世間でA-0がヘッドホンアンプとして惜しいとされる理由は
そして個人的に好きなのは
大きな筐体、つまりデスクトップ向きではないこと。
内部を見て、これがデメリットでないとはっきり申し上げます。デジタル信号が高度になるほど真価を見せる設計。長く第一線で使えます。
特にヘッドホン・イヤホン愛好家の皆様へ。
このアンプは場所を確保してでも使う、それだけのメリットがあります。
A-0は「将来にわたってハイレゾ対応」です。
(お断り)以下文章構成上やむをえず敬称略の部分がございますが何卒ご容赦願います
最新のオーディオで久しぶりの「空中配線」アンプ
【ご注意】
本記事では執筆者の自己責任においてアンプカバーを開け、内部を確認しております。
一般的には危険であり(感電の可能性)、かつ故障や事故を招いたり製品保証を受けられなくなる可能性大のため、同様の行為はお勧め致しません。
実際に「開封」した理由を。上からみてもわからない
横からみるとわかる、太い配線が空中に張り巡らされている。これを確認したかったのです。
この価格帯はむろん、はるか上でもまず見ません。
高周波、つまりデジタルデータが高度になるほど差がつく仕様です。
アンボックスでなく天板を外して内部を見る「開封の儀」・旧SA1.0とは別物
開封の儀といっても箱から出すアンボックスではありません。
実際に天板をひっぱがし内部を見ようと、あわよくば音の理由が見えるかも。
目的を達しました、結論をいえば「空中配線」。
簡単に申さば基板間をフラットケーブルではなく(恐らくは手はんだによる)リード線を空中に走らせてつないでいます。
驚いた、最新オーディオでは久しぶりに見た。
「信号経路を無接点ワイヤリング化」とはなんの話かと思っておりましたが。
当初はあわよくば分解と思いましたが、こればかりはおいそれ手が出ない。高度です。
A-0はこの手法をかなりの部分に採用しています。当然プリント基板も1枚に集約されず複数になる。
つまり箱が小さくなるわけがないしするべきでもない。
微小信号には最適です、そして普通まずやらない手法。
これをハイレゾ対応と言わずしてほかになにをそう呼びましょうか。
原型は旧SOULNOTEのSA1.0ですが、中身は全く違うもの。
優れた真空管アンプのような回路・手はんだ付けで量産効率は悪いが優れた特性
空中配線は特性のあらゆる面で相当効果のある手法。パーツ論以前の話です。
ただし設計の腕が問われる。そもそも製造業では嫌われます。
コストが高く、しかも量産時に同じものを安定して作れるか、という問題があるため。
手はんだなら加工費は高い。
しかも下手な設計ならかえってノイズを呼び込む因にもなる。
A-0は上記をクリアしてきた、SNは良いです。
音質上の強力なメリットであり、優れた真空管アンプのごとき回路レイアウトです。
A-0の造りは家電から外れている・「万人にとってのコスパ」があるなら、それは手間のかかった製造
ただ産業機器のそれも電源盤などワンオフに近い製品でやるものです。
10万円ちょっとといういわば「量産家電」で、この企画はおそらく通りません、普通ならば。
製品コンセプトと同じく、モノは良いのですが少々クレイジーな造りです。
「コスパ」なんて滅多にいうもんじゃないと思っているので、そういうおすすめはしません。好きでもない。
ただ多くの人にとって共通するコスパを挙げよと言われれば、それは手間のかかった造りです。
製造業が慎重に避ける仕様でもある。それをソウルノートA-0はやっている。
オーディオとしてどうかという尺度と別に、10万円台の「家電」でこのような製品を他に知りません。
普通のプリメインアンプ(そしてヘッドホンアンプ)とA-0の内部を比較
その内部構造、公式HPの内部画像のように上方からみるとよくわからない。
しかし内部を横からみると立体的な配線が明らかです、更に某社の同価格帯プリメインアンプ(DAC内蔵)、つまり一般的な事例と比べると違いがみえる。
ソウルノートA-0の内部画像・立体的な配線と複数のプリント基盤
リード線がモノレールのように高さを変えつつ走り回っております。
後述する一般的なアンプがプリント基板1枚にまとめるところです。
他社製プリメインアンプ(10万円台では売れ筋・2022年時点)の内部画像・ヘッドホンアンプもほぼ同じ構成
以下が「普通のプリメインアンプ」の例です。なるべく1枚のプリント基板にまとめてフラットケーブルで済ませる。
ソウルノートは重要なパート毎にプリント基盤を分けます、そしてリード線でいちいちつなげる。
だから配線が空中を走る。
なおこの比較対象が特別にチープということはありません、どころか参考例はとてもきちんとした設計です。
ただ製造コストの常識でいえば「普通のアンプ」、つまりランキングやおすすめ上位のプリメイン・セパレート問わず大部分がこれだというだけです。
ヘッドホンアンプもおおかた似たようなもの。
というよりピュアオーディオのプリメインアンプ以上に小型であるためA-0の構成はとれません。
A-0の内部を縦横に走る配線の特殊さがお分かりいただけるかと。
古典的にして理想・「三次元的な配線」はSA1.0との決定的違い
A-0は原型とされるSA1.0と比べ内部スペースを大きくした。しかしさほどゆとりはない、立体的な配線だからです。
ハイエンドオーディオはどうしても筐体が大きくなる。
回路はパーツでは超えられないものがあります。
ノイズや相互干渉を考えるとどうしてもそうなるらしい。
その好例がA-0の空中配線です、古典的ながらプリント基板と違い三次元的に独立して配線するので互いの干渉は少ない。
ソウルノートA-0は「今より高度なハイレゾ」にも対応するアンプ
「ハイレゾ対応」がよくいわれますが、A-0は回路として高周波向きであるという意味で、本当のハイレゾ対応アンプです。
恐らくですが、ハイレゾの規格が更に上がっても充分対応するでしょう。
PCM768kHz、DSD512・ハイレゾデータはハイサンプリングほどデリケート
民生オーディオはあくまで趣味の分野ですから、本来はシリアスな技術論は畑違い。
しかし一昔前には考えられなかったようなデジタルデータ規格が出てきてそうもいっていられないことに。
PCMで768kHz/32bitやDSD512(22.5792MHz)など、はたしてこれが民生用かと我が目を疑うフォーマットです。
簡単にビットパーフェクトとか言ってますが少し前まで民生でどうにかなる話ではなかった。
こんなとんでもないデジタル信号から変換されたアナログ信号はかなりデリケートです
アンプやスピーカーが高性能なほど悪影響・SACDの頃より再生は難しい
測定と同じく、皮肉にもアンプやスピーカーが高感度であるほど悪影響を受けやすい。
- ノイズ
- 相互干渉
これらは20年前(SACDが出た頃)よりも明らかに厳しい性能が求められます。
フォーマットとしてそうなってしまった。
スピーカーは先行している雰囲気がある。
その意味でA-0は真にハイレゾ対応仕様のアンプとはっきりいえます。
きわめて古典的かつ確実な高周波向け回路だからです。
微小信号へのメリットはプリント基板とは比較にならない・A-1もやっている形跡あり
しかし空中配線とは恐れ入った、アンテナ効果などをわかったエンジニアが使いこなせば、繰り返しますが高周波ほど効果がある。
つまり微小信号にすごく効く、別格の力感で聴かせる理由ではないかと。
今後ハイレゾのサンプリング周波数は更に上がるのでしょうが、A-0なら文句なしです。
あくまで画像からしか見られませんが、A-1も似たようなことをやっている様子がある。
なんだかもうこっちのコスト感覚がおかしくなってきた。
A-0で最初に感動したのはプリント基板のアートワーク
プリント基板のアートワークは公式HPをご覧ください、商売柄A-0で最初に感心したのはここでした。
現物は部品が実装されているのできれいなところがわからない。
なお放熱用ヒートシンクは左右独立しています。こういうところは音場感にとても重要です。
空中で斜めに角度をつけて配線を走らせ、接続は手はんだ付け
内部をもう少しくわしく見ます。
その空中配線、ビシッと角度をキメたもの、これはお金掛かる。
そして設計者が工場から嫌われます
なお開けて中をいじろうなんて思わない方がいい。
A-0は少しリード線が曲がっただけでも確実に音が変わります。
今回アタシもヒヤヒヤしながら撮りました。
もうやりません。
試作とかワンオフに近くなっている、SA1.0からサイズが大きくなるはずです。
プリント基板ではなく、空中配線でなければ出ない音はあります。
柄がデカい意味はあるとヘッドホン・イヤホン愛好家に申し上げた理由です。
コネクターすら極力使わずハンダ付け・工場から嫌われる製造仕様
ソウルノートA-0とはなにか
きわどいコストを突きつけられた設計者が、音質と価格に高水準のバランスで出した答えということです。
個人的なことを申し上げますと、10万円台の量産品でこの仕様は、アタシは企画を通すことも工場を説得する自信もありません。
コネクターすら極力使わないのですから。
2時間ぐらい打ち合わせ、というか吊し上げのあと「こんなの作れるか」と言われて終わり。
誇張でなく、ある種の非常識が忌み嫌われるのが製造業です。
ソウルノートのエンジニア加藤秀樹氏は一体どんな会話をしたのでしょう。
なんと10万円台のプリメインアンプでその帳尻を合わせた。
少し前、ヘッドホンでは「アシダ音響」という変わったものを見つけて使っていますが、違う意味でソウルノートは変わっている。
「息が止まる」一歩手前のコストでエンジニアを駆り立てる
エンジニアという人たちはリタイアするその日まで
「あともう少しだけ開発費があれば(営業のヤロー安くとってきやがって)」と毎日思って生きています。
「過酷なコスト」・オーディオ進化論を生き延びたのがソウルノート
そこで特に腕利きのエンジニアを選び、わざと過酷な環境に置きます。
なるべく生きられるギリギリにする
酸素薄くするとか(低コスト)
低温とか(高品質の共用部品を開発させる)
すると順応する個体が現れる、進化論です。
それがA-0でありソウルノートです。
シャーシにみえる涙ぐましい共用化・アンプからCDプレーヤー、DACやイコライザーまで
このモデルの背面をみると「息が止まる」一歩手前であったことがわかります。
シャーシ裏面のこの穴をご覧ください、全部悩み抜いて空けた跡です。
さまざまなモデル共用前提の金型、むやみに空けたものじゃない。
プレス金型は高い上に資産計上しますから軽い気持ちで作れません。
この鋼板一枚にいかほど悩んだかがみえます。
「このシャーシ起こす以上は、アンプもプレーヤーもDACもイコライザーも全部音良くするしかねえ」
という覚悟であります。恐らくながらそれが「A-1」「C-1」「E-1」「D-1N」というわけです(画像とスペックから確認した限りサイズが全く同じです)。
そうやって自分を追い込むエンジニアがいいものを作る。
「予算無制限」は意外といいものができない、長続きもしないし。
プロじゃないので個人的に好きでもありません。
「パーツではなく回路」正統派のオーディオ設計
部品に特別なものは使っていません。
むろんオーディオ音質の部品ですがいわゆる最高グレードというわけではない。
回路設計とコンストラクション・「加藤秀樹プロデュース」ソウルノートがハイエンドとなった本質的理由
これがいい。
設計者の加藤秀樹氏のもとで、ソウルノートがガレージメーカーからハイエンドブランドに上った理由だと思います。
音質はあくまで回路とコンストラクションで基本を突き詰める。
オーソドックス(正統派)です。
だからA-0を高級パーツに変えたら音がよくなるとは考えないほうがいいのではと思っています。
バランスが崩れて一般的な美の基準でいえば「醜い音」になるのではと。
むしろ制約だらけであればこそA-0は研がれた。
ここまでやって出力10Wは凄みがあります。
スキルのあるエンジニアは課題がきついほど「そうくるか!」という答えを絞り出しますが、まさに好例です。
前回「A-0は寸止めなし」とした理由です。
設計者の腕が確かなのは、この造りが修理に及ぶからです。
部品がごく普通のオーディオグレードならば数年後もパーツの調達は可能です。
音も元に戻せる。
今回Pioneer A-09の故障ではそれを痛感しました。
オーディオパーツは高価なものを探せばきりがありませんが、そういう議論はなんだったんだと思わせる中身と音。
A-0は、いろいろな意味で、長く人気を保つことになりそうです。