そんなおかしなアオりがなくとも、以下でB&Wはきちんと鳴る、音楽を楽しめます。アンプとしての仕事はしっかりこなすのでB&Wの音を聴くことができる。
それは確かです。
Fosi Audio デジタルアンプ TPA3116・バナナプラグ仕様でないからいい
Dクラスアンプ、駆動力は必要充分。そして¥6,000です(2021年9月時点)。
『2121新登場』のアオりワードが残念ですが(というよりこれが中華アンプですが)、実力はサクラレビューではないようで実績が出始めています。
この機種の良さは
- この価格帯では一番スピーカー端子の質が高い
- RCAタイプ入力端子が装備されている(3.5mmのミニジャックより確実にいいです)
人気のNobsound NG-01Gを選ばなかったのは入力端子が3.5mmミニジャックだからです。
単純な理由と思われますが、端子形状は音にわかりやすく影響します。
入力信号は微弱だから、ミニジャックは残念ながらダメです。
またスピーカー端子はこの倍の価格にもないほどしっかり固定できる作りをしています。
なお数千円〜1万円ぐらいのアンプはなぜかバナナプラグ専用が多いのですが、選ばない方がよろしい。
Fosi Audioのようにむいた裸の導体をキャッチするものがはるかにいい。
アクセサリー記事のせいで誤解されていますが、バナナプラグは音質にとってはロスでしかなく、使えば確実に音は劣化します。
SMSL SA300 Bluetooth 5.0 アンプ HI-FI クラスDオーディオ デジタルアンプ
この中華アンプというもの、価格帯が1万円を超えると明らかにゆとりが出てきます。
中華オーディオでShanlingの次を狙うメーカー
中国メーカーでオリジナルブランドが信用できて現実に商売も長いのはShanlingですが、このSMSLは音質での知名度をあげたいらしい。
いわゆる安さだけでなく、珍しくハイエンドモデルにも継続チャレンジしている。
DACでは早くからESS9038PROを採用し、同国のメーカーには珍しく30万円のDACをリリースする面白いメーカーです。
ヤマハ ワイヤレスストリーミングアンプ WXA-50
もしゆとりがおありなら、選ぶべきはこれです。全部入っている、特に
Airplay標準装備
つまりハイレゾ音楽配信対応
ピュアオーディオ向けでワイヤレスのネットワークプレーヤー機能が一通り対応するものは、ありそうで少ないのです。特にAirplay。
発売年次は数年前ながら、音も極めてきちんとしています。同様のコンセプト(AVアンプ・レシーバー)はDENON・Marantz・同じYAMAHAにもありますが、これはコンパクト。
2016年の発売ですが極めて使えるオーディオコンポーネントです。
セパレートアンプは正直感心しない音ですが、YAMAHAのローエンドはよろしい。
実はこの傾向は昔からです。
なおどこかで聴かれるとご納得と思いますが、この機種からグレードアップする場合、10万円のプリメインアンプは機種によってはあまりUP感が感じられなくてがっかりされるかもしれません。
とまあヘッドホンも使っているし、B&Wの生産体制も調べてみたら上記4種が余計に気になってしまった次第。
本当はSonusfaberのファンなのにねえ。