「大人のB&W」と全く違うアソビのなさ
少ない試聴機会を探しては恐る恐る聴いたYG AcousticsとMAGICO
B&Wとはだいぶ違うなあというのが最初の感想です。
YG AcousticsとMAGICOはシステムの質を「否応なく」わからせる
なんといいますか、
暴き立てるモニターライクさではない。
しかし送り出しのクオリティが否応なくわかってしまう音。
もし汚く聞こえるようならYGやMAGICOにとってそれはおそらく露悪趣味
スピーカー以外の問題と捉えるはず。
ただこんな調子ですから遊びの要素はない。お遊びで3万円のプリメインアンプとか当てることは、YG AcousticsとMAGICOでは笑いにならないといいますか。
以前「季刊Stereosound」No191(P134)において和田宏樹氏が自身が所有するHaily1.2とSONY TA-A1ESとの組み合わせについてさまざまに試された記事を見て理解した次第。
あのプリメインアンプはまず確実に駆動するというタイプ、意外な力強さがあります。買おうか迷ったことがあります。
Franco Serblin『Accordo』との組み合わせも興味深かった。
なおSONY TA-A1ESはもう以前のモデルながら実力があることから長くラインナップが続いており、「季刊Stereosound」No194も楽しく読んだことを思い出しました。
B&Wは「必要にして充分」のスノッブ・やりすぎには冷ややか
ここはB&Wを好きな部分なんですが、なんとはなしにですが連中からみればYG AcousticsやMAGICOをやりすぎだと思う風があるような。
「やりすぎ」「過剰」
伝統的な英国人的価値においてもっとも嫌われるものです。
「必要にして充分」が彼らの目指すクールさであります。おかげで悪落ち着きするのが悪い癖ですが。
音づくりでも同様、克明なモニター的性能を持ちながらもローエンドシステムなりに楽しく聴かせてくれるのがB&Wです。
モニター用途も想定しながら暴き立てるようなものはない。「オレたちを買ってくれる人たちは子供じゃねえんだ」とばかりに、まずきれいに聴かせます。
パフォーマンスの問題ではなく、そういうことは野暮なわけです。
なお「必要にして充分」手法で成功する過程において、
二、三回は失敗して威厳を保ちつつ退場とか
足りないものはしたたかな努力で成し遂げた
というエピソードがついたら、もう嬉しくて仕方がないというへそ曲がりな国民性。アメリカ人は英国人を腹黒いと思うらしいですが、なるほどです。
クルマがそうです、超高級だけになった今でこそ少し変わりましたがアストンマーティンやジャガー、もっといえばローバーなんかGMが放り出したエンジンなんかを飽きもせず使い続けていた。
性能向上を怠っているのではなくて「使いこなしきるまで変えない」という斜め上の努力なのです。
それでお前ら変だろといわれるとムキになる。
可愛くないのは言われると見た目は「はー、そうですかい」とシレッとしてみせるところです。
陰では努力するくせに。
酷評されて全力を出した「ダニエルクレイグ007」
ダニエルクレイグを007に起用した時がそうです。
ありとあらゆる揶揄と悪罵に本当は腹を立てているくせに一見平然としてみせる。
アート系俳優だったダニエルクレイグを起用した理由も言わず、しかし諦めずしたたかに作る。
仕上がりはご覧の通り。
彼らの大好きな勝ちパターンであります。
で、B&Wに戻せば、アルミが増えたとはいえ基本は木を曲げて筐体を作るとか。
あの怪しいコンティニュアムコーンなど。
はっきりいってあのコンティニュアムってやつは「英国的怪しさ」に満ちています。
アタシャあの素材は予想外の身近なものを使っているはずと根拠なく思っている。
なにせあの食えない英国人です、新素材なんて開発するわけがない。
実はペットボトルと基本同じだったとか、木工用ボンドを調合して塗っていたと聞いても驚きません。
いずれとんでもない情報がわかるのではと楽しみです。
YG AcousticsやMAGICOをさめて見ている(としか思えん)
MAGICOのM2で採用されたグラフェンなんて、「食うや食わずで大西洋を渡っただけあってアメリカ人は頑張るなあ」とかせせら笑っているのではないでしょうか。
こういう可愛げのなさが(多分に錯覚だとしても)アタシのようなものが死ぬ気で800系を買ってもなんとか楽しめそうな気にさせる理由であります。
「君には分不相応だがそこまで好きなら聴かせて差し上げよう、いかがかな」
なんて言われているようで。
上流のセンス・B&WにあってMAGICOやYG Acousticsにないもの
彼らにとって大切なことはむしろ「上流階級のセンス」
文字通り差別的で階級が上ということです。連中はそれを伝統と心得て信じております。
ロールスロイス ファントムのドアに傘入れを仕込む人たちです。性能以上にそういうテイストが大事らしい。
名車ローバーP5ではときの首相(ハロルド ウィルソン)のためにパイプ置き(パイプレスト)を作り込んだ、クルマの性能よりもそっちが大事の国民なんです。
MAGICOやYG Acousticsは実に研ぎ澄まされている。極められたものがもつ凄みがある。
でも上品さや格調(Noble)とは違うものです。
しかしそれでいて本当にケンカとなったらとことんやる。
知性と優雅さ、そして果断
少なくともヤツらはそれがなんたるかを知っている。
ノブレス・オブリージュなんて現実にはありゃしませんが
「あるってことになってるんだよ」
ぐらいは思っているでしょう。
その証拠に半値でもデザインはB&Wのほうが上です。
B&WからすればMAGICO「S7」のオール削り出し筐体やYG Acousticsの振動板をアルミから削り出しなど、むき出しの行動力だけといったところかもしれません。
きっとホドを知らない新大陸のいとこたちが騒いでいるとしか思えないでしょう。
YGかMAGICOは日本のハイエンドブランドのリファレンスになってほしい
とはいえ極東の、シャツのエリが白いだけの実質「労働者階級」たるアタシにはやはり仰ぎ見る超ハイエンド。
B&Wひいきの戯言になってしまいましたが、YG AcousticsとMAGICOにはまるで兵器みたいなソリッドさがあります。
どうにもひかれる、といいますか釘付けです。
エレクトリMAGICOは限りなく柔らかかった
数少ない試聴の機会を生かすしかない、恐れずYG AcousticsとMAGICOの違いを書けば
暖かいMAGICO(M2)
少々クールなYG Acoustics(Sonja 2)
程度であります。
エレクトリブースで鳴らしたMAGICO M2はとにかくオールカーボン製ながらフルアルミと同じく柔らかなタッチ、やわらかい。
それでいて部屋の空気は張り詰めているのですから、これは異次元としかいいようがない。
日本のハイエンドもリファレンススピーカーとして採用してみては、金型を起こす気持ちで・例えばAccuphase
YGのような緊張感とは違うところがMAGICOたるゆえんでありましょう。
熱気を旨とするSOULNOTEがHailey 2.2を使った理由が理解できる。
なおアキュフェーズのリファレンススピーカーは現在Fyne AudioとSonus faberです。
MAGICOかYGを検討したことはあるのでしょうか。
1,000万円は高い、でも金型なんて大きめを数型作ればそのぐらいは簡単に投資しなければいけない。
しかも「モデル毎に金型を起こす」そうです。
メーカーでも個人でもリファレンスを変えるというのは度胸の要る話ですが、いっそのことMAGICOかYG Acousticsを開発用にお買いになってみては。
C-3900やE-800、そしてこれから続くパワーアンプ群のアップデートに得体の知れない影響をおよぼすのではと夢想してしまいます。