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アキュフェーズはカスタム部品嫌い・音と超長期メンテナンスのため

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「エンジニアの理想を追求している」「やりがいがある」

東京インターナショナルオーディオショウでアキュフェーズのエンジニアと話して伝わってくる。しかし同社には制約があります、しかも大きな制約です。

同社の設計をよく見るかたはお分かりと思いますがこの会社、基本的にカスタムの電子部品を使いません。

おかしなカスタム電子部品は使わない・数年で消えるものは眼中にない

これは実際に同社から引き合いを受けたメーカーならばよく知っていることです。

カスタム部品を極力避け、高品位の汎用部品を探す。それこそ八方手を尽くして。

数年しか供給できない部品・修理できない機構は使わない

あの音はほぼ「高品位グレードの汎用パーツ」で作られています。ファンなので言いたくありませんが、ごく普通のパーツも入っている。

なぜか

カスタム電子部品につきものの供給性の悪さ

そして製造品質の不安定さを嫌うのです。

アタシも(仕方なく)コンデンサー等でカスタムを使いましたが、常に汎用品と同じ品質というのは正直難しい。

少量生産ならば尚更です。
同じラインで継続して作り続ける標準品よりも警戒して使います。

始末が悪いのは時間が経って出る不具合があること。

「長期メンテナンスと耐久性」・世界的に珍しいデザインルール

一方この会社の設計がユニークなのは

  1. 長期メンテナンスを前提とする
  2. 耐久性(つまり通常のを超える熱設計)

を高音質と同等の要素としていることです。

アキュフェーズは「修理できない高音質化」をやらない

カスタム電子部品を採用しない方針ともつながりますが、同社では修理できない仕様は設計上採用されません。
同社の「修理」とは

限りなく製造直後の状態に戻すこと

です。

設計とメンテナンスが密接に連絡し、修理事例が増えるほど社内のデザインルールも厳しくなる。

パーツへ負荷をかける設計を嫌う(巷説では定格の30%程度)

まずパーツの仕様上限よりもはるかに下の条件で使うこと。
巷では「能力の30%」などと言われるほどです。

それだけ電気を流さない。「熱を出さない」ように。
アキュフェーズの熱設計に対する慎重さは大手電機の基準よりも上です。

内部発熱は機器に深刻な劣化をもたらしますが、アキュフェーズとしてはユーザーが使う間の経時変化を最小限にしたいそうです

「熱のあるところノイズあり」

結果として同社の高SNなサウンドを実現している要素のひとつでもあります。

パーツ採用、そして配置は「その後の調達可能性」を予測

カスタム部品の採用とも関連しますが、部品の「形状」も標準仕様にこだわる。

特殊な形状、例えばコンデンサーやレギュレーターなど細かい部品ほど外径サイズや接続端子の幅など数十年後に同じものが調達できない場合、プリント基板に再実装ができません。

もちろん実装可能な形状ならば良し

ではなく音質評価をした上でメンテナンス部品として採用するわけです。

これはここ数年多くの製造業で問題となっていることでもあります。

現在製造中止となる部品が増えていますが、たった0.5mmの違いで基板に載らず、新規でプリント基板を起こすハメになっているメーカーが(アタシを含め)たくさんある。

これは量産だから(それでも四苦八苦で)やれることで、オーディオの修理で基板は起こせません。
つまりこの要素を考慮しない設計は「修理不可能」でおしまいです。

修理・メンテナンス時に検証・分解ができない表面実装は最小限

当然ながら高密度の表面実装はあまり使われていません。デジタル回路など技術的に必要不可欠な部分に、それも最小限です。

故障部分の正確な判定が困難であり、しかも基板から部品を脱着することは極めて難しいから。

なお表面実装基板そのものは音はもちろんですが量産コストの点でも数が多いほどメリットがあり、現にDAP(ポータブルオーディオプレーヤー)で多用されております。
しかし同社ではあまり使われない。

ハイエンドDAPは6〜7年で修理サポート終了・アキュフェーズは数十年

上記の結果としてアキュフェーズは数十年のメンテナンスサービスを可能にします。
買うときは素晴らしいが、しばらくしたら「修理不可」、これを絶対にやらない。

部品と設計の両面で後の修理を考えたものとしている、根本からして他社とはレベルが全く違うのです。

この会社の有名なトピックとして

  • 大量の部品ストック
  • 真空パックで保管

がありますが、あれは同社サポート能力のごく一部。部品ストックだけで数十年のサポートは不可能です。

電解コンデンサーなどは真空パックをしても劣化しますから保ちません。

だから設計段階から「数十年後の部品・回路の状況」について仮説をたて、検証する。

納得がいくまで検討した上で具体的な設計に入る。

これほどのサポート体制は世界でも稀です。
オーディオ以外のメーカーでも聞いたことがありません。

現実に50万円ぐらいのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)が6年で完全に修理不可能という事態を思えば、アキュフェーズの製品価格がいかに「割安」かお分かりかと。

なおB&Wはドル・ポンドベースと円ベースでこれだけの差があります、アキュフェーズも海外では高い。同社製品を「現地価格」「現地サービス」で買えることは日本に生まれた幸運というもの。

長期修理の難しさ・「C-290V」「DP-950」の修理不可問題

しかしこれだけ配慮しても不幸な例外は生じます。最近の例でいえば

  • プリアンプC-290Vのヴォリューム欠品
  • SACDトランスポート「DP-950」の光ピックアップ欠品

これらはアキュフェーズがメンテナンスしようとした時、「同じ部品のマーケット」そのものが消滅していた例です。

つまりその部品のつかいみちが世の中からなくなっていた。こればかりは予想できなかったでしょう。

かつてアナログヴォリュームは他社でも高品位なものが出ていました。
しかし松下電機が同部品をディスコンにした時期、高品質ヴォリューム部品そのものがマーケットを失っており、メーカーもありませんでした。

SACDの衰退とハイレゾは予測できなかった・SONYが縮小すると思わなかった

アキュフェーズにとってSACDはもっと意外なことだったと思います。
SONYがあれだけ資金を費やし、東芝を退けたフォーマットがこうも普及しないとは思えませんでした。

代わりにハイレゾです。技術的に上位フォーマットです。

恐らくCDより前にSACDは再生装置が消えると思います。

CDの代わりとして広く普及すると思われていましたが現実にはそうならず、SONYの作っていた高性能光ピックアップモジュールと互換性のある新規ドライブは作られませんでした。
市場が存在しないため似たパーツを作るメーカーも現れなかった。

SCD-1がメンテナンスできないと聞いたときは驚きでした、SONYが部品供給を断念することは余程の状況だからです

そのため同じピックアップを使っていたアキュフェーズにもメンテナンスを求めるユーザーの依頼が殺到したとか。

C-290VとDP-950、もっといえばSONYの「SCD-1」、これは現在でも通用する音の良さを評価される名品であります。

しかしいずれの機種もオークションでは「地雷案件」と化した。
部品取りの個体でも持たない限り維持できないとされます。

これだけ配慮してもこの不幸が起きる。
繰り返しますがアキュフェーズを超える長期メンテナンスなど他社では聞いたことがありません。

最近ものを買う前にいろいろ考えてしまうところであります。

「カスタム電子部品は使わない」が技術レベルを高めた

長期メンテナンスを可能にする設計は、当然ながら他社に対する不利な条件になります。

いいと思っても使えない部品・回路がたくさんあるから。
その制限つきで世界水準の音を実現している。これは大変な設計能力です。

ある関係者からこの点について聞いたことがあります。
あまりにも印象的なので随分前のことですがはっきり覚えている。
そのまま載せます。

『いい音の設計は簡単なんですよ。そんなことより使って頂いている間の劣化を極力抑えること(発熱対策や安定性)。

そして数十年経って修理のご依頼を頂いたとき同じ音を再現できる余地を残した設計、これが一番難しい』。

本物のトッププロです。

競合他社との競争においては、まるで鉄ゲタを履いてフルマラソンに挑むようなものです。
しかし設計上のこの制約の先に今の音がある。

なるほど今ともなってみれば他社が追いつけなくなるわけで、これがアキュフェーズの真骨長であります。

修理サービス・トッププロのスキルと品質

なおアタシ自身メンテナンスはメーカー・サードパーティの修理業者に結構お世話になっているほうですが、アキュフェーズは修理スキル自体がおそらく世界水準です。

  1. 品質管理とトラブル対応・修理
  2. そして製品開発部門への的確かつ『かわいがり』付きフィードバック

他の業界は存じませんが、製造業ではこの2点だけは「古参兵」の出番であります。
経験がないと無理です。

机上の思いつきだけではない現実性を製品に入れる。

修理スキルは一流・内部を知り尽くしたワーク

本当に中身は新品というレベルで治してくれます。
M-100というモノラルパワーアンプを出したことがあるのですが、完璧な状態で戻ってきました。

また完了後の説明も実に丁寧かつ合理的、このあたりがわかってらっしゃる。

電子部品メーカーなんぞにいるとどうしてもクドい意地悪な質問になるものですが、「説明の見本」でした。

なお、これはあまり詳細を記載できないのですが、

アタシら部品メーカーでもためらうような精度が必要となるハンドワークもやってのける。

ということを後に知りました。
部品メーカーでもおいそれとやりたがらない、解析専門の製造業者にカネを払って依頼するレベルのものとだけ申し上げます。

アキュフェーズのサービスでわかる修理専門業者や「メンテナンス済み中古」の注意点

アキュフェーズのメンテナンスご紹介から皆様にお伝えしたいことがあります。

同社では、修理するとき左右チャンネルの修理状態を極力同じにもっていこうとする。
具体的には

右側の部品を交換したら、問題がなくとも左も同じ部分に同じ作業を施す
特にアンプでは必須です、左右で明確に音が変わるから。

そんなのは当然だろうと思われるかと。しかし実は以外にやらないところが多いのです。

メーカーだけでなくハイレベルなサービスをうたう修理業者でも、注意していないとこの作業をしないまま修理完了で戻ってくる。

理由は簡単

面倒、またはそもそもハンダ付けができるぐらいの手技しかない業者だから。
音は出ているわけで「依頼は修理なんだから壊れていなければ治す必要はない」というわけです。

洗濯機かエアコンの修理でもしてりゃいい連中です。

最近は「修理専門業」「メンテナンス済み中古」が増えましたが本来こんなに業者が乱立するほどスキルを持った人はいない。

動けばよい白物家電と違い、オーディオの修理は難しいのです。

アタシ自身ある海外製アンプで修理を依頼したことが何度かありますが、修理明細を調べたらやってなかった。当然やり直してもらいました。

値段のことを云やみっともないですが、総額で40万近い修理でこれです。

ステレオアンプもですが、モノラルの場合は特に高確率でとぼけるので注意してください。
無論アキュフェーズにこんなことはありません、明らかな根拠のもとに修理しています。

とまあ東京インターナショナルオーディオショウのデモご紹介から贔屓の贔屓倒しになってしまいました。

でもまあこういう会社が国内にあって得体の知れないプレミアム無しで買えるとはありがたいものです。

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