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ハイレゾのいまアシダヴォックスST-90-05の不思議

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ST-90-05、何度見ても現実と思えない。Amazonで売っているのをみると幻覚でも見ているんじゃないかとすら。

ハイレゾの時代でありますよ

まぎれもなく放送や映画向けの音が最高だった時代の良さそのままですが、その造りを何十年も維持し続けてきたことは驚異です。

商売柄とても成り立ちを知りたくなる、なるほど現代では珍しい「Made in Japan」でありました。

レトロだけでない・濃厚な「ボーカル」でハイレゾ時代へ

それであの値段、もちろん安すぎるんですが存在そのものにちょっと揺さぶられすぎてめまいがしています。

プロの「ボーカル専用機」・クラシックなハイエンドオーディオの伝統技能

最初に音のことを。グラグラきているのはこれが

人の声を正確に密度高く伝えるためのヘッドホン(ST-90)ベース

そこに低音と高音を伸ばしたのがST-90-05

だということです。

基本設計はプロクオリティの『人の声』再生

時々ある「ボーカルを強調させた」チューニングで喜ばせるものとは根本から違います。

基本のアプローチが「中域重視」

全然現代ではない、ある意味超古典的。
最初は電話と軍用通信に始まり、その後すぐ映画、そして放送。

超名門のオーディオブランドはみんなこのどれか(または全部)を通っています。

たとえばビンテージオーディオの好事家、つまり家一軒分の資金をオーディオに投じる人たちは中域が一番大事だと知っています。

「管球王国」なんて会話の中心がいつもそこです。

アシダボックス(ASHIDAVOX)は昔かたぎ

アシダ音響が創業した大正13年(1924年)は、映画そして放送機器が最先端技術だった時代でした。
通信技術と同義だったからです。

音響と通信は最先端・アシダボックス創成期

通信・音響は今よりも更に最先端、まさしくアシダボックスが成立した頃です。
軍用で発展したわけですが、初期から以下3点が大目標でした。

  1. クオリティの高い音声(情報を明瞭に伝えられるかどうか)
  2. さまざまな環境でも安定して動作・再生できる
  3. ハードな環境でも壊れない

実は3つとも切り離せない関係があります。ひとつでも欠けると「本質的なハイクオリティ」は成立しない。

なお残念ながら民生機器、特にデジタル製品は技術そのものの寿命が短いため、これらの条件を満たさないまま製品として販売されているものがあります。

『ウェスタンエレクトリック・ALTEC・クラングフィルム』・映画、放送向けが最先端の時代

そして戦後同社が活動を再開した頃、アメリカのスピーカーは同国の通信分野における最先端カテゴリーとして世界で最も進んでいました。

ウェスタンエレクトリック(WE)とRCA、そしてALTEC(JBL)
次いでドイツはクラングフィルム(今のシーメンス)

これらが最高・最強。

歴史的にみても一番優れたエンジニアと一番いい材料を使って作られていたからです。

日本でいえばNHKやNTT向けがややそれに近い。
放送向け仕様を民生化してきたダイヤトーンが長らく技術的に国内最高といわれていた理由であります。

ビンテージの名機に共通するのは『ボーカル』・中域の再現性

なおアルテックとかJBL・EV(エレクトロボイス)は映画がルーツですが、大元はウェスタンエレクトリック(WE)です。
WEの優れた技術をモダンにリファインして知名度を上げたんですが、評価を決定的にしたポイントは共通しております。

  • 中域、つまり人の声・ヴォーカル

放送や通信(軍用を含めて)そして映画向けですからハイクオリティで人の声が聴こえることが大前提でした。

蛇足ながらWEは今でも凄い価値がある。「凄い」というのは本当に大金持ちじゃないと買えないぐらい高額のビンテージだということです。

これらの機器が放つ中域(特に人の声)のリアルさは格別。

今でも熱狂的な愛好家が多数存在します。
現代のハイエンドですらこの時代の名作スピーカーを超えて聴き手を納得させることは簡単ではありません。

リアルに人の声を再生する中域に高音と低音を加えて映画館や放送用のスピーカーを作った。

現在JBLのParagon(パラゴン)やHARTSFIELD(ハーツフィールド)の初期モノ、これらのミントコンディションが700万ぐらいするのは希少価値だけじゃございません。

それでしか出せない音があるからです。

完成された中域をワイドレンジ化・アシダのサウンドデザイン

超高域がうたい文句のハイレゾ時代であります。

最初からワイドレンジで作るのが現代流ですが

最初に「中域を完成させて」そこに高品位の高音と低音をくっつけるのが古典派の考えるワイドレンジ

なぜかわかりませんが、古典派のやり方は音に厚みが出る。

つまり完成度の高い中域に高音と低音を足してワイドレンジを作る、アシダ音響は昔かたぎであります。

ただ条件があって中域の再現性がハイレベルでない場合、上下を足してもよくならない。

ここにアシダヴォックスの歴史が効いてきます。

アシダヴォックス6P-HF1・「ロクハン」神話

その昔6P-HF1というスピーカーユニットがありました(1959年)。

同社最初のヘッドホンST-1と同時期にリリースされたスピーカーユニットで、現在同社イヤホンのEA-HF1のデザインモチーフとなっているモデル。

6P-HF1・舶来品信仰が最高潮の時代に音で評価された

コーンの口径が16cm(6.5インチ)のものです。

アタシらのおじいさん世代では16cm口径のフルレンジユニットは「ロクハン」という言い方で、いい音の代名詞だったとか。

上記の海外勢が圧倒的に支持された時代に、6P-HF1は珍しく評価が高かった。

超軽量の振動板を

必要最小限かつ効率のいいアルニコマグネットで鳴らす

というシンプルなコンセプト。

ST-90-05と同じであります。

「ハイコンプライアンス振動板」「1テスラの強力マグネット」

まるでライトウェイトスポーツカーのようです。

軽量な振動板と強力な磁気回路・珍しいほど基本に忠実なST-90-05

とにかく基本に極めて忠実、無駄な設計はしない。

  • 軽量な振動板と強力な磁気回路の組み合わせ
  • 見当外れの物量投入や実績のない新素材の採用はしない
  • 無理な設計を避け、意味のない高級化もしない

音に定評のあるメーカーの伝統技能ってだいたいこういうものです
アシダ音響には設計センスがあったとしかいえない。

なお6P-HF1は「MRコーン」と言っていたそうですが、光を当てると向こうが見えるぐらい薄いペーパーコーンだったらしい、超軽量です。

これが実に反応がよくて低音も出てたとか。

繰り返しますが海外製が圧倒的に優れていた時代に評価が高かった、当時では稀なことです。
ハイレゾの今聴いてみたいもんです。

・・・と同じことを考える人はいるもので、知っていて狙う人も結構いる。今6P-HF1のビンテージはかなり強気の相場です。

英国プロダクツに似て、何十年も作り続ける

で、現代のアシダヴォックスST-90-05です。
めまいがしたのは何十年も同じ仕様の部品で作っていることです。

つまり当時のよさを「再現し続けて」いる。

1970年代のリアルプロ仕様が現代に作られ続けている

同じものをつくるために設備を新しくし、協力会社を開拓しつづけている。
しかも(いってはなんですが)国内組み立て。

アタクシ的にはほとんど恐怖に近い、あんなつくりかたは今絶対無理ですから。

日本の製造業で「同じものをウン十年」は(普通は)不可能

自分の経験として、

産業機器向けなどで、30年前以上前の部品を継続してお作りしなければならない必要がある場合

メーカー関係者としてはなるべく案件から遠くへ逃げようと努力します

本当に申し訳ありません。

本当に我ながらみっともないですけれど、そんなの無理なんです

ネジやバネひとつとっても、

「製造していた会社は15年ぐらい前に廃業しました、設備はもちろん図面もありません」
「後継者もいないし、もうやめる」
「当時の材料は作っていません。どうしても必要なら再生産してあげるから、最小ロット(軽く10年分)で買ってください

みたいな話ばかりです。

ところが原型のST-90をはじめとしてアシダ音響さんは全てのモデルでずーっとそれをやり続けた。

昭和40年代以来のグレーハウジング・金型は何回作り直したのか

たとえばあのおしゃれレトロなハウジング
金型は更新(使いつぶして再度金型を作り直す)を何回してきたんでしょう。

すごいなと思うのは、同じものを再現し続けたパワー。

アタシは英国モノが大好きですが、英国人が放つあの執念がこれに近い。

顧客第一の点では、頑固でふてぶてしい英国人よりアシダヴォックスがはるかに上ですが。

部品メーカーがなくなると新規開拓して作る・得体の知れないパワー

なおこういうことをなさっておられる以上、アシダ音響さんでは協力会社(外注先)が代替わりし続けている部品がたくさんあると思います。

どんなメーカーでも全てのパーツを自社で作れるわけではない。
普通の会社では部品を調達しきれなくなったらディスコン(生産終了)にする。

図面と同じでありさえすればいい普通の家電ですらディスコンが普通です。
ましてや「耳で聴いて同じ」パーツの再現は更に難しい

『Made in Japan』を継続・バブルも中国製造もマルチメディアもIoTも関係なく

しかしこの会社、何を思ったか新規に調達先を開拓して同じものを作り続けた、しかも日本国内で。

書けば1行の話ですが、ちょっと信じられない話です。
この30年間を思い出してください。

あの狂乱のバブル景気と、その後の長きにわたる経済混乱が続いた間、ずっと「国産のいいヘッドホンを作り続ける」ことにのみ集中してきた。

今世間はIoTですけれど、前はマルチメディアとかユビキタスでした。これをやらないじゃない会社は将来性ゼロとか。
今ほぼ消えましたけどどの会社の名刺も「マルチメディア事業部」だった時期が本当にあります。

それに生産地のこと。
国内生産なんて自殺行為で、さっさと完全終了して中国へ全面移行しない会社は将来性がないアウトとか、とにかく大騒ぎでした。知る限り20年間は。

でもアシダ音響は日経に書いてあったこととはまるで反対をやっていたわけです。
そうでなければST-90-05は今存在しません。

最初に「何度見ても現実と思えない」とした理由です。

堅牢の基準・「生放送・ライブでノントラブル」前提

ともかく問題が起こるたびに新たな外注先を探すか新しく同じものを作って継続してきたわけです。

しかもその時の基準はカッコが似ていればいい、ではなくて

仕様書に書ききれないような

◉ 人の声・中域の再現性

◉ プロユースが求める完璧な堅牢さ・耐久性

を前提としてきた。

材料や製法が変わると音は簡単に変わります。

図面通りならあとはなんでもいいというやり方なら、今ST-90-05をはじめとしたモデルはとっくに消えているでしょう。

社会インフラ向けは「途中で故障」「売りっぱなし」が許されない

PAのプロの方はよくご存知と思いますが、本番直前に機材の不調というのは実際あるもので、むろん忌み嫌われます。

ライブ放送ともなると大事故であります。そのために信頼性を求める。

現在のアシダ音響の事業をみたら同時通訳向け会議システムや警察の通信など、本当にリアルタイムで安定した再生を必要とする用途ばかり。

社会インフラに近い業種の顧客ですから売りっぱなしも許されない。

しかしこの手の「信頼性」は設計だけでは実現できないのです、

良質の材料と丁寧な組み立て、そして長期の「カイゼン」が必須。

「耐久性」なんてうっかりいえない時代の完璧な信頼性

公式ウェブサイトには「当社の強み」というページがあって

『堅牢性に優れた確かな品質』

と堂々書かれています。
ハイレゾ対応とか一昔前のデジタルサウンド対応じゃありません。
そちらのほうが書くにもずっとラクです。

「堅牢性」「確かな品質」とはこれはまた。

高耐久・長寿命という言葉はうっかり使えない

なおアタシも会社のPR資料は山ほどつくってきましたが、

  • 高耐久
  • 長寿命

は一番使えない言葉です、怒られます。「壊れて訴えられたらどうすんだよ」と。

特にプロ・業務用ともなれば民生家電の比ではない、もっと用心深くなります。

年々造りがコストダウンでいく一方で、壊れたら修理代金どころか業務停止の迷惑料を取られる。
現実に経験したことがあります。

アシダ音響は「高耐久」「堅牢性」を看板にしている・品質が違う

これは不思議なことですが、高耐久とか長寿命って社内で合言葉にしていないとなぜか品質が上がらなくなるんです。

5年ぐらいすると「なんだか最近おかしなところが壊れるよな」って、本当に不思議ですが。

アシダ音響さんは逆です、そのレベルではない。

「堅牢性」

なるほどあの造りと部品ひとつも変えない粘り。

業務用途、特に放送業界で信用されるはずです。

ST-90-05は東北アシダ音響で製造している(宮城県)

ST-90-05は日本製、アシダ音響の会社情報によれば宮城県の東北アシダ音響で製造していることになります、これも気に入ったところです。

東北地方(宮城県)は半端を許さない「製造業」気質

宮城県とか福島県って電子部品や電機機器製造でいい仕事をしてくださる土地です。

品質だけでなく納期もきっちりしないと気が済まない


本物の製造業の気質がある土地。

こちらも真剣になります、なお口先だけの説明ではまず信用してもらえない土地柄です。

自分の仕事に責任を持つ、そして納得のいくレベルを目指す人たち。半端な説明では納得してもらえませんからこちらもかなり緊張します。
そういう土地柄です。

Classe(B&W)も福島ならば品質が上がるはず。カナダ時代より緻密

昨年Bowers and Wilkins(B&W)を買収したSound United社はClasseのハイエンドラインを福島県で作ること(DENON白河)を決定しました。

個人的にはカナダや珠海(中国)で作っていたころより製造品質は上がるだろうと思っています。
というより比較にならないほど福島のほうが上です。

売って終わりのハイレゾ時代に信じられない存在・SONY 900STとは違う意味で

プロ用として長く作られ続けているヘッドホン代表にSONY MDR-CD900STがありますが、あれですら1989年発売です。

CDフォーマットがもうあった頃の企画、価格もまったくちがう(¥18,000)。

長期供給・修理サポートは「部品の見積すら断られる」のが普通

音質に対する値段と思われていますが、長期の供給と修理サポート前提は他の製造業でも倍以上のコストが普通です。

長期供給はほとんどが断られる・または「お断り価格」

協力会社さんに頭を下げなきゃいけないことが多い。
しかも条件を聞いたあと見積もりをくれない会社がほとんど。

仮に見積もりが出ても、単価は市場相場の数倍が普通。
いわゆる「お断り価格」ってやつです。

申し訳ありません、アタシもそういうお返事をたくさんしました。

みんなやりたくないんですよ、どこかで首絞まっちゃうから。
気持ちはあってもお約束ができないのです。

SONY MDR-CD900STの事実上後継機種といわれるM1STが¥31,500です。

好きで高くしているのではなくてCD900STと同じことをしようとしたらそうならざるを得ない。

ST-90-05のあの価格は造りとかけ離れている(バーゲンプライス)

その現代にST-90-05のあの値段、本質に対していかに安いか察せられます。

なお現物を調べましたが、とにかく材料と作りが6,000円台のものではない。
もっといえばもしアタクシが出入り業者だったら「もう勘弁してください」という内容です。

ていねいさの代償・本業のOEM・ODM事業は海外との厳しい競争

アシダ音響のOEM・ODM事業は海外との厳しい競争にさらされているとありました。

ていねいさの代償です。

よくある話です、身につまされます。

中国の皆さんの名誉のために申し上げると、今彼の地の製造レベルは本当に良くなりました。
20年ぐらい前のイメージのまま粗悪品と思っているのは完全な間違いと申し上げます。

B&Wがほとんどの製品を中国(珠海)で作る時代です。

ただヘッドホン・イヤホンのジャンルにおいては、目に見えない品質とサービスを維持し続けるアシダヴォックスは出来栄えが全くちがう。

B&WのP9 signatureでさえ初期ロットはおかしな壊れかたをしました。

アシダ音響さんの製品は間違いなくいいものです。

新型iPad mini6やiPhone13になじむクラシカル・「無印」はイヤホンジャックあり

ハイレゾのようなハイサンプリングのデジタル音源をST-90-05で聴く

またはiPad mini 6とBluetoothレシーバーで外に持ち出す。
デザインがクラシカルで機能的、特にmini6あたりは凝縮感が「気分」です。

無印iPadはイヤホンジャックがありますし。そういやあれもApple製品では異例のロングラン。
工業製品としての完成度では随一です。

今手元にヘッドホン・イヤホンは「・・台」、でも

凄く魅力的です、発注しそうなんです。軽いし安い。

ヘッドホン・イヤホンは「集める」のが趣味になっていく

問題はまったくアシダヴォックスとまったく関係ないところにあります。

場所を取らないしいろいろな音を楽しめるからつい

今日、自分の手元に何本のヘッドホンやイヤホンがあるかを数えました。

  • ヘッドホン:13台
  • イヤホン:5台

しかもほぼこの6〜7年程度で集まったものばかり、まあ流行ってたし。
困っているのは置き場所がだんだんなくなってきていることです

楽しいんですもん。ピュアオーディオに比べれば場所も取らないし、いろいろな音を楽しめる。
そりゃ買いますよ。

とはいえちょいと多い。

B&Wと比較してみたくなる・特にP9 signatureと

でも・・・アシダボックスは買うしかなくなった、発注であります。

ST-90-05は本物のレトロモダンだし。
こういう良品が無くなってから泣くのももう充分学習したので

実はB&WのP9 signatureと比べたい。50年のカイゼンは今どのぐらい通用するのか。
他の手持ちも含め聴き比べてみると致しましょう。

そう考えれば比較するものに事欠かない、楽しみです。

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