以前B&Wのスピーカーは安いプリメインアンプでもそれらしく鳴った話という体験を書きました。
B&W 805D3は懐が深いです。
エントリー機種ながらSoulnote A-0もにております。
他と性能を比べて安いか高いか、そういう尺度と違うようです。
このアンプはちょっと珍しい。
おそらく「コスパ」で買うと理解できなくなるプリメインアンプです。
手短かにソウルノートA-0の音質レビュー・見た目はダサいがかなり使える
忙しい人のために手短か結論を。
Soulonote A-0とはこういうアンプです。
- 見た目はダサい
- 独自の音質だが、いわゆる「個性的な音」ではない。スピーカーに合わせやすい。
- かなり変わった設計であり、他社との比較は難しい。
よくある「オーディオのおすすめ」が面倒くさくなってきた人向け。
逆に「コスパ」を求めて買うと、なにで得をしたのかわからなくなるアンプであります。
念の為、下取りはよい。
人気はあります。
だから買って戸惑う人が出てきます。
入荷待ちがあった時期でもオークションに流れた理由です。
A-0の世界で鳴る・スピーカーと相性は良いが差は出してくる
これが大前提でしょうが、いわゆるスピーカーとの相性がいい。
「この組み合わせはまずい」という好き嫌いが少ないです。
第一印象で「なかなかいいアンプ買ったな」と思える音。
ただ駆動力といえばDENONやMarantzが上です、A-0は明らかに違う場所に住んでいる。
ここが比較レビューが成立しない部分。
ひとことでいえば「A-0の世界に完結する」
大して駆動力がないのに、やけにくっきり鳴る
伸びもある
値段のわりに良く鳴るのではありません。
「魂の音」とかハデな煽りがついていますが、むしろ押し付けがましい個性はない。
念のため、音楽性の代償として非力であるとか、よくあるガレージメーカーの話はありません。
相性の「いい」「悪い」スピーカーがあまりない・システムの悪いところはよくわかるが
手元にあるスピーカーのうち稼働しているのは
ご覧のとおりたいしたものがない、しかも方向性はとっ散らかってる。
普通これだけ方向がズレたものばかりならアンプとの相性は必ず出ます。
それがAura design VA-50そしてCREEK4240、
もっといえばPioneer A-09とははっきり良し悪しがありました。
プレーヤーも同様で、容赦無く弾かれる組み合わせがあった。
違いを正確に聴きたくて比較対象のAuraとCREEKはフルメンテに出したのです。
しかしA-0にはスピーカーを選ぶところがあまりない、
どれもなかなかに好ましい、という面白い結果。
それでいながらシステムの悪いところはなんとなくわかることが面白い。
セッティングやケーブルなど。
A-0を聴き始めて最初に感じたのは
「スピーカーの角度と高さをもう少し詰めたほうがいいかもしれない」ということでした。
趣味に没頭させるところがある。
JBLはしなやか・Roydは影が濃い
繰り返しますがスピーカーを力でねじ伏せるほどのパワーはない、音を聴くと錯覚するのですが。
言えばヤボですが10万円ちょっとの、しかもプリメインアンプです。
Royd Sintraでは音の彫りが深い、影のある英国オーディオの楽しみ方としてはかなり好ましい。
陰影を感じさせる音で、恐らくですがTannoyやLS3/5にSoulnoteは合うのではと思わせます。
なおA-0にはいないでしょうが、ソウルノートの上位システムは
たとえば今メインストリームのBowers and wilkins 600/700/800シリーズいずれも違うスタイルを持ち込めると思います。
設計者の加藤秀樹氏は「音作りはしない」とたびたび述べておられます。
しかしこのA-0はこれまでのアンプとは違いすぎる。
音を聴く機械として音作りという言葉がダメなら、アンプとして音楽の受け止めかたとでもいえばいいのか。
なお詳しくは別途としますが、JBL control12SRはたいそうしなりの効いた、それでいて粗さ少ない音で鳴る。
しなやかです。
ワイルドながら表現は多彩、ホーンには確実に合います。
最近この組み合わせ聴きが何故か増えてきた。
他社のプリメインアンプとA-0の音質比較は難しい
こんな調子ですからA-0を他社アンプと比較できるのか、と。
現在比較サイトではすべてのソウルノートが高評価ですが、それはハイエンドで人気が出たごく最近の話。
ああいうレビューはちょっと参考にならない。
なんせリリース直後から数年間も全く話題になりませんでしたので。
SOULNOTE A-0が変わっているともいえます、ローエンドモデルが発売から数年して話題になるなんて多分前例がない。
オーディオの「コスパ」とは高級コンポに近いこと・SOULNOTE A-0はそういうものではない
「おすすめ」「比較」「ランキング」のレビュー手法で計り難い。
コスパにまつわるあらゆる言葉で説明できない。
「コスパ」とは、つまり近い値段のもの同士を比べたとき
より高級品に近いもののこと。
プリメインアンプならばセパレートアンプに近いほど言うことなし。
他社プリメインはほぼすべて、この方向です。
しかしA-0をセパレートと比べてもさほど意味がない。
世界が違いすぎる。
よく聴けばパワーがないのに力強いという矛盾したアンプ。
ハイエンドユーザーで端的にそれを感じた方もおられるようです。
Soulnote A-0とDenonやMarantzの根本的な違い
むろん「コスパ」は大変にいい、人気はあるし下取りの価値はヤフオクを見れば一目瞭然です。
生産が追いつかない現在、程度のいい中古は新品価格とほとんど同じで取引されています。
しかし音の尺度があまりに違う、だから買って期待はずれの方もおられる。
実際、ランキングでもDenonやMarantzと何が違うのか、はっきり述べたものがありません。
オーディオ専門用語のキャラはたっぷり・でもA-0を説明できない
オーディオについて雑誌やレビューをみると以下のような説明がたっぷり入っています。
ケーブルなどはもっと極端な表現です。
- パワー
- ハイスピード
- 透明感
- あたたかみ
- クリア
- 情報量
定義はよくわかりませんがレビューには必ずこのどれかが入っています。
実際聴けばなんとなく感じることも事実。
ケーブルやインシュレータだと「衝撃の音」「激変」「部屋の空気が変わる」と続く。
むろんソウルノートA-0にもあると言えばあるのですが、しっくりこない。
プリアンプ直結(?)のプリメインアンプ
このアンプについていえるのは実に丁寧に信号を増幅をしている感覚です。
単に良い部品を使った、とは違います。
なるべく変質させないように
もれなく音を送り込んでいる。
解像度が高い、とは違う。
原型となったSA1.0から、内部レイアウトや基板のアートワークが全く変わった理由だと思っています。
内部を見ましたらこれは、でありました。
競合機種どころか他のいかなるアンプと比べても変わっている。
「プリアンプ直出し」という言葉を連想しました。
プリアンプの信号そのままの質感
最近あまり見ませんが、CDが出た頃セパレートアンプ界隈ではパワーアンプ直結という方法が流行りました。
プリアンプを使わず
アッテネーター(ボリュームだけ)を使い
複雑なプリ回路を全部すっ飛ばすという手法です。
独特のストレートな音で快感ですが、薄味になります。
本来の厚みにはプリアンプが必須で、そのため廃れました。
その文法でいえばA-0はパワーアンプ直結ならぬ「プリアンプ直結」とでもいえばいいか。
細かい音が勢いよく、しかも厚みがあるのにしなやか。
大出力ほど質が落ちやすいのがパワーアンプですが、そもそも小出力ですからその心配は皆無です。
これを狙って大電源に出力10Wとは、度胸のあるエンジニアだなと感心しました。
音の通りにロスがないとわかる、それでいて低音が細くなったりしません。
実感できるのがA-0の音場感です。
「左右に回り込む」音場感の奥深さ
ひっこむのではなくせり出す音場。
それでいて奥行きを感じるのは大きく包みこむからです。
A-0の音場はなかなかに広いのですが、左右のスピーカー中央に奥深く拡がるのではなく、
左右頭上にせり出し回り込んで奥行きを表現するタイプ。
デリケートな微小信号を位相面で正確に増幅しようと、相当配慮しています。
だからKhadas Tone2 Proのように、音を作らず特性だけを突き詰めただけのDACが活きる、実に拡がります。
マイクで録った音を正確ストレートに出す・残響音が克明に
完璧にセッティングが決まったスピーカーで
マイクで録った信号をストレートに出すとこういう音が出るのですが
A-0は最初から近い音で始まる。
吸音してあるスタジオのわずかな反響がわかるほどです。
結果として音場が広い。
ひと頃、解像度を上げすぎて逆に奥行きがなくなってしまったアンプがありましたが、A-0はきめ細かさについて定義が違うようです。
パワーは明らかにプリメイン水準のはずが、音に勢いがあると感じてしまう理由じゃないかと思っています。
ウーファーがぐいぐい動くわけではないが「密度が高い」低音
これが競合の、たとえばDENONやMarantzとの違いでしょう。
馬力勝負ではない。
SUVとスポーツカーのお買い得比較をするに近く、両者は完全に定義が違うのです。
ヤフオクに新品同様の中古A-0が出品される理由
人気があるのにヤフオクで出品される理由だと思います。
A-0やA-1はYahooオークションに「通電時間僅少」「新品同様」が結構でてまいります。
手放した人はある意味正確に聴いていると思います。
「いつもの説明と違う」と。
A-0は雑誌やレビューのレトリックとは関係のない鳴り方をする。
スピーカーを「駆動する」という感じがない。
はっきり申し上げて、それはDENONやMarantzが得意です。
しかしA-0の低音は密度が高く、それでいて軽い。
付け加えるとA-1とA-0の音は上下関係にありません、どう聴いても表現が違うものです。
A-0、A-1は極端に趣味的
A-0は発売当時全く話題になりませんでした、A-1も同様。
今探しても発売直後の試聴記事はほぼありません。
一部の好事家からは旧ソウルノートの「sa1.0」のアップデートバージョンと思われていました。
事実上「加藤秀樹プロデュース」SOULNOTEの初代機であったA-1すら、数年遅れで評論家のレビューが載る有様。
誰が「出力10W」のローエンドモデルを取り上げましょうか。
sa1.0とは全く違う・10W+10Wなんてコンセプトは他社がやれない
今は違います、ハイエンドでの高評価を経て絶賛にちかい。
設計者の加藤秀樹氏はなんと6年待ちました。
A-0のような実質には「おすすめ」「コスパ」が参考にならないという好例です。
他で触れさせて頂ましたが、この方大変な忍耐の人です。しかもアイデアはエキセントリックでありながら手法は実に手堅い。
「こんなことを思いついた自分が間違っているんじゃないか」という自問自答から入る人です。
「6年前の設計」「sa1.0のモデファイ版」なんてとんでもない
A-0の代わりは他社からしばらく出ないと思います
アタシはずっと無理だと思っていますが。
ローエンドでAB級にして10W+10Wなんて企画の段階でビビってしまう。
ハイエンドではない、エントリーゾーンのプリメインアンプです、そこで極端に趣味的ですから。
馬力はないが表現はセパレートアンプに近い(誤解されるのであまり言いたくない)
これを申し上げると危険な間違いを犯しそうなので避けたかった、「コスパ」と誤解されるからです。だから以下は本当にあえて言うならばです。
セパレートアンプの表現に近い
しかしパワーアンプの力はそれに及んでいない
それにしては表現の手数が多すぎる
セパレートと同じ、とか超えたなんて言う気はない。それは不正確です。
ただ馬力はあってもA-0より表現が単調なセパレートアンプは意外とありました。
隠れてセパレートアンプからA-0乗り換えはいそうな気がする
これははっきり言えますが、現行発売中のセパレートアンプからA-0に乗り換えた、という方がいても不思議ではありません。
10畳前後の部屋において、平均的な音量で聴いたらA-0のほうがよかったという感想はあるはずだからです。
本当にバカな奴とお笑い下さい、アタクシはDennesen JC80のみずみずしさを思いおこしました。あれが生きていたら(今冬眠中です、たぶん永久に)A-0をパワーアンプで使ったらさぞ幸せだろうと。
繰り返しで恐縮ながらコスパやおすすめなど、
言い換えれば、新製品のたびに
「激変」「衝撃の音」
はもう結構、という方向けのA-0です。
ひとつだけ気に入らないことがあります。
SOULNOTEの公式ウェブサイトにある
「魂を蘇らせる」
あれは激変レビューと混同されるかも、違う表現がいいかもしれません。
なお手持ちの各スピーカーとの組み合わせはおいおい申し上げますが、
いっそ超高能率のスピーカーか
あるいは低能率・低インピーダンスの代わりに初動感度の高いスピーカーでうんと静かに鳴らすか
どちらかに決めたほうが楽しめそうな気がしております。
反応の鋭敏なスピーカーはA-0を楽しめる、これは確かです。
セッティングなど外的な変化にもエラく敏感だから、これはA-0の大事な点ですがそれでいて音のバランスは変化しない。
また、やかましいと思っていたスピーカーが滑らかに鳴り出す可能性はあります。
なおA-0はプリアンプよりパワーアンプとして使うほうが活きると感じております。
以降確認予定です。