東京インターナショナルオーディオショウが開催されました。愛好家にとって国内最大のイベント。
先に申し上げますと2年ぶりのためか一部の参加メーカーは意気込みはハンパじゃございませんでした。ポータブルオーディオがハイエンド化した影響でピュアオーディオも変わってきています。
ボリューム多のため数回に分けてご紹介を。今回は2021年ショウの未体験のかた向けに魅力ポイント、そして私的ハイライトを簡単に。
東京インターナショナルオーディオショウとは・「無料の超高級スポーツカー体験」フェスと同じ
2021年11月5日(金)より7日(日)の3日間、昨年はコロナ流行のため開催中止でありました。
本年は事前登録による入場者制限と換気など感染防止対応の上開催。
各ブースの入室人数管理のためかえって例年よりも聴くに落ち着いた環境となった。
ところで東京インターナショナルオーディオショウとはそもそもいかなるものでありましょうや。
初心者、または音楽好きでもピュアオーディオにご興味ないかたにとっては謎のフェスであります。
うざい・やばいといわれるオーディオマニアが集う、アイドルイベントみたいなものか。
交霊会のごときローカルルールのために、一般人が場違い感に怯える不気味なイベントか。
発売されている全てのフェラーリ・ポルシェ(最低でもNSX・GT-R)を集めた無料試乗会みたいなもの
このあたり、きちんとお伝え申し上げたい。このイベントは、
- 3日間にわたり東京国際フォーラム(有楽町)の半分以上を使い
- 無料で開催される
- 超高級・スーパーハイエンドオーディオの体験会
です。
主語をオーディオではなく「超高級スポーツカー」としてみてください。
有楽町の駅前・東京国際フォーラムにフェラーリ・ポルシェほか輸入・販売中のカタログモデルを全部集める
国産はGT-R・NSXクラス、最低でもレクサスから
そいつで試乗・走行会。
これは誇張ではありません、今回スピーカーだけで1,000万を超えるものはゴロゴロしてます。
アンプ・プレーヤーを合わせたら3,000万円ぐらいのシステムは簡単に(脳内で)組み合わせられる。
実際にそういうものを組み合わせて鳴らしています。
場所も国際フォーラム、あのガラスの巨大な温室みたいな建物の半分以上でハイエンドオーディオシステムが鳴っているのです。
実際落ち着いた雰囲気、マニアが騒ぐような光景は皆無・絶無です。
ロケーションは洒落てるし、内部は超高級オーディオであふれかえっている。
しかも入場も試聴も完全フリー、実際お金を払う機会は自販機か食事の時しかありません。
オーディオに関心がなくとも、音楽を聴く趣味がおありなら楽しめます。
しばらく見たら丸の内に出掛けてもよし。
でもことによると一日中いてしまうイベントであります。
地方からこのためだけに東京にいらっしゃるかたがおられるというところでご理解いただけるかと。
「初心者歓迎」のイベント・かつてオーディオが一番間違えていた、(そのため今一番誤解されている)ところ
ロケーションは快適そのもの、騒ぐマニアックは皆無(私語すらしない)。
そしてなにより、音楽を奏でるのは
- 最高で数千万円(安くても数百万円)のオーディオシステム
- 曲は出展社の担当が「これが一番」と意気込むソース
ちょっと誤解されているところがありますが、出展ブースの担当者は初心者大歓迎です。
理由は2つ
- ピュアオーディオ好きを増やしたい(マニアが減って仕事も減った)
- 「仕事で案内している」担当者が減った
つまり「好き者」が仲間を増やしたくてやっているイベントです。
いまどきオーディオのメーカーや輸入代理店をやっていること自体、もうお金とは別の動機があることがお分かりかと。
その人たちが、イベント会場という制限の多い条件で少しでもいい音を聴かせようと頑張ります。
わずかな搬入時間の間にセッティングを詰め、短時間で「伝わる」こだわりのソフトを持ち込み、サビの部分を次々に掛けていく。
20年前と一番違うのは、説明が面倒臭そうな担当(会社の指示で来ている系)とか一見さんお断りの雰囲気はないってことです。
これは出展側が変化したのです、以前は仕事で来ている系が結構いました。
今は違いますがアタシもそれが嫌で会場でいっさい会話しない時期がありました。当然滞在時間は短い。
商談会ってわけでもないのに若いってだけで態度が見るからに変わるんですもん。
怪我の功名とでもいうのでしょう、不況のおかげでそういうメーカー・代理店や担当はほぼ消えました。
今は「オーディオ好きを増やしたい」という面々がこのイベントを支えている。
オーディオショップは社歴が古いほど「一見さんお断り」・ショウの後は訪問しないほうが賢明
なお念の為、残念ながら売り手たる販売店は老舗ほどその雰囲気を今でも色濃く残しています。
(比較的新しいショップは違う)。
オーディオショウの後、気分がアガったからといって直後のショップ訪問はおやめになったほうがよろしい。
せっかくのいい気分が台無しになる。
繰り返しますが全部じゃない、ショップにもよります。レアながらさらに楽しくなれるところもある。
ただ高確率で盛り下がる。
それだけ出展社の熱気が高い、
「このソフト(CD・アナログ・SACD)のここの部分を聴いて、すごくいいから」
なんてプレゼン、なかなか聞けないもんです。
ハネたら真っ直ぐ丸の内の洒落たショップか銀座に繰り出すのが楽しい一日の締めくくりであります。
マニアの暗黙ローカルルールはある・「静かに聴く」「製品に触らない」それだけ
なおこのカテゴリ独特のローカルルールはあります。
- 展示品に触らない(翌年の開催に影響する)
- 携帯は鳴らさない
- カメラのフラッシュ禁止
- 私語はブースの外、通路のみ
なお上記についてなんの注意書きもありませんが、やる人は皆無です。
本当に見たことがない。
基本的にオーディオマニアはつつましいのです。
見せてあげたい気持ちもありながら、子供づれもいません。展示品があまりにも高額すぎるのでちょっと厳しいでしょう。
おお、忘れるところでした。
「この曲掛けて」はなしです、イベント進行ができなくなるので。
まあこのぐらいならば内輪のルールとしてはいいんじゃないでしょうか。
よくわかりませんけど他のジャンルのイベントは初心者にわからないルールがいっぱいあるかと。
数百万、まして1,000万円のオーディオを聴く意味はあるのか
ここでよくあるお話を。
数百万、いわんや1,000万円を超えるオーディオなんて現実性がない
聴いても意味がない
買えるわけない、下手をすれば家より高い。
しかも最近高額になっています(メインマーケットの北米はずっと物価が上がってますし)。
クルマの1,000万よりオーディオの1,000万のほうが高額
高いという意味ではクルマの数百万や家の数千万円よりオーディオの1,000万のほうが高額だと思います。
それでマニアの中には本気で悩んだり怒ったりするかたもおられる。
お気持ちはわかる、否定はしません。
ただ上記の「主語をクルマにしてみる」をここでも当てはめてください。
- 3,600万円のベントレーフライングスパー
- 007(つまりダニエルクレイグ)が乗ったアストンマーティンDB10、そしてDBS
- フェラーリ458
- ポルシェ911そしてパナメーラ(アタシはパナメーラ派であります)
これがGT-RやNSXだっていい。雑誌やウェブを見ているとき、楽しくなりませんか。
まして実車をリアルで観られたら。
超ハイエンドオーディオはエンターテイメント・ライブと同じ
アタシとしては無料のライブイベントや映画と思っています。
研ぎ澄まされた性能とデザイン。
どうしようもなく伝わってくる究極感、そして優雅さは前知識がなくとも伝わる。
「ホワーっ」とします。
正直、クルマのファンは大人だなと思います。軽自動車のオーナーとレクサスのオーナーが普通に会話している。
フェラーリを見て浮世離れしていてけしからんとか言ってる人を聞いたことがありません。
クルマが好きなのにポルシェに乗れないから、マイカーに乗るときいつも不幸を感じているという方もいない。
なおアタシがあれらの実車に縁遠いのは、まるっきりお金がないのとそもそも触れる場所がないから。
アタシがコーンズに行ったら追い出されます、あそこでカタログもらう方法っていまだにわからない。
たぶん身なり・風体で「こいつは1,000円落としても激しく落ち込むやつだ」と見抜かれてしまいます。
でも楽しい、本で見ていてすら限りなくたのしい。
それでいいんじゃないでしょうか、そういうエンターテイメントです。
初心者または音楽ファンの方にお勧めする理由であります。
業務スーパー専門のアタシが買えるようなものしかなかったら世の中寂しい
まして東京インターナショナルオーディオショウは出展者から拒否されるどころか歓迎される。
「音を聴いていってくれ」
「この手のかかった造りを見てくれ」
「カタログ、どうぞどうぞ」
家に帰ってそれらを思い出し、カタログをみながら音楽を聴く。
これが当日の戦利品、最低でも100万円のもんしか載ってないカタログばかり。
どんだけ重かったことか、重みの分だけ長く楽しめます。
こういうのも地味に嬉しいかな、我ながらこまめっすね。いや、貼る趣味はないんですが。
東京インターナショナルオーディオショウの後、半月ぐらいは至福のときです。
繰り返しますがこれはエンターテイメント
そりゃアタシだって欲しいですよ、YGとか801D4とかね。
現実感がないですけど。
いくらアルバムを買おうがライブに行こうが、好きなアーティストが自宅に来ることは絶対ないようなものです。
それにですねえ、業務スーパーと吉牛が専門のアタシが買えるものだけの世の中になったら、こりゃ寂しいですもん。
「季刊 Stereosound」が5分の1ぐらいの厚みになるんでしょ。
値段が500円になったってそりゃつまんない。
私的総括・2021年ショウのベストプレゼンテーション(3つ)
未体験の方々へのアピールを終えたところでアタシ主観のベストポイントを簡単にご案内させていただきます。
詳細は次回以降で、画像つきにて。
関係者じゃないぶん、個人のブログはこういうところ気が楽です。
- アキュフェーズ若手エンジニアたちによるパワフルな新製品展開
- ソウルノート加藤秀樹氏の「ソウルフル」なプレゼンテーション
- MARTENの音の良さと代理店ゼファンの熱っぽさ
B&Wを入れなかったのは悪いからではありません、文句なくハイパフォーマンス。
別途述べさせて頂きますが、不安定だったB&Wの経営状態と短期間のうちに起こった親会社の破産・買収の影響も少なかったようで明らかなアップグレードを遂げていました。
パッションを感じるプレゼンが多かった
ただ今回はフェスであります。製品だけでなく紹介も含めてトータルで3つ選べと言われたら、上記3ブランドは間違いなくベストプレゼンテーションでした。
「これを聴いてほしい」
熱意が共通していました。
その他もいいものがたくさんあった。別稿でご紹介を。
加藤秀樹プロデュース『Soul Note(ソウルノート)』は2020年代を象徴するブランドになった
上記はタイトルのため敬称略をご容赦いただきたい。
これだけは申し上げたかった。
ソウルノートは2016年以降のオーディオを語る上で欠かせない存在になります。特に音楽好きのオーディオファイルにとって。
スキルも熱意もある方がずっと押し殺していた思いを解き放ったような音、造り手の「人となり」であります。
繰り返しますが
「このコンポーネントでリアルな音楽を感じて欲しい」
来た以上は感動していってくれという出展者の熱気
これが他の高級品の展示イベントと東京インターナショナルオーディオショウの一番の違いです。